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Absolute Zero 4th  作者: DoubleS
第九章
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明かされた秘密 2

「次は、浦沼、浦沼です。お降りの際はお忘れ物の無いようにご注意ください」

 浦沼駅のホームに降り立ったセイス・ヒューストンは、ふわふわの金髪を風になびかせながら、コートのポケットに手を突っ込んだ。

(……さて、先に霧矢の家に顔を出すべきか、直接晴代のところに行くか……)

 十一時を過ぎ、時間的にはどの民家も昼食の支度をしている頃合いでもある。そんな時間に押しかけるのは、いささか礼儀に欠けるというものだろう。いくら霧矢や晴代と親交が深いからといって、事前の連絡なしに昼ご飯に突撃するのは気が引ける。

「……おなかすいたなあ……」

 腹の虫が鳴る。朝食は食べてきていたが、生憎、セイス・ヒューストンの消化器官の駆動率は尋常ではなく、なかなかの空腹に苛まれ始めていた。

 財布の中身はそれなりに入っているが、どこかの店で外食するとなると、自分の食欲をもってすれば、帰りの電車賃がなくなってしまうこともありうる。

(…口座が使えなくなったから、現金で持ってないといけなくなったし…かといって、そんな大金を持ち歩くわけにもいかないからなあ……)

 セイスの全財産は五百万円ほどあるが、元はほとんどすべて芹島の金である。

 実は、芹島が塩沢に殺害された後、セイスは預金が封鎖される前に、芹島の口座の残高のすべてを引き出していた。もちろん自分の口座も持っていたのだが、密入国の外国人のように、身分証明のできない魔族が市中銀行で口座を開設することなどできるわけもなく、以前は教団がマネーロンダリング目的で開設していた架空名義の口座の一つを借りていた。そこに預けても、教団の連絡を受けた銀行に口座を凍結されてしまっては意味がない。

 仕方がないので、引き出した金はすべて現金で持たざるを得ず、現在、西村家の金庫にほとんどが保管されている。セイスが西村家の世話になる際、その中から、面倒を見てもらう見返りや、当面の生活費として、百万円ほど渡そうとしたのだが、西村の両親からは、そんな大金は受け取れないと断られてしまっていた。ちなみに、このお金のことを西村龍太は知らない。

(……やっぱり、ATMが使えないってのは不便だなあ……)

 財布の中身を確認すると、セイスはどこの店に入ろうかと考え始めた。当初は、喫茶・毘沙門天に入るつもりだったのだが、あくまで喫茶・毘沙門天は喫茶店であり、本格的な昼食にはあまり向いていないような気がした。

 駅の改札口から外に出ると、セイスは駅前広場で不思議な雰囲気の女性に出会った。年は二十代半ばほどで落ち着いた色の髪をしている。


「あなた、魔族でしょう」

 いきなり声をかけてきたその女性は、きちんと魔力を放出しており、特に魔族や契約主というわけではない。しかし、その魔力の属性がはっきりしない。火でもあるようだし、水のようでもある。風のようでもあるし、土のようでもある。光のようでもあり、闇のようでもある。

 考えた末に、関わらない方が吉であるとセイスは判断した。

「……急いでいるの。ごめんなさい」

「あら残念。でも、どうせだから一緒にお昼ご飯でも食べない? こんなところで出会えるなんて珍しいと思ったのよ。もちろん、おごってあげるけれど」

 昼ご飯という言葉にセイスは足を止めた。ただ、警戒心は持ち続けたまま話に乗った。

「……まさかとは思うけど、あなたもしかして教団の関係者?」

「逆よ、セイス・ヒューストン。私はあなたと敵対する理由なんてないわ」

 業を煮やしたセイスは女の素性を尋ねる。彼女は空腹も相まって苛立った表情をしているセイスにニコリと微笑むと答えた。

「私は、相川探偵事務所の助手、古町水葉。よろしく」

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