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26.1.10 「篠塚の在り方と、私のホント」

篠塚家の人間たるもの、清く・正しく・誇り高くあらねばならない。

華乃は、自分にそう言い聞かせて生きてきた。


常に、成績は上位で、にこやかに、余裕を持って、朗らかに。

これが自分を律するものなのか、縛るものなのか、たまにわからなくなる。


「華乃」

は、と思って瞬きをする。

私は何秒、考えに耽っていたの?


いつの間にか目の前には真くんがいる。いつも学校で会うのとは違う、スーツ姿で。

今日は篠塚家と会社を合同した新年会。ここは篠塚の本家だ。どうして真くんが居るんだろう、と思った。お父様が呼んだのかしら。


「真くん、来ていたのね」

「あぁ。久志さんに「君もどうだい」と声をかけてもらって」


やっぱりそうだった。お父様は真くんをいたく気に入っているから。

真くんに会いたくない訳では無いのだけど、お父様も、お誘いしたのなら私にくらい言って欲しい。

そうしたら、もっとちゃんと、この和装でも映えるようにおめかしして来たのに。


「驚いたよ、来てみたら篠塚の人達みんな和服だったんだから」

「本家では、篠塚の人間のドレスコードは和服なの。昔の名残なのよ」

篠塚は江戸時代の大商家に由来する家だ。第一次大戦の時に大戦景気に乗っかって一大財閥となり、戦後も一企業、グループとしての地位を磐石なものにしてきた。

そんな家ゆえに、今でも古い慣習が残っていたりする。


「でも、普通の服の人たちも沢山いたでしょう?」

「あぁ。じゃあ、あの人たちは篠塚家の人達じゃないのか」

「うん、会社の従業員の皆さんよ」


ふぅん、そうなのか。と言って、真くんは庭へと目を移し、流れるように空を見上げて黙り込む。

「その、さ」

「え、えぇ」


真くんは私に視線を戻すと、照れた様子で言った。

「その着物、似合ってる」

「ぁ……ありがとう。真くんも、スーツがよく似合ってるわ」


心が擽ったい。真くんからの言葉は、お父様やお母様に似合ってると言われるのとは違う嬉しさだ。


「あ、そろそろ集まる時間かもな」

「ええ、行きましょう」


本家の玄関先にいる社員さんたちから注がれる生暖かい視線を笑顔でいなして、私は真くんと共に大広間へと向かった。

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