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第2話 魔法

「もう朝か……」


小鳥のさえずりと共に起き上がった僕の目にはすぐに現実が写った。


「コレ全部明後日までに読み終わらなきゃいけないのか……辛いなぁ」


僕はまず『魔法とは何か』という本を手に取った。


「えっと何々、魔法とは古来より伝わりし摩訶不思議な力であり、常人には不可能なことを実現させる魔術・妖術といったものがある。また魔法には火、水、風といった属性魔法が存在する。更には人の精神を操ったり、物体を動かすことが出来るものもあるetc.]


「うへ~活字ばっか! もう嫌になっちゃう! でも勉強しなきゃな……帝国軍を倒すって決めた訳だし」


「失礼します」


「!」


執事らしき人物が机の上に見るからに高級そうな食事を置いた。


「こちらが今日の朝食になります。昼食は5時間後持ってまいります。一応言っておきますが、くれぐれも中央棟には近づかないように。では」


そう言ううと、さっさと出て行ってしまった。なんだか皆すぐに出て行きたがる。何故だろう? 


「……あ」


3日ぐらい前から風呂に入ってない気がする。


「まずいな……風呂に入らなきゃ。夜なんて待ってられない、今すぐ入っちゃお!」


部屋を出てお城の人に言えば、許してくれるかも。


「ま、別に朝っぱらから風呂に入ったって別に可笑しくないよねぇ。それより臭いほうが嫌だし」


取り敢えず僕は部屋を出て地図を見て大浴場の方へ向かって歩いた。その間に人に会って訳を話そうと思っていたが…………


「……やべぇ、人っ子一人居ねぇ。一体全体どうなってんだ?」


すると廊下の曲がり角からフードをかぶった男が歩いてきた。


(よっしゃ! やっと会えた~)


僕は少しドキドキしながらフード男に話しかけた。


「あの~すいません。僕前からお風呂に入ってなくて、で 大浴場をお借りしてもよろしいでしょうか?」


男は無言で首を縦に振った。変な人だなとは思いながらその時僕はそこまで気にせず大浴場へと駆けて行った。


「…………フッ。おい、もう出てきていいぞ」


「あぁ~~~~やっと開放されたぁ! 天井裏は狭くてかなわねぇ」


「アイツが別世界からやって来た人間かぁ?」


「…………らしいな」


「な~んか弱そうだなぁ。こりゃ期待はずれかもな!」


「油断はするな。下手したら俺等より強くなる可能性もある」


「がっはっはっは! そいつは面白え冗談だぜ! クールなお前がまさかそんなジョ―クを言うたぁなあ」


「…………」


「お、城の奴らが帰ってくる頃だぜ。そろそろ戻るか!」


「…………ウム」




―大浴場―




「良い湯だな! アハハン! にしても凄く広いなぁ。サッカーコート10面分はあるぞ」


僕は呑気に歌を歌い大浴場を満喫していた。


「さて、そろそろ出るかな! ふぅ~さっぱりした!」


着替え終わり、自分の部屋に戻ろうとしたその時だった。何やら外が騒がしい。


「な、なんだ? 騎士達が大勢出陣してる。一体何が起きたんだろう?」


なにやら団長が叫んでいる。マティさんもそこにいた。


「良いか皆!! この絶好のチャンスを逃してはいけない!!! 何としてでも追い詰めるぞ!!!!」


「「「おぉーーーーーーー!!!!!!」」」


何が起きているのかさっぱり分からない。


「帝国軍の偵察部隊の奴が見つかったんじゃよ」


「うわぁ! びっくりした」


そこに立っていたのは、腰が曲がった白衣を着た老人だった。


「ど、どなたでしょうか?」


「わし? わしはただのジジィじゃよ。フォッフォッフォ!」


そう言うながら老人は『実験室 立ち入り禁止!! 』と書かれた部屋へ入っていった。


「科学者なんだ。どんな実験してるんだろう。今度会ったら聞いてみよう」


僕は引き続き魔法の勉強をするために、自分の部屋へと入っていった。




3時間後




「はぁ……なんとか6冊読めたけど、まだこんなに」


「失礼します」


また執事が入ってきた。


「こちらが本日の昼食になります。お好きのドレッシングをお掛け下さい。では」


執事は出て行く前、少しだけ鼻を嗅いだ。


「ヘヘッもう風呂入ったから良い匂いするだろ」


これでまだ臭かったら泣きたくなる。


「はぁ……昼飯食ったらまた本、読まなきゃなぁ」




5時間後




「うへっ! もう夕方になっちゃった。なんだか今日は殆ど人と話をしていない気がする」


「昨日マティさんとたくさん話したからなぁ。それに魔法の勉強に集中しないと」


「失礼します」


またまた執事が入ってきた。そろそろ名前が知りたい。


「こちらが本日のディナーになります。もっと焼いてくれと思ったら、こちらのボタンをお押し下さい。では」


「あ、あの!」


「何か?」


「そろそろ名前を教えて下さいよ。呼ぶときに執事さん! じゃ変でしょう?」


「名前……ですか。ジョール・ディアンヌです。どうかお見知り置きを」


「分かりました! ジョールさんですね。これからはそう呼ばしてもらいます」


「……お好きに」


ジョールさんはどことなく冷たい雰囲気だが、優しい面も持っているような気がする。


「あ~あ、魔法の勉強しなきゃな!」



2時間後




「だいぶ読んだな。やっと半分だよ。この調子なら本当に明後日までに全部読めそうだな。でもな~読んだだけじゃ駄目なんだよな。いざってゆう時に内容を思い出して危機を回避できるようにならないと」


「どお? だいぶ読めた?」


マティさんが部屋に入ってきた


「まぁ、読むには読めましたけどやっぱり熟読するには……」


「あぁ、それ嘘だから」


「へ?」


「本気で明日までに読むつもりだったの? ごめんごめん。出来るだけ速く覚えてくれれば良いからさ。とは言っても あ~もうだるい~ゴロゴロしよう~ なんてゆうのは駄目だよ。無理はしないでって言っただけだから」


「それと、お城も空き部屋ならまだまだ沢山あるし、ずっと住んでもらっても構わないって」


「なんだ。も~脅かさないでくださいよ」


「じゃあね。お休み」


「おやすみなさ~い」


マティさんて案外お茶目だな……


「…………」


僕は窓の外を見た。こんなに平和そうなのにすぐそこまで帝国軍が迫ってきてるなんて……


「明日は街にでてみようかな」


そう呟くと、僕は深い眠りについた。

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