26.1.16 「仮に今日、世界が終わるとしたら」前編
「にぃにはさ、仮に今日で世界が終わるとしたらなにする?」
「怖い仮定だな」
幸の突拍子もない質問に、俺は思わずツッコミを入れた。
たまに幸はこういう質問をすることがある。
大方、また小説でそういう内容のものを読んだんだろう。
そういうことを、真面目に考えたことはなかったな。
俺は少し考えてから、まぁ納得できるのは結局これだ
、と結論づけて答えた。
「そうだな、いつも通りご飯食べて、家族で喋って……最後は華乃のとこ行くかもな」
「そっかぁ。ちなみにさ、なに食べたい?」
「うーん……いつも通り白米に味噌汁、あと鯖かな」
「おー、本当にいつも通りだった」
「いつも通りが1番だろ?」
「ふふ、たしかに。にぃにらしいね」
「まぁな」
ありがとう!と言って、満足気に部屋を出る幸を見送る。
あんな質問されるとは思わなかったけど、やっぱり俺の答えは一つだ。
特別なことはしない、いつも通り過ごして、最後の瞬間を好きな人と迎えたらそれで十分に、いや十二分に、悔いは残らないと思う。
逆に幸は、どう言うんだろうか。戻ってきたら聞いてみよう。
***
にぃにからの返事を聞いて、今度はねぇねの部屋に向かう。
こんな質問をしているのは、有名作家さんの新作が、世界滅亡をテーマにした話だったから。読み終えて、悶々と考えた末に、家族に質問してみることにしたのだ。
普通なら笑いとばされるような質問も、私の家族は真面目に答えてくれる。
私はそれがありがたいし、嬉しかった。
私はドアの前で一呼吸して、ねぇねの部屋をノックした。
***
「仮に今日で世界が終わるとしたらなにをするか?」
さっちゃんの質問に一瞬私は面食らった。
こういう哲学っぽいこと考えてくるの、いかにもさっちゃんらしいんだよね。
「んー、友達全員にメッセ送って、湊に会いに行って、帰ってきたら皆でご飯食べて……最後は怖いからわかんないかな」
「そっかぁ」
なるほどなるほど、と頷くさっちゃん。
「ね、ちなみになに食べたい?」
「えぇー、冬ならシチューかな。夏ならカレー」
今度は考える前にすんなりと答えが出た。
「いいね。ねぇねが好きなママの料理だね」
「うん、確かに……ママの料理が食べたいのかも」
***
つづく




