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11月

 彼女はとても我が儘だ。

 自分が何かしてほしい時だけ僕をものほしそうな眼で見上げてくる。

「今度は何だっていうんだ」

 僕がいくら聞いても返事なんてしてくれない。

 それでも僕は彼女が大切で、ついつい甘やかしてしまう。

「そんなことをしていたら彼女のためにならない」

 何人の友人にそう言われただろうか。

「わかっているんだけどな」

 友人達に何度も言われた言葉を思い出して、そう呟くと彼女は不思議そうに僕を見上げた。

 そう!これなんだ!

 彼女のそのつぶらな瞳にいつも言いたいことも忘れてしまうんだ。


 *


 日々の中のちょっとしたことで気分は浮いたり沈んだり。

 今日はたまたま沈んでしまう日だっただけ。

 朝、眼が覚めたらはずせない講義が終わる時間で。

 慌てて大学へ行ったら抜き打ちで試験があって。

 レポートの資料を借りに図書館へ行ったら、以前に借りた本を返し忘れていて借りられず。

 お昼を食べようと学食へ行ったら財布を忘れていたことに気付き……

 散々な一日をどうにか過ごして帰れば、彼女はいつものようにソファーでくつろいでいた。僕には眼もくれず。

 僕はそのまま彼女の隣へ腰掛けた。そしてそのまま、ふがいなさやら情けなさやらで頭を抱えていたら、背中が重くなった。


 にゃぁぁ


「何?慰めてくれるの?」

 背中の上の彼女を背中から引っぺがして抱きしめた。

「寒くなってきたし、温めてよ。……うわ!」

 温かいと思ったのもつかの間、手を引っかかれた。

「……あ、ご飯ね」

 腕から飛び出た彼女を見れば、こちらに見向きもしないでキッチンへと歩いていく。僕は慌てて彼女の後ろをついていく。

 彼女専用のお皿にご飯を置けば、一声愛想よく返事をしてくれた。たったそれだけのことで嬉しくなる僕はどうしようもないと思う。


 それでも……彼女のいない生活なんて考えられない。

『彼女』と言ったって人間とは限りません(笑)

人間だと思って読んで下さった方がいれば、嬉しいです。

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