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第5話 復讐

ジリリリリと目覚まし時計のけたたましい音が鳴り響く。しかも時計は壁に埋もれている。きっと神の仕業だ。


「神の奴、こんなのわざわざ取り付けなくてもいいのに」


なんだかいつもより目覚めが悪い気がする。気のせいだろうか。


その時だった!


「うおっ!天井がああああああああああ!!!天井がせまってくるううううううぅ!?」


もう修行は始まっておるぞ。


「この声は神!何初っ端から無茶苦茶な特訓やらせてんだあああ!!」


何を言っておる!こんなの初級中の初級中の初級・・・・と言うのは嘘じゃ。


「嘘かよ!今すぐ止めてくれよ!」


無理じゃ。自分で何とかせい。まぁお主もう既に死んでるから、大丈夫じゃろ。クリアしたら豪華な朝食をくれてやる。


「いや痛覚あるから!普通に神経通ってるから!」


ちなみに、明日は魔法の特訓をするぞ。


「順序逆ぅ!間違いなくそれ逆だわ!あ、声聞こえなくなった。おーい、神ぃ!?神ぃ!?頼むから返事をしてくれ、ちくしょーーーー!!」


やばい。非常にやばい。このままじゃ本当に潰されちまう。落ち着け、落ち着くんだ。素数を数えろ。素数は誰にも割ることは出来ない。ってこんなこと考えてる場合じゃねぇ!ヤバイヤバイヤバイ!そうだ!




―神宅―



「さて、アイツは今頃ペチャンコかな。どれどれ」


「な、何!?こ、これは!」


神が目にしたのは驚きの光景だった。


「へっへっへ!焦らずとも最初からこうすりゃ良かったんだ。簡単なことだ」


・・・・              ・・・・

その部屋の天井が落ちて来てるんなら、その部屋から出りゃあ良いんだ。


「な、なんとも単純な考えじゃ。確かにそうすれば一件落着じゃがのう」


僕は見えない神に向かって力いっぱい叫んだ。


「おい神!約束通り、豪華な朝食にしろよ?」


「くっ!たくッ~、しょうがないの~」


すると机に料理が並べられた。僕は勝ち誇った顔をしながら完食した。






「え~では、まずは基本の体力づくりじゃ。取り敢えずそこら辺走リ続けろ」


「なんかさぁもうちょっとまともな修行ない?早く魔法使いたい―――」


「甘えるな!!ひよっ子が!!!」


「!」


「少し出来たぐらいで調子に乗りおって。お主はひよっ子ですらないわ。それとも、もう一度あの悲劇を繰り返すと言うのか?」


そうだった。僕は何のためにここに来たと思ってるんだ。騎士達の、そして団長の仇をとる為じゃないか。それなのに僕は勝手に調子に乗って強くなった気になって。こんな気持じゃ駄目だ。もっと真剣に取り組まないと。


「ごめん。僕、何の為にここにいるのか改めて理解したよ。生意気なこと言って悪かった」


「謝る暇があるんならはよ修行せい!」


「はい!!!」


神は元気に走って行く少年の姿を見守っていた。


「・・・・・・その覚悟があるのなら、お前はきっと強くなれるぞ・・・・」





それから100年の月日が経った。



「ふぅ。これで全ての究極魔法をマスターしたぞ!」


僕は全ての魔法が使いこなせるようになっていた。勿論神は祝ってくれた。


「おめでとう!剣術もほとんどマスターしたな。しかし槍術や弓術は極めなくて良かったのか?」


「良いんだよ。剣が一番しっくりくる」


「・・・・そうか」


「長いようであっという間だったな。この百年間」


「そうじゃな・・・・」


この特訓コースを終えたって事は、神とのお別れが来てしまったということだ。最初は多少ウザかったが、今となっては少し寂しい。


「今のお前なら、あの巨大ドラゴンを倒すことは容易いじゃろう。そう悲しむな。わしはいつでもお前を見守ってるからな。安心して行って来い!!」


「本当、アンタには世話になったな。ありがとうな、ここまで付き合ってくれて」


「なに、わしは不老不死じゃ。暇潰しが出来たと思えば楽しかったわい」


「不老不死なのか。やっぱり凄いな」


「さぁ、行け。真の救世主よ」


白く輝いた扉が開いた。この扉が異世界へと繋がってるらしい。時間も場所も僕が死んだ瞬間に戻るらしい。


「じゃあ、またな」


「気をつけてな」










む、身体が動く。そうか僕は帰ってきたんだ。ということは・・・・・。


「グオオオオオオオオン!」


いたか。正確には奴はドラゴンではなく、グランディルという新種のモンスターらしい。どこが発生源なのかはよく解らないらしいが・・・・・。


「待たせたな、と言ってもお前は止まった時の中に居たから僕が生き返ったように見えるのか」


グランディルは僕の方をじっと睨んでいる。鋭い目つきだ。


「グオオオオオオオオオオオオ!!」


雄叫びをあげると、グランディルはこちらへ突進してくる。だが。


「遅い」


僕はグランディルの攻撃を余裕で避け、奴の頭に一突き入れた。


「グガアアアアアア!!!」


これまでに無い程に苦しんでいる。どうやらそこは鱗が他の部位よりも柔らかく、いわば急所だったようだ。


「ふんっ!どりゃあああああ!!!」


僕は何度も何度もグランディルの頭に剣を抜き差しした。しかもそこに感情は無く、ただ無心に剣を動かしていた。すると遂に力尽きたのか、グランディルは倒れ、ピクリとも動かなくなった。


「・・・・・勝った!」


案外呆気無かったな。魔法も使わなかった。


「さてと、団長は・・・・?」


周りに目をやると団長らしき人物が地面に埋もれかかっていた。多少まだ息があった。


「良かった。今治癒魔法掛けますからね」


僕が団長に手をかざし、呪文を唱えるとみるみるうちに怪我が治っていった。


「・・・・う、こ・・・ここ・・は・・・?」


「団長!良かった。目を覚ましたんですね。安心して下さい。グランディルは僕が倒しました」


「グ、グランディル・・・?」


そうだ。団長はグランディルはまだ知らないんだった。


「あの巨大ドラゴンのことですよ」


「ほ、本当か!?だとしたら物凄い偉業だぞ!早速この事を陛下に報告せねば」


「団長!その前に」


「・・・・そうだな」


僕と団長は王国へ帰還し、亡くなった騎士達の墓を立てて供養した。生き残ったのはほんの数名しか居なかった。途中でマティさんが走ってきて偶然出会った。聞くと、寝坊で遅刻したらしい。団長も正直に言ったマティさんをあまり責めはしなかった。何故かマティさんは残念がっていた。







―王の間―




僕は普段入ってはいけないと言う中央棟の国王のいる部屋、王の間に居た。


「は、初めて入った」


最早部屋という広さじゃない。


「はは、そう固くなるなって」


団長が僕の緊張をほぐそうとしてくれた。すると奥から、豪華な洋服に身を包んだ老人が歩いてきた。


「おおおお!お主が怪物とやらを倒してくれた者か。まだ若いというのに、流石、選ばれし者じゃ。心より、感謝する」


僕の国王に対しての第一印象は『喋るのが遅い人』だった。でも意外に温和で優しそうな人だった。


「早速今夜祝いのパーティをやろう。大臣達も呼ぼう!」


「はっ!かしこまりました」





その夜




僕は城の正面門の庭のパーティに参加していた。


「うわ~、沢山人がいるなぁ」


「へい、兄ちゃん!アンタでっけぇモンスターを倒したんだってぇ?やるなぁ」


「いや、それ程でも・・・・」


百年も神に修行してもらってたら当たり前か。






「ブァックション!!誰じゃ、わしの噂してるのは!」






「え~では、今回素晴らしい偉業を成し遂げた、英雄から一言」


なぬ!スピーチをするなんて聞いてないぞ・・・・。


「え、え~皆さんこんにちは。モンスターと戦ってる時はちょっと怖かったけど、急所に剣が刺さったので良かったです」


適当にスピーチをしたら、大歓声が巻き起こった。


「ヒュー、良いぞ良いぞ!」


「凄いじゃないか!!」


「キャー、カッコイイイ!」


やはり褒められると言うのは、良い気分だな、うん。こうして大盛況のまま、パーティは終わった。少々酒を飲んでしまった。酔うってこういう感覚か。久々にジョールさんにも会った。





―寝室―



「これで、打倒帝国軍の一歩を踏んだぞ。はあぁ、疲れたな」


窓から綺麗な星空を見た。


「ありがとう神。アンタのおかげだよ」


どういたしまして~


「!」


・・・・・・・・・。


「気のせいだよね、きっと」

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