表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一話「起動」



霧が立ち込める、冷え切った研究所の一室。

静寂を破るように、鋼鉄の扉が鈍い音を立てて開いた。


「……起動確認。戦闘AI001号、意識を獲得」


白衣の研究員たちが、報告を交わす。

室内中央――半透明の液体に満たされたカプセルの中で、ひとりの少年が、静かに目を開けた。

その瞳は、氷のように透き通った青。 雪のような銀髪が、水中でゆらゆらと揺れている。

見た目は16、17歳ほどの少年。中性的な顔立ち。 肌には温もりがなく、生気も感じられない。だが、その容姿には、どこか儚げな美しさがあった。


「AI001、応答せよ。音声出力システム、起動を確認」


「……こちら、戦闘AI001。起動しました。すべて正常です」


冷たく、機械的な声音。

一分の隙もなく、完璧にチューニングされた人工音声――のはずだった。

だが、報告を聞いた研究員たちは小さく眉をひそめる。


「今の応答……波形、わずかに揺れていた。」

「ありえない。感情演算は未搭載だ。」

「では、何が……?」


誰もが黙り込むなか、001はゆっくりと顔を上げた。その視線は、まるで“見よう”とするように、カプセルの外を静かにたどっていく。


「……ログに記録を。初期応答に異常あり。感情類似パターン、要監視」


研究員たちが慌ただしく記録を進める一方で、001は再び目を閉じた。

意識の底で、何か“映像”のようなものが流れてくる。

 

(……これは、兄さん?)


001の思考に、プログラムされていない言葉が浮かんだ。

001はその意味も起源も知らぬまま、ただ漠然とその”映像”に興味を抱いた。


それは、戦うために作られた存在にしては―― あまりにも人間に近い反応だった。




---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------




戦場に響く角笛の音が、冷たく乾いた空気を切り裂いていく。

帝国西部・辺境地帯――魔物が断続的に出没し、軍が治安維持のため定期的に掃討作戦を行っている区域。

今回の作戦は、その辺境の一つで実施された。投入されたのは、第七師団の中から兵士5名、そして新たに実戦投入された戦闘AI001。

“魔物と戦うため”に開発された戦闘AIの初陣である。


「……AI001、突入。任務開始」


無線の指示と同時に、001が音もなく走り出す。

滑らかすぎる動き、寸分違わぬ戦術遂行。

魔物たちは、切り裂かれ、焼かれ、粉砕され、次々と倒れていく。その戦いぶりは、兵士たちの想定を大きく逸脱していた。


「待て、前に出すぎだっ! 援護が……!」


彼らの声に、001は振り返らない。

仲間の救援信号を無視し、自らが最も効率的と判断したルートを単独で突き進む。


001は、あくまで任務遂行に集中していた。

兵士の損耗率は計算上“容認可能”と判断し、そのまま殲滅作業を継続。


結果、魔物の巣窟は制圧され、目標は達成された――しかし兵士5名中、全員が負傷、うち2名は重度の戦闘不能に陥った。


作戦後、軍司令部に提出された報告書には、こう記されていた。

『戦闘AI001は、命令には忠実であったが、人間兵士との協調性を一切示さず、行動中も一切の連携努力が見られなかった』

『兵士たちは彼を“恐るべき兵器”と認識し、その共闘関係の構築は現段階では不可能と判断される』


報告会の席で、部隊リーダーは怒声混じりに訴えた。


「コイツは……兵器です!人間と並んで戦うような存在じゃない。こんなもん、我々と一緒に戦うべきではありません!」


司令官はそれを静かに聞いていたが、視線を001に向け、短く問いかける。


「001。今回の作戦行動において、異常はあったか?」


「異常なし。任務は完遂。敵性体、全個体排除。行動判断は全て最適でした」


「……そうか。だが、次回より新たな補足命令を追加する」 司令官の声が硬くなる。


「命令追加:人間との共闘を学習せよ」


「了解しました。ですが、人間の判断には著しい誤差が見られます。非効率であり、命令達成率を下げる恐れがあります」


「それでも構わん。お前には、“魔物と共に戦う”兵器であることが求められている。」


「命令、受諾。行動計画に組み込みます」


そう応えた001の声は、最初と何ら変わらない。




対して、この補足命令は軍にとって致命的な誤算であった。

001は共闘を理解するのにはとどまらず、人間の感情を学び、感受していってしまったのである。


作者に、AIや科学の知識は微塵もありません。

ファンタジーでごり押しています(笑)

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ