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Girl Meets Girl 1

この作品には、作者のつたない知識や想像で、ありもしないことを平気で描いたりしていますので、表現上、わかりずらかったりするかもしれませんが、どうかご了承の上お読みいただければと思います。また、勝手に盛り上がったりしますので、ご了解ください。

 時刻は午後4時半を少し過ぎたあたり。すでに肌を刺すような冷気をまとった北風が、ここ聖清学義校、高等部エリア山手の高台にある、6階建てのオンボロ学生寮の屋上に立つ一人の少女を容赦なく吹きつけている。暗闇がかった景色の中、すでに地平に近い位置にまで降りてしまった太陽のかすかな光では彼女の表情すら見て取れない。ただ風に吹き飛ばされた涙のしずくが、弱った光を収束し、きらめきながら宙に舞っていた。

 屋上には腰高の柵がぐるりと張り巡らされているだけで、乗り越えるには、この少女ですら容易であった。強風の中、バランスを崩しながらも、柵を乗り越え屋上の端に立つ。風が、不規則な竜巻のごとく、少女の足元から次々と襲いかかる。

 少女の動きが、少し止まった。というか、自分の身の上に起こるであろう事柄に気が付き、躊躇しているのだろう。西日の太陽もさらに山々の向こうに落ちていく。時間の経過がひどくのろく感じた。

「どうした?飛ばないの?」

 突然の滑舌のきいた明瞭な音声は、柵の外の少女を驚かせた。誰もいないと確信していたからだ。振り向いて声の主を探す。と、屋上の出入口のドアにもたれかかった少女が立っていた。柵の中の少女とドアのところの少女は同じ学校の制服のようである。

「飛ばないのかって言ってるのよ!」

 どうもドアのところの彼女は傍観者のようで、これから起こるであろう事態を待っているかの発言だ。寒そうに腕をかかえ、小刻みに震えながら目線を柵の向こうに立つ少女に容赦なく浴びさせた。柵の向こうの彼女も瞬時には何を言っているのか全く理解できなかった。

「あ、あのぅ、えっと。」

 混乱する柵の向こうの彼女に堪忍袋の緒が切れたのか、ドアのところの少女はつかつか向かう。柵をひらりと乗り越え、思考のままならない少女の手首をとったかと思うと、

「何があって飛ぶのか知らないけど、私も一緒に飛んであげるわ!」

と言いながら、宙に身を投げた。もちろん、柵の向こう彼女の体も身をまかせて落ちていくしかなかった。重力に引っ張られながら、今まで経験したこともない恐怖を全身で感じたとき、柵の向こうの少女(すでに柵の外に落ちた少女であるが)は気絶した。瞬間、頭の中で叫んだ言葉を残して・・・。

『し、死にたくないっ!』




 柔らかい感触が、まず頬にこすれて目が覚めた。頬に当たっているのは掛布団で、シーツに施された糊のかすかなにおいが、心穏やかな気持ちにさせる。が、その次の瞬間には、あの恐ろしい、落下の感覚が脳裏によみがえる。鼓動が耳の横で脈打つような大きな音だけが大きく聞こえ、急に息ができなくなる。だが呼吸ができない息苦しさも、今この場では当然錯覚であり、しばらく天井の一点に目をやりながら自分に言い聞かす。

『大丈夫。大丈夫。』

 彼女は深呼吸を繰り返し、ふーっと体の中の空気を口からゆっくり吐き出したところで気持ちを落ち着かせることができた。柵から落ちた少女は、今はベッドの中の少女、というわけである。

 あたりを見回すと頭の上、右手にカーテンの隙間があり、その向こうに白衣を着た女性がデスクに向かって何かを書いているようだった。

「あ、あの。」

 相手を驚かせないように細い声で声をかけると、その白衣姿の女性が手を止めて振り向いた。そこでようやくその女性が、自らが通う学校の保健室教諭の不知火先生だということに気が付く。生徒の中でもやさしく聡明な不知火先生はなかなかの人気者である。

「おっ、お目覚めね。由良谷さん。」

 ベッドの中の少女、由良谷 羽乃は、なぜ自分がここにいるのかということが聞きたかったが、真実を知る恐怖心も同時に頭の中を駆け巡る。そんな由良谷に構うことなく、不知火先生は言葉を並べた。

「気分は悪くない?校舎裏でうずくまってたと聞いてるけど、落ち着いているようだったからそのまま寝させたわ。」

『?』

 話が見えてこない。私はあのへんな子と一緒に6階建てのオンボロ学生寮の屋上から落ちた?落とされた?のに身体には何の異常も感じない。話がすり替えられている、由良谷は直感でそう悟った。

「気分は大丈夫です。ご心配おかけしてすみませんでした。」

 当たり前のお礼の言葉を口にした後すぐに聞かなければならないことがあった。

「それで、先生、わたしは誰にここに連れられてきたのでしょうか?その方にもお礼を言いたいのですが・・・。」

 不知火もそれが言いたかったかのように、話し出す。

「そうなのよ、あなたをここに連れてきてくれたのは、2年Eクラスの天城さんよ。」

 アッと、由良谷は思った。そういえばあの暗がりのなかで、天城のトレードマーク、長髪のくせ毛が、風に揺れていたことも、その奥に覗く由良谷を見つめる強い視線も、なぜかはっきりと思い出せるのだ。

「2年の天城さん・・・。」、

 1年生の由良谷でも知らない相手ではなかった。天城 まみあ。むしろこの学園ではある意味、有名人だ。今回のように奇怪な行動に出ることしばし、かなりの変人で通っているが、実のところ、学業や運動のほうもかなりの能力を保持しているらしい。それに加えて、きりっとした目元、筋の通った鼻、すらっとした体系に長身とくれば、大方、美人のお墨付きを与えられたも同然であろう。

 そんな“有名人”がなぜこんな私を助けたのか、それよりなぜ私とともに飛び降りたのか、由良谷は色々な想像を働かせるものの、わかるはずもない。すると不知火先生は話を進めた。

「天城さんがあなたをつれてきたこき、そりゃあ、びっくりしたわよ。」

 先生の話に由良谷の体は固まった。

「運ばれたあなたは無傷だったのに、天城さん、全身血だらけだったのよ。」




 由良谷 羽乃が通う聖清学義校は、いわゆるハイレージジョブズと呼ばれている富裕層のご子息淑女が通う学び舎だ。首都、新烏帽子特区に隣接する駿河野区にあるこの学校は、その規模は大学、高等部、中等部、小等部を合わせえさらに大学病院、学生寮、総合スポーツ施設など、全てあわせた敷地が800K㎡、すでに小規模の都市さながらの様相を呈している。校内も最先端の教育水準を誇り、施設の充実度、教員の質、どれをとっても申し分なく、ここの卒業生の大半が、政治家や経済界の重鎮、世界的権威の学者など、世界なレベルで活躍しているのであった。

 当然こんな学園なのだから、由良谷も通学は自家用車で行っている。由良谷の実家は地方にあるのだが、この学園に通わせるため、親が都内のハイセキュリティなマンションを準備した。そして運転手つきの自家用車も・・・。そして彼女は今はその車に乗って都内のある病院へ向かっていた。保健室の不知火先生が、由良谷を助けた天城まみあの収容先を教えてくれたからである。

 「全身血だらけだったけど、見たところ傷を負っていたのは頭と両手だったわ。」

 不知火先生が初診したところ、そんな様子だったがその後の話が由良谷を不安にさせた。

「ひとまず意識はあったから、救急車を呼ぶことを彼女に話したら、呼ぶな、と言ってヨロヨロと部屋から出て行ったのよ。私もここの管理教員の立場があるから追いかけようとしたわ。そしたらどこからともなくストレッチャーを引いた黒ずくめの人たちが、部屋の前で彼女を捕まえて乗せて連れて行こうとしたわけ。どこへ連れて行くのか聞いたけど、始めは教えてくれなかったわ。だから学校の責任として知りたいと言ったら、やっと教えてくれたのよ。」

 不知火先生の言葉を思い出しながら車窓の風景を眺める。しかし景色など全く視界に入るまでもなく、何か心に引っ掛かるものを感じながら頭で考えていた。

『不知火先生が教えてくれたのは首都、新烏帽子特区にある、十桜花総合医科病院・・・。お父様の勤務されている病院、そして私の掛りつけでもあった病院、か。』

 古い記憶が由良谷の脳裏に甦る。幼かった頃の断片的な、それでいて昨日のことのように思い出すことのできる、いやな記憶。しかし、今回の病院の訪問は天城に面会することである。お礼を言うこと、そして、もし、ちょっとでも私の言葉を聞いてもらえれば・・・。そんな気持ちを胸に抱き、車は病院に到着した。

 「松任さん、ありがとう。迎えの合図はまた送りますので。」

 運転手にそう言って、病院の入り口から中に入ろうとしたとき、何か中からあわただしい雰囲気が感じ取れた。ロビーの中には、そう、さっき不知火先生の話の中に出てきた黒ずくめの人たちが、何かを話して散開していくのが見えた。その異様さに、由良谷はロビーに入るのをやめ、中の様子を近くで覗き見ることのできる、出入り口の側面のガラスに回り込もうとしたその時、音もなく彼女の後ろに忍び寄った人影が、彼女の口を押さえつける。

「さわぐな。」

 低い、ドスの利いた声。心臓が止まるくらいの驚きを体験した由良谷であったが、その涙目で声の主を確認すると、なんとそこには、天城まみあがいるではないか!

「モゴモゴモゴッ!」

「しーっ!声を出すな!」

 天城はそういって茂みの深い庭木の中に身を伏せた。しばらくじっとして黒ずくめの連中をやり過ごす二人。興奮気味の由良谷が話のできる状態になったかを確認した天城は、彼女の口から手を放した。由良谷にとって、見舞いに来た相手が、病室でなくここに、しかも隠れているという状況にどう対応してよいか分からなかった。そして、さらに彼女を困惑する原因となる言葉が天城から発せられた。

「羽乃、私はあなたのことを持った知りたい。とりあえず、ここから逃げるわよ。」

 由良谷のもともと大きな目ではあるがこのときばかりはちっちゃな点になった。




読んでくださいまして誠にありがとうございます。初めてですが、恥を忍んでの投稿です。どうか率直なご意見お願いできればと思います。この話は漫画を描いていたころ考えた話ですので、文章にして表すというのはまた別の苦労があるのだと痛感しました。最後まで書きたいと思います。アマチュア精神で頑張ります。

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