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水鏡が淵のミカヅチヌシ 〜諏訪湖の怪異譚〜  作者: 壇 瑠維


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「ずるり、ずるり」─怪異、村に現る

むかし昔のお話。


諏訪の湖のほとりに、小さな村がありました。

裕福とは言えませんでしたが、皆それなりに幸せに暮らしておりました。

これはその村に起こったちょっと不思議で、恐いお話。


挿絵(By みてみん)


◇◇◇


ある年の事。山の奥から


「ずるり、ずるり」


と何かが這い寄る音がした。その音が近づいた家で、赤く染まった畳を残して人が消えると言う事件が起きた。

村人たちは


「熊が出たか、それとも猪か!」


と躍起になって山中を駆け巡ったが、結局小さな野ウサギを見つける事しか出来なかった。


「どこ行きやがったんだ!」


憤る村人は血眼で山を巡ったが、次の日もまた次の日も何も見つけることが出来なかった。


山刈りから帰る途中で、村の若者で一番の力持ちと言われる与一よいちが次に強いと言われる親友の五兵衛ごへえの肩を抱きながら話しかけた。


「五兵衛、お前はどう思う?俺はどうしても、この村を襲ったやつをやっつけたい!」


五兵衛は苦笑する。


「でもさ、もういなくなったんじゃねえか?あんだけ探しても見つからなかったし、もう来ないでくれるならオラその方が嬉しいよ」


「何言ってんだよ!俺とお前が二人でかかったら、倒せないやつなんていないぞ?」


与一が勇ましく竹槍を掲げる。五兵衛が肩をすくめた。


「おめえもよう、もうすぐ父親になるんだから、もうちょい落ち着いたらどうだ?しずかちゃんだって心配してるだろう」


「大丈夫だ。それよりあいつ、やや子がでけえもんで食っても食っても足りねえ、って言ってやがる。あいつの方が“まん丸”になっちまわないか、俺はそっちの方が心配だ」


「静ちゃん別嬪さんだからねえ。いけねえ、そろそろ畑に戻んねえと。んじゃ、またな!」


「おう!」


二人は軽く手をあげて別れ、与一も自分の畑に向かった。


◇◇◇


次の事件が起きたのは前からちょうど1週間後の事だった。山の奥から


「ずるり、ずるり」


と音がして、一軒の家の前で止まった。住人が恐る恐る窓の隙間から外を見ると、真っ黒な中に光る目がこちらを見つめていた。


「うわーーーーーっ!」


真っ黒なものが乱暴に壁を破り、押し入ってくる。住人はガタガタ震えながら鍋の蓋を手に取ったが、黒いものは気にするでもなく笑うように口を開いた。左右に伸びる三日月のような牙がぬらぬらと光っている。


黒いものはゆっくりと住人に近付いた。

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