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「受け取ったもの」

「真のあの観察眼はママ譲りかな」


街角にあるビルの1階、カフェのテーブル席。

チョコレートラテを一口飲んだ紬は、華乃から、この間の真の様子を聞いて、真らしいな、と思いながら返答した。


森田家3兄妹の母親である詩音は探偵だ。

普段は普通の探偵というよりも街のママたちの味方といった感じだが、その実力は確かだ。

かつて、篠塚家の案件も受けたことがある。


「よく人を見ていて、よく気づくものね」

「うん。カカオくんの頃からよく見てる人だと思ってたけど、生まれ変わってからは明らかに精度が上がったと思う」


脳というのは不思議なもので、同じ魂が入っていても、脳によって持ち合わせる才能は変わってくるらしい。


「紬ちゃんの直感は、元々のもの?お母様譲り?」

「うーん、ママかも。華乃ちゃんは無いの?生まれ変わって、変わったこと」

「そう、ね」


華乃は目を伏せて考える。

孤児院で年下の子達をお世話していた、天涯孤独だけど孤独感は無かったあの頃。

家族親族や友達はいるけれど、篠塚直系の一人の令嬢として、時に孤独感と戦う今。


はっきり言って、前世とは何もかもが違う環境だ。

「人の期待を背負って孤独とも戦う、そんなことが出来る精神力は、生まれ変わってから得た、篠塚のものだと思うわ」


華乃が遠い昔を思い出している表情を、紬はじっと見つめた。

幼い頃に出会った最初、華乃から前世の孤児院の話を聞いた時は、彼女は生まれ変わって大企業の社長令嬢になって、「幸福を得た」のだと思っていた。


けれど、こうして一緒に居る時間を積み重ねてわかったことがある。

彼女は、孤児院にいた前世も、満たされていたのだと。

彼女は今でも時折、孤児院に居た「たくみ」や「みずき」、「ひより」などの名前を出すことがある。皆が彼女の弟妹のような存在らしい。院長はそのような関係性になるように、彼女をのびのびと育てたらしいのだと、彼女自身が言っていた。


紬が華乃の様子を伺っていると、華乃はふ、と顔を上げた。

「最初は、前世の皆に会いたいと思った。でもね。私はこの能力に、今はちゃんと感謝しているの」

「そうなの?」

紬は驚く。華乃の心境を知っていたからこそ、華乃がポジティブな受け止め方をしている言葉は、初めて聞いた。


「この間調べてみて、わかったことがあるの。あの頃居た孤児院、今は篠塚が後ろ盾の1つとして支援しているらしいの」

「えっ」

「今の私の頑張りが、あの子達の更に下にいる弟妹たちを支えることになる。そうでしょう?」

「そっか……そうだね!」

「ええ。だから私、篠塚で得たこの戦う力に、感謝しているわ」


華乃はおっとりと笑った。

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