5月
今回は幸せと単純には言えないと思います。今までの流れと毛色が違うかな。
寒くなると人肌が恋しくなるとはよく言ったもので、十月に付き合い始めた彼女と、暖かくなってきた五月に見事別れることになった。……正確には振られたということだが。
付き合い始めた頃は毎日電話やメールで連絡をとって、クリスマスはもちろんプレゼントを用意して二人で過ごした。初詣にも一緒に行き、おみくじをひいたら恋愛運がよくて境内ということも忘れて二人で大喜びした。回りに白い目で見られて二人で慌てて神社をあとにしたっけ。
寒い冬の間は二人手を繋ぎ、暖かくなった三月の終わり、卒業という名の別れの一形式に、想いを確認しあってそれぞれの道を歩き始めた。
想いを確認しあっていたから、環境が変わっても平気だと高をくくっていた僕に彼女が強力パンチをかましたのはゴールデンウィークの最初の日。おかげでその後のゴールデンウィーク中、一人で過ごすことになってしまった。
いつもと同じだと思っていた。
たった一ヶ月と少しで大人びたとは思ったけれど。
変わらないと思っていたのは僕だけだった。
彼女がさよならを言い出すまで気が付かなかった僕は相当な鈍感だ。
「二人のこれから先はないと思う。だからさよなら」
カフェの入り口に吊るしてある鐘の音が鳴る度、頭の中で彼女の言葉がリピートされる。
どれだけそうしていたかわからないけれど、気が付けば日が傾いていた。
伝票を手に取り立ち上がると、忘れて行ったとは思えない状態で置いてある指輪に気付いた。クリスマスにプレゼントしあったペアリングだ。
「ありがとうございました」
店員さんの明るい声に送り出されて店を出た。
一つ伸びをすると笑みがこぼれた。きっと今頃、あの店員さんは首を傾げているだろう。
グラスの水の中で輝く二つのリングに。
五月の風はやさしく僕を包んでくれた。
いかがでしたでしょうか。
どこが天真爛漫なんだ、と自分で書いてて思ってしまいました。
でも……以下言い訳ですが、
自分と相手とのことについて考えたことや思ったことを素直に出せる人は天真爛漫だと思います。それが例え結果的に相手を傷つけることになったとしても。そのままならもっとどろどろしそうだし(笑)
誤字脱字、感想等ございましたらぜひお聞かせください。