第13話(ぼくと結花の第2章)
遊園地でこころを合わせてから、結花とぼくは、お互いの家を行き来するようになった。
結花の母親は、ぼくに「いつも勉強を教えてくださってありがとう」と感謝してくれていた。
「いいのかな。あんなに感謝されて」
「だって、ほんとうにやってることは勉強なんだもん」
「たまにはこういうこともするけどね」
ぼくは、机を乗り出して、彼女に軽くキスをした。
まえに付き合っていたときから、ときどきしていた儀式のようなキスだった。
結花は、くすくす笑った。
「ちょっと。なんで笑うの?」
「だって、翔ちゃんのキスって優しすぎるんだもん」
「じゃあ、どういうのがいいのよ」
ぼくは憤然として言った。
「そうね…」
結花はじっとぼくを見ていた。
ぼくが、その大人びた表情にドキッとしていると、結花は、立ち上がってぼくの横にちょこんと座った。
そして、ぼくの唇に自分の唇をつけると、ぼくの中に舌をそっと入れてきた。
ぼくはただ彼女に身をまかせていた。
「…すげぇ……甘い」
唇を離したあとで、ぼくは魔法にかけられたみたいに固まっていた。
「ふふふ。ケーキのせいかな?」
「いや、そんなんじゃない」
ぼくはそれを確かめるために、結花をぼくの方へ引き寄せて、もう一度彼女に口づけた。
今度は、ぼくが彼女のなかに入る番だった。
そうしているうちに、ぼくはだんだん、自分のなにかが抑えきれなくなってきた。
「いいの?ぼくをそんなに挑発しちゃって」
「挑発してる?」
「まえにも言ったけど、ぼくも男なのよ?」
「あのときは、まだわたしも子どもだったから。…傷つけちゃってごめんね」
誰に大人にされたんだよ、とぼくは一人の男を思い出して、猛烈な嫉妬心が湧いてきた。
「結花をぼくのものにしたい」
「…うん」
「結花は、それでいいの?」
「翔ちゃん。わたしは翔ちゃんの優しいところが好きだけど」
結花はちょっと言いにくそうに目をそらした。
「たまには、強いところも見せてほしいなって…思う」
ぼくは、急に緊張して、ドキドキと心臓を波打たせた。
結花を抱きしめて、ぼくのものにしたい!それは、ぼくのなかに確実にある欲求だった。そして、何度も自分のなかで夢想してきたシーンでもあった。
結花は、じっとぼくを待っていた。
ぼくは決心して、彼女を優しく押し倒した。
それからあとは、無我夢中だった。
「…家の人に気づかれないかな」
「今日、誰もいないよ」
結花の言葉に力づけられて、ぼくは彼女を強く抱きしめる。
結花は、柔らかくぼくを迎え入れてくれた。
夕暮れどきの西日が、ぼくらを優しく包む。
――そうして、ぼくは結花を愛する一人の男になった。