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あかい  作者: 過去之残骸
1/1

前編

※エターナった作品です。

 念の為、続きを書きたくなった時用に連載小説のほうに入れてあります。

 私は傍観者。 この世界を覗く事は出来るが、干渉する事はない。 勿論この文章を見てるあなた方の世界もだ。

 これから語られるお話は、決して非現実的な事では無く、実際に起こる可能性が微粒子レベルで存在する出来事なのである。

 このお話の世界では、ある感染症が、舞台となる鷹山と言う土地でのみ、密かな流行を起こしている。 他所から見れば、風土病としか見られないだろう。

 この感染症には仮の病名が存在する。

紅潮病こうちょうびょう

 病名の由来は、感染者の体を見れば一目瞭然だ。 体内で流れている全ての血液が頭部に集まっているのだ。

勿論、この状態になった感染者は生きられる訳も無く、大体は死に至る。

 この病気の原因究明の為、医療関係者が遺体の解剖を行っているが、未だにこの病気の病原菌や原因を特定出来てはいない。

 しかし、この病気を殆どの報道機関は報じようとはしない。 それどころか隠蔽しているのだ。

 何故この病気を伝えようとしないのか? そんなの簡単だ。 原因の分からない病気を憶測だけで報じた所で、人々はパニックを起こしかねないのだから。

 このお話は、その町に住む者と、周りの人々が必死に未来を紡いでいく。 きっとそんな話になってくれるだろう。

 どんな結末になるか、私はこの場所から高みの見物をさせてもらうとするよ。



「地を照らす光は我々の身を焦がし、心をも溶かす」

 そんな言葉がよく似合う、ある夏の日。 俺は自分の暮らす家で、いつも通りの夏休みを過ごしていた。

「ちょっとタカシ、家でゴロゴロしてないで、たまには家の手伝いでもしなさい」

 それはいつもの出来事であり、当たり前の毎日に組み込まれた一ページに過ぎない出来事だ。

「あー分かったよ」


 俺はタカシ、ごく普通の学生だ。

父と母と俺と妹


 いつもと変わらない、何気ない一日が過ぎ去ろうとしていた矢先、それは突然訪れた。

 ぷるるるる、ぷるるるる

「あら電話だわ」

 母は家事を中断し、受話器を取る。

「はいもしもし。 はい、はい。 ……」

 いつもと変わらない表情で電話に出た母だったが、少しすると受話器を持ったまま部屋の外へ出ていった。

 暫くすると、電話を終えたのか母が戻ってきた。 電話の内容が多少気になるものの、態々首を突っ込む程の事でもないと思い、その場では踏み止まった。

 夕方、母が喪服に着替え、何処かへ行こうとするのをたまたま目撃した。

少し気になったので、俺は話しかける事にした。

「あれ? 母さん、どこか出掛けるの?」

「それがね、ヤマダさんとこの娘さんがつい数日前亡くなられたそうで、その葬儀がこれからあるから……」

 ヤマダさんの事について俺は特に知らないが、恐らくママ友の一人であろう。

「そうなんだ。 ……最近随分と多くない?」

「そうよね……。 あ、晩ご飯は冷蔵庫に何か入ってるから適当に食べてちょうだい」

「分かったよ」

「多分夜には帰ってくるとは思うから」

「うん。 行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 ここ数ヶ月、近辺住民が一人、また一人と病死していく。 

 一週間に一人は近所の人や知り合いの知り合いが亡くなっている。

 一部を除き、大体は同じような病で。

 しかし、その病気が世間一般に公表されるような事もなく、また、情報統制が行われているのか、テレビや新聞、果てにはインターネットの奥深くに散らばるアングラサイトですら一切この病気についての情報を見ない。

 情報統制についてはただの憶測でしかなく、ただ単純にその情報に俺が辿り着いていないだけなのかもしれない。

 だが、数ヶ月も前からそれなりの死者が出ているのに情報がない事はおかしい。

 だからと言って、しがない一般人がその事を調査する等と言う、漫画やアニメでありがちな展開を現実で起こす気は微塵もない。

 若し調査した所で、利益よりもそれによって齎される不利益のほうが大きいからだ。

 深入りして命を脅かされたりするのは真っ平御免だ。

 でもこの病気について以前から気になっている。

 周りで何人も死者が出ていると言うのに「頭に血が上って死ぬ」「恐らく感染症だが感染力は高くない」等と言う訳の分からない情報しか出回っていないのだ。

 詳しくは知らないが、確かに頭に血が上って死ぬと言う事自体は有り得なくはない話なのだろう。

 しかし、頭に血が上ったり、頭に血が溜まる病気については調べれば幾つか見つける事が出来るが、感染症によってこのような症状が起こる病気は一切見つからない。

 突然変異で生まれたウイルスによる感染症なのか。 それとも昔からあっただけで周知されていなかった感染症なのか。

 それが何であったとしても、結局は今現在不明な感染症と言う結論にしか至らないのは確かなのだろう。

 医学知識を持たない俺がこれ以上考えた所で埒が明く訳もなく、最後にはこの事について考えるのをやめた。


 次の日、俺はいつもと変わらない時間に起き、いつものように学校へ行った。

 一学期初めの「新学期です雰囲気」の頃は一つの席の空きもなかったが、数ヶ月経った今では、例の病気が原因か、花が生けられた花瓶が置かれた机や、机がなくなり隙間の空いた場所が何箇所かある。

 しかし一部の人を除けば、その事について何の疑念も抱かず、起きた現実を受け止め、迫り来る毎日を淡々と消化していく、まるでロボットのような生活を送っているのだ。

 若しかすると、俺と俺の家族以外は全員ロボットなのかも知れないと思う程だ。

 それか俺が現実を受け止められていないだけか……。


 学校でも自宅でも何も起こらず、しかし周りでは人が消えていく。 そんな生活が続いていたある日、それは起きた。


 朝、何気なく起床した俺だったが、何だか頭が重い。

 重いだけで頭や首の痛みはないので、寝違えたとかではないだろう。

 風邪でも引いたのかと思い、体温計を使い体温を測るが、体温はいつもと全く変わらない。

 色々やってる光景を見ていたのか知らないが、母が話しかけてくる。

「あらタカシ、顔が赤いわよ? 熱でもあるの?」

「熱はいつもと変わらないよ」

「それならどこか痛いとかある?」

「頭が重い」

「頭が重いねえ……診療所にでも行ってきたら? 最近はよく分からない病気も流行ってるみたいだし」

「それもそうか……じゃあ行ってくるよ」

「分かったわ。 行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 些細な会話を軽く交わし、俺は近くにある診療所へ向かった。


「サトウさーん、サトウタカシさーん――」

 俺の名前が呼ばれる。

 足早に診察室へ向かう。 診察室へ向かい、中へ入った。


 しかし、そこからの記憶が曖昧なのだ。

 部屋に入った途端、何者かが物理的に俺を押し倒して、そのまま意識を失ったんだ。 

 そして今はココにいる。

 ココがどこなのかは分からない。

 辺り一面「白」で覆われていてそこまで広くない空間だ。 それでいて人の気配はない。

 俺は診療所に行った筈なのに、どうしてこうなってしまったのか……。

 少し目が覚める。

 よく見ると、一部は透明なガラスで囲われていて、外からこちらの状態が分かるようになっているようだ。

 それにしても頭が痛い。 それに段々、身体の末端が痺れてくる感覚を覚えた。

 まるでその部分に血が通っていないかのようだ。


 感覚が段々となくなっていく。

 段々と。



 意識がなくなってから、どれだけの時間が経ったのだろうか。

 意識が戻った俺は目を開けた。

 辺りは暗い。

 何も見えない、物音もしない。

 この場には俺しか居ないのだろう。


 身体を起こそうとする。

 しかし、身体は動かない。

 一ミリも動かないのだ。

 しかし目玉は動く。

 その感覚はまだ俺が生きている事への裏返しなのだろう。



-完-

以下簡潔なプロット










○イメージ

・感染列島を1000ぐらいで割った物

・ひぐらしのなく頃にで出てくる雛見沢症候群から色々症状やら発症条件やらを抜いた物


○元ネタと設定

・サトウタカシ

ごく普通の学生。

最近クラスメイトが一人、また一人と転校(死亡)していく事に若干疑問を覚えてはいたが気に留めていなかった。

但しそんな描写はない。

最初は病気に掛かった後主人公補正で復活するが、結局紅潮病で死ぬ。

サトウ=日本で一番多い苗字故何をしても一人ぐらいはこんな事もあるで片付ける事が出来る為

タカシ=J( 'ー`)し 基本この顔文字のssやコピペでは息子の名前が「たかし」である。


・最初に出てきた傍観者

傍観者は傍観者でしかない。

彼はこの地で起きた出来事を全て記録する者であり、それ以外の何者でもない。


・紅潮病

症状についての元ネタは無し

寄生虫によって引き起こされる病気。

物語中では感染症だと思われている。

体内の血液が頭部に集まり、多臓器不全やらなんやらで死ぬ。 慈悲は無い。

そこら辺の医学知識は皆無に近いがとにかく死ぬ。


エメラルドゴキブリバチがゴキブリを生き餌にする為に行っている行為と意味的には同じ。

但しこの虫の場合は種の繁栄及び次の宿主を見つける為の拠り所でしかない。

実際他の生き物を生き餌にする為にする事はよくある。


どうでもいい事ではあるが作中に出てきたヤマダさんもこの寄生虫に食われてしまった。


・寄生虫について

肉眼では捉えきれない程小さい。

その虫は人間等の体内に入る前に一度毒針を刺す。

毒の効果によって餌は何らかの症状を起こす。

寄生虫が脳まで達すると脳に対してもう一度毒針を刺す。

次は毒によって神経を操作され、体内の血が全て頭部に集まるようになる。

また、針を刺した瞬間から体内の熱が上がっていくが血が集まる段階に入ると熱は収まる所か下がっていく。

毒針を刺した寄生虫は餌が死ぬまでは体内に居座って種を繁栄させる行為を行うが、餌が死んだ時は体外に脱出し次の獲物を探す。



元々今年の市の小説コンクールに送る予定だった作品でしたが、筆が進まなくなったのと、送る事に若干の抵抗を感じたので別の作品を送る事となりました。

続きを書きたい方はご自由にお書きください。

一言下さると天井に張り付きます。

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