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第1話 異世界

突然だった。鏡の中から少女が現れて、僕の手を引っ張って鏡の中へ連れ込んだのだ。


「助けて!あなただけが頼りなの」


「一体どういうことだ!というか君は誰だ!?」


「そんなことより早く!!」


「うわあああああああああああああ!!!!」






気が付くとベッドの上で寝ていた。病院のベッドにしては豪華すぎる。隣には先程の少女が座っていた。


「やっと目が覚めたのね」


少女は穏やかな瞳で僕を見つめながらそう呟いた。


「あの……ここは一体……?」


「驚かせてしまってごめんなさい。詳しいことは後で説明するから今はおおまかな事だけ話すわ」


「?」


「そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名はマティ・シヴィラ。このサーズヴァル王国きっての最強騎士団ウィルメントの騎士長をやっている者よ」


突然そんなことを言われても何を言っているのかさっぱりわからない。王国?騎士団?本気で言ってるのか?


「何を言ってるんだコイツは みたいな顔してるわね。まぁ無理も無いわ。突然鏡の中から人が現れて、自分の居た所とは全く違う場所へ連れてこられたんですもの。でもね、この世界を救えるのはあなたしかいないの。お願い力を貸して」


ここまで頼まれると断りづらくなる。どっちにしろ元いた世界には帰れないのだから。


「分かりました。そこまで言うのなら力を貸します。でも一つ条件がある。目的を達成したら僕を元居た世界に戻して下さい。これが絶対条件だ」


「勿論」


「よし 交渉成立。で、ここは一体どこなのか説明してください」


僕は目つきを鋭くして、真剣な表情で彼女に聞いた。


「ここはサーズヴァル王国。この世界で最も広く、最も技術が進んだ王国よ。そしてあなたがいた世界とは別世界で、”異世界” とでも言おうかしら」


ゲームやアニメでしか聞いたことないが、まさか本当に存在するとは。ちょっぴり嬉しい気もする。


「にしても結構平和そうなのに、何で危機なんですか?」


「19年前 私はアタング村という小さな村で生まれた。特別裕福というわけではなかった。でも私にとっては十分過ぎるほど幸せだった……なのに」


彼女の表情がズンと重くなったのが分かった。


「一体何が起きたんですか」


「帝国軍の奴らが攻めてきたの。あいつらは人を殺すのに戸惑いなんて見せなかった。ただ荒れ狂う鬼神の如く村人達や家族を惨殺した。幸い兄が当時10歳でまだ幼かった私に”コレ”を渡して囮になった。そのおかげで私は間一髪奴らから逃げることが出来た」


彼女は首飾りを外して僕に見せてくれた。先端にはなんとも綺麗な青色の宝石が付いていて吸い込まれるような感じだった。


「この首飾りは兄さんの形見。これを持っているといつか兄さんが帰ってくる。私はそう信じている」


彼女はうっすらと目に涙を浮かべていたが、僕はその涙を茶化さなかった。


「私は誓った。必ず家族の仇をとると。その為にはまずこの国に来なければいけなかった。そして私は酒屋で5年労働の契約を結び、お金を貯めてウィルメント騎士団に入団した。だが騎士達の姿は私の想像とは全くもって違った ほとんどの騎士達が訓練をサボり、怠け、だらける。おまけに夜になれば酒の飲み比べだ。私は憤怒した。今まで国を守ってきた騎士達がこんなクズ共だったとは。よくよく考えて見れば昔の騎士団はとても強かった。様々な戦績を残していった。だからこの国の騎士達は強いという概念が生まれ、他の国に狙われなかっただけだった。だが私は違う。一刻も速く強くなり、家族の仇をとりたかった。そして私は真面目に訓練を続け、上の人間達の目にとまった。騎士長になるのにそう時間は掛からなかった。こうして騎士達の先頭に立ち、騎士達に真面目に訓練させた。その成果か、最近は上級モンスターの討伐には1分も掛からなくなった」


今の話だけで、彼女がどれだけ苦労してきたかが分かった。にしてもモンスターってやっぱりいるんだな。

と思った直後 部屋のドアにコンコンと音が鳴った。


「団長のバールだけど入ってもいいかな?」


「だ、団長!」


ガチャとドアが開き、ガタイの良い男が入ってきた。そしてマティさんが緊張しているのが分かった。やっぱり団長ってそれ程までに凄い人間なんだ と思った。


「おぉ、目が覚めたか少年。話は彼女から聞いてるだろ?私はウィルメント騎士団団長のバール・セザン。よろしく」


彼の握手は万力よりも強く、おまけに腕をブンブンと振るもんだから近くにあったタンスに肘をぶつけて腕がしびれてしまった。にしても目が覚めたかとか言って何で話を聞いたのが分かったんだ?騎士団はエスパーの集まりなのか?


「おっとっと、すまんすまん!」


なんだか陽気な人だな。団長って聞くとてっきりもっと物静かで、お堅いイメージがあったがそうではないようだ。というかさっきからマティさんがピクリとも動かず団長を疑視しているが もしかして……。


「じゃ、私はこれで失礼するよ。まだ会議等が残っていてね、ちょっと時間が空いたから挨拶ぐらいはしておこうと思ってね。それじゃあ」


そういうと団長は部屋を出て行ってしまった。マティさんは未だにボーッとしている。


「あの……マティさん?」


呼び掛けるが、彼女からの返事はない。


「マティさん?マティさん!?」


「えっ?あ、あぁ ごめんなさい。少しボーッとしちゃって」


「あの~僕の勝手な推測なんで間違ってたら申し訳ないんですけど……・」


「な、何?」


「マティさんて、もしかして団長のこと好きなんですか?」


「え?えぇ?そんなワケ無いでしょ?ま、全く急に何を言い出すかと思えば お、面白いじょ冗談ねぇ?」


随分と分かりやすい反応だな。わざと言ってるぐらいに聞こえる。


「馬鹿なこと言ってないで、話を戻しましょう。まずはこの世界に慣れなきゃね。取り敢えず一週間ほどこの城に滞在してもらう。魔法の訓練等はそれからね」


「魔法が使えるようになるんですか?」


「当然。戦いに魔法は必要不可欠。あなたの場合魔法を習得する前に基礎の体力作りから始めなきゃ。それと、これが城の地図」


マティさんは少し茶色びた大きな地図を机の上に広げた。

見てみるとお城は棟ごとに別れており、東棟、西棟、南棟、北棟、中央棟と別れており、中央棟には王や大臣といった極僅かな人間しか入れないのだと言う。


「うわ~、やっぱりお城って大きいんですね」


「当然でしょ。なんたって何千人といる騎士達が住んでるんですもの。他にも政治関係の人間や王の世話係といった人達が住んでるの。騎士達の訓練は主に東棟と西棟の間にある中庭でやってる。あなたもここで訓練を受けてもらうわ」


「分かりました!僕に任せて下さい!」


「じゃあコレを明々後日までに熟読しておいね」


マティさんは分厚い本を大量に持ってきた。


「な、何ですか?これ」


「城の図書館から事前に借りておいた本。魔法学の基礎知識~応用術まで細かく分かりやすく書いてあるから魔法を勉強するにはピッタリの本だけど……何か問題?」


「い、いえ大丈夫ですけど……。流石にちょっと量が多すぎやしませんかねぇ?」


「そうね。全部で30冊ってとこかしら」


おいおい、国語辞典を30冊読めってことかよ。こりゃ先が思いやられる。


「武器や防具はこっちで用意しておくから」


マティさんはそう言いながら部屋を出て行ってしまった。


なんだか忙しい一日だったな…………


突然異世界に連れてこられて、突然世界を救ってくれ、か……


僕は窓の外を見た。


「突拍子もない話だけどこんな所に連れてこられちゃ信じるしかないか」


「…………もう寝よう」


僕はフワフワなベッドに横になり、深い眠りについた。

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