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疎遠になった元幼馴染の美少女生徒会長に嘘告白されました  作者: 紅島涼秋


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2/2

元幼馴染に嘘告白されました(下)

 がやがやと廊下は騒がしい。部活にやる気がある人たちは一足先にいなくなっており、今はちょっとだけ時間を潰して帰ろうとしている二年生が通っていく。俺は大体不安、ちょっとだけもしかして? という期待で、本当にどうしようもなく告白とそういうのに全く似合わない人が行き交う廊下の端で壁に背中を預けた。昼とほぼ同じ立ち位置だが、空き教室側はちょっと居づらかった。なぜなら、


「ふぅ~」


 なぜかあのイケメン男子の小津君がスマホを見ながらため息をついて、そこにいるからだ。いや、なんで? 俺は不安が大きくなっていく。彼をチラチラと横目で見ながら、通り過ぎていく女子達。そりゃ気になるだろう。部活があるのに彼は良いのだろうか? そんな俺の視界の端に空き教室の椅子に座って、廊下を監視しているように見ている真中さんがいる。彼女も小津君がいるのを当然教室に入る前に見ているので、ちょっとだけ何が起こるんだろうというそわそわした表情をしている。野次馬だったら俺もあんな感じで気楽だったかもしれない。俺も今から野次馬になったほうが良いのだろうか。


 俺は緊張から、はぁ~~~~と長いため息をついたら、ほとんど廊下を挟んで向かいにいる小津君にぎろりと睨まれた。なんでだよ。俺は逃げ出したくなったが、そんな一歩を封じる音が俺の傍の扉から届く。

 昼と同じ流れな気がした。生徒会室の扉が開く。

 艶やかな黒髪を持った端正な顔立ちの生徒会長が、昼と同じように姿を見せた。昼とは違いすぐに立ち止まることはなく、俺から距離を取るような位置に移動した。それはちょうど小津君の前に立つような形であり、そんな目立つ彼女が早く立ち去ってくれるのを願う俺の眼の前で、小津君が待っていたと言うようにスマホをポケットに片付けて彼女に近づいた。

 ずきずきと心臓が痛む。やはりいたずらだったのだと思った。しかし、俺の足は動き出そうとしてくれず、眼の前の美男美女が行う喜劇を見るしか出来なさそうだった。二人が廊下の真ん中で立つせいで、避けて行く人や、何だ何だ? と立ち止まる人などで、少なくない人が彼女たち二人を見守っている。ガチャリと先ほど閉じられた生徒会室の扉が僅かに開いて、中にいたのだろう男女たちも顔をのぞかせた。

 小津君は昼に気さくに彼女へ声をかけた姿は見る影もなく、緊張した面持ちで小津君が待ち遠しそうな表情をしていた。俺に背を向けている彼女の表情は見えないが、緊張しているのだろう。なんでこんなところでするんだ。

 周りに集まった学生達は静まり、緊張が高まっていく。それを破ったのは、ちょっとだけ冗談めかした小津君の声だった。


「昨日大事な話があるとは伝えたけど、こんな場所を指定されるとは思わなかったな」

「そうなんですか。そういうのはあまり気にしないと思ってました。ずっとそうでしたので」

「いや、俺だって結構緊張するよ」

「そうですか?」


 場違いではあるが、空気感は告白みたいな状態だった。凛とした美しい声の生徒会長の言葉に対して、小津君はそんな空気が重くならないように明るげな声だ。


「それで分かってると思うんだが」

「はい、どうぞ」

「ああ。中学の頃から好きだったんだ、俺と付き合ってほしい」


 うるさっ。周りの女子の黄色い声が上がってうるさくて俺は顔をしかめた。

 決定的な場面に周りの女子が盛り上がってしまう。本当に告白というシーンには場違いすぎる。俺は誰が俺を呼び出したのか分からなかった。いつもの俺ならとっくに帰り道を歩いている時間で、学校でこんな場面に出くわす事はなかっただろう。

 周りの女子たちはドキドキとどんな回答が出されるのかと期待をしながらも、当然、氷坂佳里菜とぃう女子がはいと応えるのだろうと思っているようだった。一歩彼女が大きく覚悟を決めたように動いた。彼女と小津君の距離が離れる。

 そして、――。


「ありがとうございます」

「! それじゃあ」


 ぎゅっと俺の腕が力強く掴まれて引っ張られる。一オーディエンスとして見守っていただけの俺は、ぐいっと引かれた力に足をバタバタと動かしてなんとか転ばぬように動いかしていた。


「はい、ずっとはっきり言っていたのに、しっかり伝わっていなくてごめんなさい。私、許婚がいるんです」

「は?」


 右腕が女子の柔らかな体に包まれていい匂いが俺を支配する。ぎゅーっと掴まれた俺は思考が混乱させられていた。周りが騒がしい。眼の前の小津君の顔が漫画にあるようなネトラレされた男子みたいな顔をしている。


「え?」

「青地瑛史くん、彼が私の許婚なんです。だから、ごめんなさい」


 ぎょっとして俺は油が切れた機械のように首を動かして、氷坂佳里菜の顔を見た。表情は冷たいままでにこりともしていない。羞恥も何も見つけることは出来ない表情をした彼女が、どうしてそんな事を言っているのか分からなかった。久々に話し掛けられた内容が許嫁ですとか意味不明すぎる。しかも、公開告白だ。

 ネトラレたみたいな表情のままの小津君が大きな荒げた声を上げる。


「そんな事言ったこと無かったじゃないか!」

「ですから、ごめんなさいと。それに小津さんに何度も告白された際に好きな人がいますとずっと言ってきました」

「俺の方が絶対に君を大切に出来る!」

「好きな人がいると断っているのに何度も告白してくる人が人を大切に出来ると思いません。私は許婚の青地瑛史くんが好きなので」

「考え直してほしい!」

「好き合う許婚の関係に考え直すも何もありません。それでは」


 呆然とした俺はずるずると彼女に引きずられていく。何も言えないまま、生徒会室の中に引きずり込まれた。合わせて、彼女が笑顔で生徒会室から覗いていた生徒たちを追い出していく。


「えぇ! 氷坂先輩~」

「いやいや、生徒会長今すぐ説明してくださいよ!」

「また次のタイミングで話すから今日は、ね?」


 他の生徒たちが追い出され、バタンと扉が閉められてガチャリと鍵が掛けられる。生徒会室は内鍵もちゃんと掛けられるようだ。防音がしっかりしているのか先程までの騒がしさと隔絶した静けさが生徒会室を満たした。

 彼女が密着するレベルで俺の眼の前に立つ。やっぱり綺麗だ……。

 制服の上からでも彼女の柔らかさが伝わってくるぐらい正面で向き合っている。いや、近っ! ようやく俺は呆然とした思考が動き出した。そんな俺の口から溢れたのは、


「え、なにこれ、いたずら?」

 ぎゅっと何故か彼女が正面から抱きしめてくる。いや、なんで!?

「いたずらじゃないです。お待たせしてごめんなさい」

 待ってませんが!? 本当に訳がわからない。俺が慌てていると、彼女が俺を上目遣いで見てくる。俺はそれから逃げようと後ろに下がろうとするが、当然抱きついている彼女も一緒に下がってくる。

 運動が得意でない俺は、引っ付いている彼女の動きのせいで体幹が崩れて床に倒れ込んでしまった。俺があたかも彼女に押し倒されるような体勢になってしまう。長い髪が俺の頬や首筋に触れた。俺の体の上に彼女が馬乗りになって密着する。女性の柔らかさが下半身近くからも伝わってきた。


「氷坂さん」

「佳里菜」

「ひ」

「佳里菜」

「……佳里菜さん」

「はい」

「い、許婚って嘘ですよね」

「そうかもしれませんね」

「え、じゃあ何で?」

「瑛史くん大丈夫です。一度許婚らしく睦み合うから考えて下さい、ね?」

「許婚は嘘だって――」


 唇が柔らかく美しい彼女に一方的に塞がれる。そして倫理観! その後の唇が離れる度に俺が行う説得も聞くことなく、逃げ出すことも許されず俺が彼女から『説得』された。そこから開放されて帰れたのは完全下校時間になってからだった。

 秋のすっかり陽の落ちた帰り道、俺は佳里菜にがっしりと腕を組まれて情けなく歩いていた。


「好き好き。明日は家、親がいなくて二人きりなんだよ。た~くさん勉強会しよ?」

「いや」


 怖い……。どれだけ気持ちよかったとしても、いざ終わって賢者状態になった今、佳里菜の態度が怖くて恐ろしい。

 そして、俺が断ろうとした瞬間、冷え冷えとした態度が俺を突き刺した。顔を向けると、先程まで嬉しそうにしていた佳里菜から表情が溶け消えて無表情で俺を見つめてくる。

 ひぇ。


「……はい」

「小学生のね」

「はい」

 小学生っていきなり何だろう。

「六年生になった頃からずっとシたかったのに、時間が合わなくなっちゃったでしょ? だから、ずっと誘いたかったのに私からって中々恥ずかしくって。瑛史くんからいつもえっちな熱っぽい視線が来てたから、学校の廊下でも教室でもいつ押し倒されて激しくされるんだろうってドキドキしてたの。だけど、高校になってから教室も別になってさらに顔を合わせる時間なくなって戸惑ってたんだ」

「はい?」

「でもでも、最近瑛史くんが私の写真を新聞部から貰ったって知ったの!」

「ひぇ」


 うちの学校の新聞部は新しく就任した生徒会長の写真を数枚を出す。自称壁新聞に出すため。だが、実態はこっそり倫理観が無い部員がお小遣い稼ぎに数枚売るのだ。俺はそれを買った。だって好きだった、いや、好きな幼馴染の写真がほしいのは仕方ないだろう。だから、確かに買った。だけど、あれはやってることがやばいから絶対にバレないようにしているということだったはずだ。


「それで、ちょうどあの男子からまた告白のために呼び出されたから、うるさいのを払い落としたくて許婚だって嘘告白するために瑛史くん呼んだの。こういうのが嘘告白って言うんだよね」

「いや、嘘告白って好きでもない人に好きだって告白して騙すようなことじゃ――」

「それで、ちょうどあの男子からまた告白のために呼び出されたから、うるさいのを払い落としたくて許婚だって嘘告白するために瑛史くん呼んだの。こういうのが嘘告白って言うんだよね」

「……はい、ソウダトオモイマス」


 ……佳里菜の家まで送り届けて、笑顔で可愛く彼女が俺に手を振って別れた。手を振って家に入っていった佳里菜が可愛い。

 俺はふわふわふらふらしながら帰宅した。ご飯もぼーっとしながら食べて風呂に入って、何も手につかずベッドに寝転がる。


「いや、もう訳がわからん。はよ寝よ」


 そんな俺が寝ようとした瞬間、ポンとスマホが通知を鳴らす。俺はのろのろとスマホを見て、腹が冷えて怖くなった。


『明日からたくさんお互いのことまた学ぼうね』


 写真が添付されたトークが開かれる。何故か交換した覚えも許可した覚えもないのに、佳里菜のIDが登録されている。それがただグループ内から個別に登録されていたとかなら分かるが、登録されている佳里菜のトークの名前が、『恋人♡』になっているのだ。


「俺、明日からどうなるんだろう」


 疎遠になった美少女な元幼馴染と何段も飛ばした関係になってしまった。明日からの学校生活が恐ろしい。だけど、


「はぁぁぁぁ、やっぱりまだ好きだったんだよなぁ」


 俺の情けない性根では、もう彼女から逃げることは許されないのだ。


終わり

生徒会長:氷坂佳里菜ひさかかりな

主人公:青地瑛史あおちえいし


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好き好き、とか でもでも、のとこがギャップ有って可愛いですね… お幸せに
幼馴染ラブラブってのはこういうのでいいんだよ、こういうので
こういうの好き 失恋からの真中さんエンドと予想したけど、最高の結末だった。
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