26.1.4 「おかえりを何度でも」
うちの真は優秀だ。
たくさん勉強して、大学での成績はSばっかり取ってくる。
土日も受験生顔負けな勉強量だ。
夕飯の時間になると飄々とした顔で出てくるから、分かりづらいけれど、部屋を覗くといつも勉強している。
「紬、どうした?」
「いや、あんなに勉強してて真はすごいなーって」
「……そうか?」
そんな普通ですけどみたいな顔されましても。
「ただの習慣だからな。それに、こうやって何もない日は勉強しておけば、紬たちと出かけるときに気兼ねすることがなくなるだろう」
「確かに」
真は私の横に座って、肘をついて私の顔を覗き込んだ。
「紬や幸と出かけるときは、ちゃんと楽しみたいからな」
そう言ってふ、と笑う真から思わず目を逸らす。
「……シスコン」
「言ってろ」
くすくす笑う真にムッとしてみる。私は真の体を心配しているというのに。
「気持ちは嬉しいけど、そんなに勉強して本当にきつくないの?ここ最近、アプリの勉強時間数の記録が明らかに異常なんだけど」
真と一緒に使っている勉強時間の記録アプリ。
高校受験期に使い始めてから幾年、私は既に滞りがちなのに、真は相変わらず律儀に毎日記録している。
「平気だよ。ちょっとプラスアルファしてるだけだし」
「それなら、いいけど」
「けど?」
「……心配してるだけ」
オーバーワークは好きじゃない。なんならトラウマだ。だって……。
「……“前の”自分が過労死したから、気にしてるのか」
「うん。……置いていかないで」
声が掠れた。
真のやる気を削ぎたいなんて微塵も思っていないけど、真に置いていかれるなんて想像したくない。
ぽん、と頭に手が乗せられた。
「置いていかないよ。今度こそ、俺たちは長生きするんだから」
「っ、そうだね」
そうだ、私たちは、今度こそ天寿をまっとうする。
あんなことには、決してならないんだから。
がちゃん、と玄関の鍵が開く音がした。
出かけていたパパとママ、さっちゃんが帰ってきたみたいだ。
「帰って来たな。ほら、出迎えにいこう」
「うん!」




