26.1.5 「お正月」
「さっちゃん!初詣行こう!」
と、姉の紬に言われたのが1/2の朝、つい15分前。
姉はどこからか黄色い振袖を取り出してきて、あれよあれよという間に私を着替えさせ、絶賛いま、薄化粧を施していた。
「突然どうしたの?ねぇね、初詣はいつも湊くんと行ってるのに」
「んー?さっちゃん、最近根詰めて勉強してたでしょ?ママ、心配してたよ」
「あ……」
ママに心配させていた事実が、胸に刺さる。
確かに冬休みに入ってから、休みなく毎日勉強していた。
宿題をさっさと終わらせたかったし、年始に苦手な化学の小テストが控えているから。
言われてみれば、最近ゆっくりリビングにいること、少なかったかも。
「だから、今日は息抜きにねぇねとお出かけ。いい?」
「うん、わかった」
「よし。……はい、メイク完了!今日もかわいいねぇ」
「ん、ねぇね」
「なぁに?」
「ありがとう」
「んーん。ほら行こ!」
電車で4駅、更に慣れない下駄で歩いて15分。
近所のお宮さんに着くと、鳥居の近くまで大行列が連なっていた。
さすが初詣、と苦笑いでごちる。
例年の初詣は人が落ち着いた1月末の頃に行っていたから、このお宮さんがこんなに混んでいるのを見たのは初めてだ。
思わずねぇねの手を繋いで、人混みの辺りをきょろきょろ見渡す。
人にぶつからないように慎重に歩いていると、ねぇねが「あ!」と声を上げた。
「あれ、啓史くんと紗良ちゃん?」
「あ、紬ちゃん、幸ちゃん。あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます!2人も初詣?」
「あぁ。紗良がここのおみくじは当たるって言うから、気になってな」
啓史くんは篠塚家の将来の当主だ。
本家の年始行事が忙しいから初詣は近場で済ませる、と前に言っていたのを思い出す。
「へぇ〜。ここ当たるんだ。さっちゃん、後で私たちもおみくじ引こう!」
「うん」
4人で参拝の列に並ぶ。
ねぇねと紗良ちゃんが話しているのを聞きながら、私は晴れ渡る空を仰いだ。
(今年も、穏やかな1年になりそう)




