26.1.11 「あなたが帰ってくる前に」
パパとママが帰ってこない。
22時を指す時計を見て、幸は眉を寄せた。
連絡はまだ来ていない。珍しく。
21時半に送ったチャットに既読はまだついていない。
「どうしたんだろう」
家の中は私ひとり。
すでに夕飯も寝支度も済ませている。
私だって成人してるんだから、子供の頃みたいに不安にならずに、寝て待つことだってもちろんできる、けど。
「何して待とうかな」
自分の部屋の棚から、積読になっていた推理小説を取り出す。
私はスマホとヘッドフォン、小説を持って、リビングへ行き、ソファに座る。
リビングの照明は明るさを調節して、一番暗く。
少しだけワクワクできる読書ルームの出来上がり。
既読がついていないかを確認して、スマホを伏せて、私はそっと小説の表紙をめくった。
「既読がつきません」
23時を回った頃、ようやく休みなしで対応していた緊急の仕事が片付いた詩音と哲人。
スマホを開いてみれば、数時間前に幸から連絡が来ているのに気がついた。
詩音が慌てて返信するが、既読はつかない。
「寝てるんじゃないか?」
「そう、でしょうか……」
今までの経験上、幸はこういう時にあまり寝ないと詩音は思っていた。
事務所の外に出ると、今にも雪が降りそうな天気だ。
特に幸のことになると心配する詩音を哲人が宥めて、家路を急ぐ。
「さっちゃん、大丈夫かな……」
「あいつのことだ、いざという時は強いさ」
20分ほどで家に到着して、車を降りる。
足早に家に辿り着き、ドアを開けると、リビングから薄明かりが漏れていた。
「ただいま」
リビングのドアを開けてみれば、幸は本を両手で持ったまま、ソファに転がって寝落ちていた。
「本当に、寝てました」
「いや、でもこれは、俺たちを待つつもりで寝落ちたんだろうな」
哲人は毛布を持ってくると、起こさないように気をつけて幸にかけた。
「む……」
「悪い、起こしたか……いや、寝てるな」
「あら」
「明日、ちゃんと謝んなきゃな」
「えぇ、そうですね」
哲人と詩音は、起こさないように幸の頭を撫でた。
寝ている幸の表情が少し緩んだような気がした。




