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婚約破棄された伯爵令嬢は、護衛騎士の一途な溺愛で救われます:シリーズ

婚約破棄された伯爵令嬢は、専属護衛騎士に10年越しの愛を告げられました

作者: クラル
掲載日:2026/08/24

恋愛系短編初めてです!

誤字脱字のみにAI 使ったので、補助になってます。

「リリアナ! 今日から専属護衛騎士になってくれる『リック』だよ。リリアナよりも4つ上のお兄さんだ……」


リリアナの父、アルヴィス伯爵は今日、初めての護衛騎士を連れてきた。

リリアナ8歳、リック12歳の時のことだ。


「初めまして! お嬢様。よろしくお願いします! 僕のことは年の離れた兄であり、友達のように思っていただけると嬉しいです」


リックはリリアナの目の前に片膝をつき、手の甲にキスをする。


「ふへっ!」


リリアナは突然のことで顔が真っ赤になり、固まってしまう。


「こらっ! リック。まだリリアナには早いだろう! 自己紹介だけでいいんだ!」


アルヴィス伯爵はリックとリリアナの様子を見ている。

その顔は口角こそ上がっているが、眉間にはしわが寄り、目が笑えていない。


「あっ……ごめんなさい! 伯爵様、お嬢様! 伯爵様は僕の恩人なのになんてことを! 安心してください! 僕が一生をかけてお嬢様をお守りします! この御恩は忘れません」


リックは立ち上がり、アルヴィス伯爵に一礼する。

その右手は剣を握っていた。


「はっはは! そうか、娘を……リリアナを頼んだよ? リック。私は妻も亡くなっていて、子供もリリアナ一人だ。リリアナは、私にとってかけがえのない宝物なんだよ……それに、リリアナには2つ上のルイスという婚約者がいるんだが、侯爵家の次男だ……くれぐれも気(・)を(・)つ(・)け(・)ろ(・)よ?」


アルヴィス伯爵はそのまま、リックの両肩を両手で握りしめた。

その顔は、普段の穏やかで優しい伯爵そのもの。


「はい! 伯爵様の宝物をしっかりとお守りしますよ! それに、大丈夫だと思います。僕はお嬢様の護衛騎士ですから!」


リックは一瞬暗い表情になったが、すぐに明るいいつもの少年へと戻った。

そして、笑顔で大きくうなずく。


アルヴィス伯爵は、リックの琥珀の瞳に宿るその覚悟に少し驚いたと同時に、少し安堵している。


「リックお兄ちゃんが私のゴエイキシというのをするのよね? 一緒に来て!」


リリアナは、話が終わったタイミングを見計らい、父とリックに声をかけた。

リックはちらっとアルヴィス伯爵を見る。


伯爵は小さくリックの目を見て頷いた。

それにリックも頷き返す。


そのまま、リックはリリアナに引っ張られるがままに屋敷を探検した。


◇◇◇◇◇◇◇◇


リックがリリアナの護衛騎士になってから、10年が経った。


二人ともすっかり大人だ。


リリアナは華奢ながらも女性らしい体つきになり、リックは騎士らしく筋肉質な体格だ。



最近、リックには気になることがある。


それは、リリアナが控えめで健気で、努力家すぎるということだ。

婚約者であるルイスは、滅多にリリアナに会いに来ないにもかかわらず、家計の管理や自身の領地の仕事などを、側近を通じてリリアナに送ってくるのだ。


リリアナは控えめで自分を卑下するので、反論をしない。

これはリックが長年頭を悩ませていることである。


「お、お嬢様! 大変です……ルイス様に呼ばれました! 明日、書類をついでに持ってこいとも……」


部屋の扉をリックがノックもせずに開け放つ。

よほど急いでいたのだろうか。


「リック? ノックして静かに入ってほしいわ~? でも、それは大変ね……リック、御者の手配とお父様への報告をお願い」


リリアナは書類仕事が一通り片付いたので、ティータイム中だったのだ。

リックがいきなり入ってきたことで、優雅なティータイムがぶち壊しになった。


リックは幼馴染だからとはいえ距離感が少々おかしいとリリアナは内心で思っている。


「はい! もうすでに終わっております。そして、お嬢様の大好きな『フィナンシェ』をお持ちいたしましたよ!」


リックはリリアナに一礼すると、後ろに回していた左手を前に回し、右手で持ち直す。


その手には、リリアナの大好物であるフィナンシェがあった。

リリアナは香ばしいバターの風味が大好きなのである。


部屋中にナッツとバターの優しい香りが充満する。


「まぁ! リック、分かっているわね。一緒に食べませんこと?」


リリアナはすでに両手にフィナンシェを握っている。


そのフィナンシェで目の前のソファを指すのだから、リックも苦笑してしまった。


「あぁ、そうしようかな!」


リックは笑顔で頷き、目の前に座る。


◇◇◇◇◇◇◇◇


……翌日


「リック! 書類は入れたわね?」


リリアナが馬車の窓から、横を馬で護衛しているリックに向かって声をかける。


「はい! ばっちりと。あぁ、今日もお嬢様がかっこいい……」


リックはリリアナのほうを見てサムズアップをする。



そして前を向くと、心の中の本音が漏れてしまう。


「リック? なにか言ったかしら?」


リリアナが閉めかけていた窓を開け、リックに問う。


「何のことでしょうか? お嬢様、お疲れならばお眠りになられてはいかがでしょうか?」


リックは涼しげな顔で受け流す。


(やばい! 僕、今のを聞かれたらキモイって思われるかも! それだけは嫌だ……)


しかし、リックは内心でとても焦っていた。


そのままリリアナが頷き、窓とカーテンを閉めたのを確認し、とりあえず一安心するのであった。


「…ょうさま…!!!!お嬢様!リリアナ!!起きろ」


リックは爆睡してしまったリリアナを必死に起こす。


リリアナはよほど疲れていたのか、なかなか起きない。


「あぁ、もう着いたのね……」


リリアナは淑女らしくない大あくびをしながら、リックにエスコートされて馬車を降りた。


そして、そのままルイスの待つ部屋へと向かう。


「リリアナ! 聞いてくれ、またミレイユが倒れたんだ! ミレイユの見舞いついでに書類を受け取ろう!」


それを聞いた瞬間、リリアナは手を口に当てて驚いた。


またルイスの従妹であるミレイユが倒れたのか。


そして同時に、なぜそんな上から目線で言われなくてはならないのかと思った。


「はい……かしこまりました」


リリアナはルイスの後ろをついていく。


その一歩後ろをリックがついていく。


ルイスは異常なまでに従妹であるミレイユを気にかけると同時に、可愛がっていた。


ミレイユは部屋のベッドの上で寝ていた。


その顔は熱っぽい。

微熱くらいはあるのだろう。


「お加減は大丈夫でしょうか? ミレイユ様」


リリアナはミレイユを気遣う。


「えぇ、大丈夫ですわ! ごめんなさい、わざわざ来ていただいて……ありがとうございますのほうがいいかしら? リリアナ様!」


ミレイユは体をベッド脇に置かれたクッションに預け、起き上がった。


「まったく! ミレイユを起き上がらせるとは何事だ。もっと優しくしてやれ! ミレイユは病人だし弱いんだよ!」


ルイスはリリアナを見て、言い放った。


その言動にリックは剣を少しだけ鞘から抜いていた。


それを見たリリアナは軽く手をリックのほうに向けて振る。


リックはその意図を理解したのか、鞘に剣を納める。

その様子を見て、リリアナは安堵する。



しかし、ルイスが言ったその言葉は、陰ながら頑張ってきたリリアナにとって胸がチクっと痛む。



リックはリリアナに止められた以上、何もできない。

つまり、発言も行動も起こせないのだ。


リックはとても歯がゆい思いをする。


「配慮が足りず申し訳ありませんでした」


リリアナはルイスとミレイユに対して、深々とカーテシーをした。


「それに、いつも君はそんな些細なことにさえ気が利かない! どうして気遣えないんだ? 君はミレイユと違って冷たいな……」


ルイスはミレイユのベッドの縁に座りながら、延々と言い続ける。

ルイスの横では、ミレイユが二人を交互に見ながらオロオロしている。


「以後気を付けます。申し訳ございません」


リリアナはカーテシーを今も続けたままだ。

そして、その顔は青ざめていく。


「申し訳ありません! ルイス様、ミレイユ様。少々この後お嬢様はご予定がございまして、時間が押しておりますので、こちらで失礼いたします。書類を届けに来るだけだと思っておりましたので……」


リックは我慢しきれなくなり、リリアナの一歩後ろで片膝をつき、言う。


「そうか……まぁ、手紙でそう伝えたから仕方ないな! 許そう」


ルイスは片手を顎に当て、最終的には頷いてくれた。


「ありがとうございます。失礼いたします」


そのままリックは、さりげなくリリアナをエスコートしながら馬車へと向かった。


リックは護衛騎士としてルイスのシュヴァナ侯爵家の邸宅を完全に把握しているので、最短距離で馬車へと向かった。


「お嬢様、なんで反論しないんですか!? それに、謝る必要なんてないし、なんで僕を止めるんですか?」


リックは先ほどのリリアナの対応に不満があるようだ。


「なんだかね、上から重りを乗せられている気分だったからよ。そんな気力なんてないわ」


リリアナは馬車の外を眺めていた。

帰りはリックが無理を言い、リリアナの馬車に同乗させてもらった。


「無理しないでくださいね? 僕だって伯爵様だっていますから……」


リックはリリアナの膝の上に置かれた手を両手で握った。


◇◇◇◇◇◇◇◇


「今日も完璧ね! 美しいわ……私のハニーブラウンの髪と映えるわね! このドレス」


今日はルイスの家で開かれる近親者のみのパーティーだ。


リリアナは黄と赤を中心に構成されたドレスをまとっている。


従来のドレスよりもふんわり感を落とした新デザインのものだ。

この型が今、爆発的に流行している。


そのまま、リリアナ、アルヴィス伯爵、リックと複数の護衛、そして御者で会場へと向かった。


「まぁ、こんばんは! リリアナ様、こちらの果物酒はいりますか?」


そう言って声をかけてきたのは、ミレイユだ。


彼女の美しい銀髪に映える濃い青のドレスである。

ドレスには白糸で幾重にも刺繍された花。


ミレイユは両手に果物酒を1本ずつ持っている。


「ミレイユ様! こんばんは。まぁ、いいんですか? ぜひいただきますわ!」


そのまま、二人は他愛もない会話を楽しんだ。


「うっ! はぁ……はぁ……」


いつも通り会話をしていたかと思うと、いきなりミレイユがよろめいた。


「大丈夫ですか? ミレイユ様……」


リリアナは咄嗟にグラスを真横にあったテーブルに置き、ミレイユを支える。


「私はお酒が弱くて……あとは、コルセットが……ちょっと」


ミレイユは涙目でリリアナの腕をつかみながら、そう言った。


「とりあえず、控室に……いや、ここは自室に向かいましょうか」


リリアナはそのままミレイユの腰を支え、出口へ向かって歩き出す。


もちろん、少し離れたところからリックもついてくる。


「ミレイユ! 大丈夫か……リリアナ! またお前か……なぜミレイユにそんなことをするんだ!」


ルイスは誰かに聞いたのか、ミレイユのもとへ走って飛んできて、リリアナの手からミレイユを引き離した。


「ち、違う!」


ミレイユはルイスに必死に訴えるが、体調が悪いせいでうまく声が出ず、会場のざわめきにかき消されてしまう。


「俺は、決めた! ここに宣言する。リリアナ・アルヴィス伯爵令嬢との婚約を破棄する! リリアナ、お前は俺がいなくてもいいだろう? でも、ミレイユには俺が必要なんだ!」


社交界全体が凍り付いた。


そして、ミレイユはただでさえ悪い顔色が、さらに悪くなってしまっている。


「あっ、あ……」


ミレイユは体調が悪いながらも状況が理解できたようで、そのまま気を失ってしまう。


「ミレイユ!? 誰か、ミレイユを部屋に! リリアナ、お前のせいだ! ここまでミレイユが悪くなることもなかったのにぃ!」


ルイスは声を荒らげる。


そして、そのまま給仕をしていた人と侍女が駆けつけ、ミレイユを部屋へと連れ帰る。


「お嬢様、アイツの腕一本切り落としていいですか?」


気配もなく、リックがリリアナの背後で恐ろしいことをささやく。


その声は普段よりも低く、よどみがない。


もちろん、リリアナは小さく首を横に振る。


すると、また気配もなく去っていった。


「すべて私のせいでございます。責任を取り、ありがたく婚約を破棄させていただきます」


リリアナは、感情的になったリックを説得することを断念し、すべてを自分のせいであると認め、婚約破棄をのむという形で丸く収めようとしたのだ。


しかし、リリアナにはひとつ気にしていることがある。


それは、ミレイユが善人なので、自分のせいで婚約破棄してしまったと罪悪感を抱いてしまうことである。


おそらくというよりは、絶対に後悔してしまうだろう。


リリアナの心配はそれであった。


「ルイス君……最後の『全部我が娘のせい』だったかな? それにはびっくりしたよ。まぁ、こんな婚約はこちらから願い下げだね。それでいいだろう? リリアナ。おや、リックは大賛成か!」


アルヴィス伯爵は娘が悪く言われているのを聞き、ルイスとリリアナの間に立った。



そして、「私の宝物はこんな奴にやらん」と言わんばかりに、正々堂々と断った。


リリアナの背後では、リックが剣を鞘から抜きかけていながらも大きく頷いている。

その分かりやすすぎる行動に、アルヴィス伯爵は笑っていた。


「はい! 問題ありませんわ」


リリアナも頷く。


「では、後日書類を送るからサインをしてね? では、私たちはこれで……」


そのまま馬車に向かい、行きと同じメンバーで家に帰った。


「本当にさんざんな目にあったな! 決めたぞ! うちの娘は誰にもやらん。絶対にだ……」


アルヴィス伯爵は馬車の中でこぶしを握り締め、叫んでいた。

その様子に、リリアナもリックも顔を見合わせて苦笑している。


「お父様……そしたら、建国以来400年続くアルヴィス伯爵家が私の代で途絶えてしまいますわよ?」


リリアナは隣に座っているアルヴィス伯爵に言った。


実は、アルヴィス伯爵家は建国以来続く名門伯爵家なのだ。


「むぅ~……それは、遠縁から養子をもらえばよかろう?」


伯爵は眉間にしわを寄せ、目をつぶって考える。


「確かに?」


リリアナは疑問があるのか、首をかしげて人差し指を顎に当てた。


「養子をとるのは少し待っていただけませんか?」


リックが頬を赤らめ、片手を挙げ、もう片方の手で口元を隠していた。


「なんだ? リック」

「なにかしら?」


アルヴィス伯爵とリリアナが顔を見合わせて、リックを見る。


「僕は、10年ほど前に伯爵様と約束しました。『お嬢様をお守りする』と。しかし、僕は目の前でお嬢様が傷つけられるのを何もせずに見ているだけでした。僕は約束を守れませんでした」


リックは両手を膝の上に乗せ、握りしめていた。

そして、その顔は暗い。


「違う! 私が止めたのよ……リックは悪くないわ! 何度も私を助け出してくれたもの!」


リリアナは涙目で、大きく首を横に振る。

リックは俯いて黙ったまま。


「いいえ……ですから、僕は責任を取ってお嬢様と結婚させてください!」


リックは馬車に響き渡るほどの大声で言った。

そして、リリアナを見て己の恥ずかしさを理解したのか、顔を真っ赤にした。


「それは、私が罪悪感を……」


リリアナはリックを見て、俯き気味に言った。


「伯爵様がいる前で言うつもりはなく、恥ずかしいから、後で言うつもりだったんですけど……」


リックはリリアナの方をちらちらと見る。


「なんだ?言ってみなさい」


アルヴィス伯爵はリックのほうをじっと見る。


「僕、お嬢様に出会った時から、ずっと好きでした。そして、僕はお嬢様と苦楽を共にしている中で、思ったことがあるのです。リリアナを守りたいわけではなくて、リリアナと一緒にいたいんだって……だから、僕と結婚してください!」


リックは顔が真っ赤のまま、リリアナの手を握って言った。


リリアナは顔を真っ赤にして、アルヴィス伯爵を見た。


アルヴィス伯爵は、好きにしろと言わんばかりに窓の外を見た。


「は……い! わ、わたくしも、頼もしくってかっこいいリックのことが好き……よ」


リリアナは両手で口を覆い、泣きながら頷いた。


その様子を見たリックは笑顔だ。


「伯爵様、僕をアルヴィス伯爵家の婿養子にしていただけないでしょうか?」


リックとリリアナが同時にアルヴィス伯爵のほうを見る。


「忙しくなるな……婚約解消手続きに、婚約に、養子に、結婚式に……」


伯爵は小さく笑い、ぶつぶつと言い出した。


「ということは! ありがとうございます!!!」


「お父様っ!」


二人は笑顔で、共に泣いた。


「なぁ、リック! お前、あのことは言わなくていいのか? 妻になる人(リリアナ)に……」


アルヴィス伯爵は、リックに向けて言った。



両腕を胸元で組んでいる。

そして、首をかしげた。


「つ、妻!!!」


父にそう言われたリリアナは顔を真っ赤にし、両手で頬に触れていた。


「そ、そうですね! リリアナに聞いてほしいことがあるんだ。僕はハールツ侯爵家の庶子です……母と二人で暮らしていたのですが、10歳の時に母が伝染病で亡くなり、父である侯爵に引き取られました。しかし、継母の扱いは酷く、見るに見かねた父が、しばらくは継母と離したほうがいいだろうと考え、同じく母を亡くした子を持っており、父の親友だった伯爵様に、お嬢様の護衛騎士という形で雇っていただきました。伯爵様は僕にとって恩人なのです」


リックは泣きながら、自分の過去について語った。


実は、リックは侯爵家の庶子だったのだ。


「え、そ……うなんですか?」


リリアナは一切知らされていなかったので、唖然としていた。


「まぁ、そういうことだ!」


リリアナの横でアルヴィス伯爵はサムズアップをしながら微笑んでいる。


それにつられたのか、みな笑顔だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


ー3日後、シュヴァナ侯爵邸


「なぜ、俺の机に書類がたまっているんだぁ!!!! 今までこんなになかっただろう!」


ルイスは叫んでいた。

今、ルイスの机上には書類が何百枚と積み上がっている。


「今まではリリアナ様が行ってくれていました!」


「リリアナ様と婚約破棄なされたではありませんか?」


使用人たちは口々にそう言う。


急にルイスに対して使用人たちは冷たくなった。


「そんな!!!!」


そして、ルイスは膝をつき、崩れ落ちた。


「リリアナ様は、優しかったもの! だから、婚約破棄なんてしてほしくないし、あの時泣いてたのは私が体調が悪かっただけよ! なんで、なんでっ、リリアナ様が悪者になってしまうの!」


ミレイユはベッドの上で泣き叫んでいた。


「ミレイユ様! リリアナ様からのお手紙が届いております」


ミレイユのもとに、リリアナからの手紙が届いたのだ。


リリアナはミレイユが罪悪感に駆られているだろうと思い、手紙を出したのだ。


◆◆◆◆◆

ミレイユ様へ。


この度は、パーティーの場で大変な騒ぎになってしまい、ミレイユ様にご心配をかけてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。


体調は大丈夫ですか。

どうか今は、ゆっくりとお休みになってくださいね。


ミレイユ様、貴方はいつも私に声をかけてくださり、ありがとうございます。

私はミレイユ様に何度も救われてきました。


あの日のことは、あなたのせいではありません。

どうか、気に病まないでくださいませ。

婚約破棄は私が受け入れたのです。


また体調が落ち着いたら、ゆっくりお話ししましょうね。

今度お茶でもいかがかしら。おいしいお菓子を準備しておきますわね。


ーリリアナ・アルヴィスー


◆◆◆◆◆


「あぁ、リリアナ様! ありがとうございます……ぜひお茶会しましょう!私もはやくお会いしたいですわ……」


ミレイユは手紙を涙で濡らしながら、言った。


◇◇◇◇◇◇◇◇


ー半年後


教会の庭園は、朝の光を受け輝いていた。

通路には花々が咲き誇る。


控室で、リリアナは純白のドレスを着ていた。


「……本当に、私が花嫁になるなんて!」


リリアナは目の前の鏡に映る自分を見て、少しだけ照れたように微笑む。


ちょうどその時、控室の扉がノックされた。


「リリアナ、入ってもいいかい?」


リックの声だ。いつもより少し緊張している。


最近、リックはリリアナの呼び名を「お嬢様」ではなく「リリアナ」と呼ぶようになった。


「ええ、入っていいわよ」


扉が開き、白の礼装に身を包んだリックが現れる。

その顔は優しく微笑んでいる。


「綺麗だよ、リリアナ……」


リリアナは頬を赤らめた。


「ありがとう、リック! あなたも……とても素敵よ」


リックは照れたように笑う。


「じゃあ……行こうか。伯爵様……いや、義父様が待ってる」


アルヴィス伯爵がリリアナの手を取り、ゆっくりと歩き出す。

参列者たちが息を呑む。


リリアナのハニーブラウンの髪がステンドグラスから差し込む光を受けて金色に輝き、セージグリーンの瞳が柔らかく揺れる。


アルヴィス伯爵はリリアナの手をリックへ渡しながら、静かに言った。


「リリアナを頼んだよ。リック……」


アルヴィス伯爵のその言葉はリックの心を強く動かした。


「はい! 一生をかけて、幸せにします!」


リックは笑顔で答える。


リックのその返しにアルヴィス伯爵は泣き笑いしてしまった。

リリアナは胸がぎゅっと締め付けられた。


司祭が静かに聖典を広げながら告げる。


「リックはリリアナに愛を誓いますか?」


リックはリリアナの手を包み込み、まっすぐ見つめた。


「はい。誓います。今生のすべてをかけ、愛すと!」


リリアナの瞳が揺れた。

リリアナは嬉し涙がこぼれそうになるのを、必死に堪える。


「リリアナはリックに対して、愛を誓いますか?」


「はい! 私は、リックと共に歩みます……!」


ステンドグラスから一筋の光が二人を照らす。


「では、指輪の交換を……」


司祭の声で指輪の交換が始まった。


リリアナの指には琥珀色の宝石……インペリアルトパーズの一つ石。

リックの指には薄緑色の宝石……グリーンサファイアの一つ石。


互いの瞳の色の宝石だ。

そして、互いの指の上で光を受け、眩く光っている。


披露宴が庭園で開かれると、そこにはミレイユの姿があった。


銀髪が光を受けて揺れ、涙を浮かべながら微笑む。


「リリアナ様……本当に、おめでとうございます……」


リリアナはミレイユの手を握り返す。


「ありがとう、ミレイユ様。あなたが来てくれて嬉しいわ!」


互いに、笑顔でしばらくお話をしていた。

そして、手紙に書いた約束通り、お菓子を食べた。


リリアナは大好物のフィナンシェを。

ミレイユはマドレーヌを。


「リリアナ、ちょっといいか?」


リックがリリアナのもとへとやってきた。


「もう一度言わせてくれ……リリアナ、愛している!」


リックは公衆の面前で片膝をつき、リリアナの手の甲にキスをした。


リリアナは恥ずかしさで、顔を真っ赤にしていた。


リックは顔こそいつも通りの涼しい顔だが、耳は真っ赤だ。


「私もよ! リック」


リリアナは笑顔で答える。


その様子を見て、伯爵は満足そうに笑い、使用人たちは泣きながら拍手を送る。


この時2人は知らない。

リリアナが王太子妃のもとで働くことで、新たな試練が生まれることを。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今後、シリーズとして展開していくつもりでいます。

今後とも本作品をよろしくお願いします!


次のお話は「N7480MQ」です。


本作を読み「本作が面白い!」「幸せになってね!」「好き!」と感じていただけましたらぜひ【ブックマーク】や【評価★★★★★】【感想】で応援してくださると幸いです。

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