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男子高校の生物部員はコスプレイヤーの夢を見るのか?2 はい、見ています!  作者: 高城 剣


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第7話 王と聖母、再び相まみえる縁

「いいでしょ?あたしが連れて行っても」

「あのねえ、あの麻琴さんだっけ?この前あんだけ迷惑かけておいて、また繰り返すの、未来は!」

と、母親に叱られている、あたし。

ケンチが退院して復学はしたけど、リハビリと称して、近隣を散歩。それに麻琴が付き従うのが先週からの休日デート、らしいんだけど、そこでケンチが不用意にビーストテイマーとか言い出したから、麻琴がうちのキングの事を思い出して、あんな目にあったにも関わらず、会いたがっている。しかもケンチも一緒に。という流れでうちに来たがっている。

ケンチの家からは、それなりに遠いはずで、リハビリはどうなった?と思うんだけど、珍しく麻琴のわがままモードが発動しているらしく、ケンチとともに訪問予定。

一応、ケンチに何かあったら怖いので、崇も助っ人に呼んだ。望は余計な暴走をしそうなので呼んでいない。

なので、あたし、崇、麻琴、ケンチという結構レアな組み合わせ。お見舞い以来?・・・と、いらん事を思い出しそうなので、そこは封印。

「でもでも、それでも会いたがってるんだからさ」

「まったくもう、なんでこんな考えなしなのよ・・・それじゃ秀一に付き添い頼んでみなさい」

「え?お兄ちゃん、いるの?」

「さっき、明日は一日ゴロゴロする〜とか言って、部屋に戻ったから」

「よし!」

「よし!じゃないの。ちゃんと佳子さんにも許可もらうのよ」

「はーい」

とあたしは両親の部屋を飛び出し、隣の兄夫婦の部屋へ。

ドアチャイムを鳴らすと、兄の奥方、あたしの義姉の佳子さんが出てきた。

「どしたの未来ちゃん」

「お兄ちゃんに頼み事で」

「そっか、入って。妹には兄を好きに扱う権利があるからね」

「だよね」

「おい、聞き捨てならないこと言ってないか?」

と、お兄ちゃんも出てきた。

「というわけだから、お兄ちゃん、言うこと聞いて」

「また泊まりのアリバイか?いい加減・・・」

「違うの!」

確かにこの前とか頼んだけど。

「キングを後輩に会わせるから、キングの制御役して」

「・・・未来、お前ってホント、キングに舐められてるよな」

「そうだけど、そうじゃなくて、キングが飛びかかりやすい後輩なの」

「どんな後輩だよ」

「明日の午後一にバス停近くの公園で待ち合わせてるから」

「から?」

「来て」

「たまの休日なのに?寝てたいのに?」

「うん」

「うん、じゃねえ」

「秀一、観念していってあげなよ。長時間じゃないんでしょ?」

「うん、一時間くらいでお互いに気が済むと思うから」

「お互い?」

「キングと後輩」

「不安しか無い」

「それ終わったら、あたしの部屋で遊ぶし、お兄ちゃんは帰っていいから」

「お前、ホント、ひでえよな」



今日は謙一の家の近くの駅前でランチデート。あ、目的は謙一のリハビリのお手伝い。

家に行って、謙一の部屋に行っちゃうと、怪我に良くないことしそうだから、外デート。

うん。健全。

あ、未来さんからメール。

「謙一、明日はビーストテイマーとなる日に決まったよ」

「そっか、またグチョメチョにされないように頑張るんだぞ」

「グチョメチョって・・・たしかにそんな感じにされたけど」

「ちゃんと汚れてもいい服装で行って、着替えも持っていくんだよ」

「なんか保護者目線なのがムカつくんですけど」

「麻琴はいつでも、僕の保護対象でしょ?」

「うぅ」

「ほら、キングハンバーグステーキが冷めちゃうから、早く食べないと」

明日、キングに負けないように、キングの名がつくものを食べる!

「にゃんひゃ、ひちょごにょみひゃいに」

「ちゃんと飲み込んでから喋る!」

「はい」

叱られた。

「何か他人事みたいに言ってるけど、謙一も明日来てくれるんだよね?」

「もちろん、ビーストテイマーの誕生の瞬間に立ち会いに行くよ」

「よろしい」

謙一は微笑みながら、自分のサンドイッチを食べ始めた。

退院して学校に行き始めて、謙一の雰囲気が少し変わった。

なんていうかほんの少し、柔らかくなったような、余裕が出たような。ボケもツッコミも相変わらずだけど。

学校でのストレスが無くなったからかな。

そういう変化は嬉しい。

「麻琴、ソースが服に垂れそうだから集中して食べて」

確実に保護者力は上がってる。



「そういうわけだから、明日よろしく」

未来からの電話。一体何がそういうわけで、オレが行かなきゃいけないのか良くわからん。

「なんで真理愛さんとキングをあわせる場にオレが必要なの?」

「彼氏でしょ」

「確かに未来の彼氏であるけど」

「じゃあ、言うこと聞いて」

「うん、まぁ聞くけどさ。本当の理由は」

「ツップリーズの相手を一人でしたくない」

「オレに謙一の毒舌を浴び続けろ、と?」

「親友なんでしょ?」

「いや、そうだけど」

「修行なんでしょ?」

「いや、違うけど」

「お兄ちゃんにも崇を紹介したいし」

「お兄ちゃん?」

「・・・あ、兄にも紹介」

「いや、遅いけど」

「もう、いいから来なさい!」

あ、電話切られた。

未来と始めて会った頃のオレに見せたいよ。この年上要素の消え失せた可愛らしいお姉さんを。



「ノゾミぃ、明日付き合ってぇ」

と昨晩、リリーナから電話が来た。明日買い物に付き合ってほしいというお誘い。

私と買い物ねぇ。幾美もなんか用事あるとかで明日は会えないし、リリーナもキョージに放置されたらしい。

明日はお互い独り身ってことで、クラスメイトのお誘いは断らないことにした。

決して嫌なわけじゃないけど、まだ距離感を測ってる段階なんで・・・これは私の悪いところ。

一歩踏み出すのが怖い。未来や麻琴に踏み出せたのが不思議なレベル。

私はリリーナのこと、好きだし、クラスでも良く話す。

何が怖いんだろうね。まったく。彼氏のキョージが嫌いだから?

あの連中とつるむようになって、私の人生観は大きく変わりつつある。

多分、きっと、それは良いことなんだろうけど。



麻琴の学校の近くの駅で待ち合わせ。

ムリョウさんの家に行く前に、自分の通う学校も見せておきたいというお誘い。

リハビリ期間とは言っても、すでに歩くことに支障はないので、散歩デート。

「ここが心行院女子高等学校です」

と、校門前で麻琴のガイド開始。

当然、中には入れないので校門から中を眺めるだけ。不審者の三歩手前くらい。

「あれが高等部の校舎で、隣が中等部。そんで奥の方が初等部。うさぎが可愛いんだよ」

校舎の位置とうさぎ以外の情報はないのか?と思っていると、校庭を運動部らしき集団が走っている。休日にご苦労なこった。

「あんまり他の娘を見ないの」

「はい」

視線の先に誰かいたら見ちゃうけど・・・そんなヤキモチも心地良いので、気にしない。

「では、未来さんの家に行きます」

「はい」

他の女子を目で追ったせいか、雑な学校紹介で終わってしまった。

こんな可愛らしい生命体は、麻琴の他にいないのにな、と思いつつバス停へ。

「歩いてもいいけど、謙一が疲れちゃうからね。バスを使います」

「過保護だなぁ」

「当たり前です」

そうか、なら仕方がないから言うことを聞こう。楽だし。



早めに呼び出され、オレは未来の兄夫婦の部屋にいる。

「なるほど、コスプレで未来と知り合ったのか?こいつ、変じゃなかった?」

「いや、変だなんて、そんな」

「お兄ちゃん!」

「ごめんなさいね。秀一さん、未来ちゃんをからかうのが大好きなの」

「は、はあ」

反応に困る。とても困る。

「で、崇くん、未来は見てくれは良いんだが、中身はポンコツだ。よろしく頼むよ」

「お兄ちゃん、いい加減にしないと・・・」

「そのポンコツさ加減も含めて、オレ、好きですから」

あ、三人が固まった。

「ははは、いいね。うん、将来の義弟よ。気に入った。未来をやる」

「た、崇・・・お、お兄ちゃん・・・」

「良かったね、ふたりとも。あ、私も大賛成だよ。未来ちゃん、良かったね」

「け、佳子さん・・・」

ここまで取り乱す未来は始めてだ。

「ずっとお兄ちゃん呼びなんだな。妹キャラの未来って新鮮、ぐぉっ」

オレは未来に腹パンを食らった。

「お、お兄ちゃんはキング連れて公園に来て。さ、先に行ってるから」

フリーズするお義兄さんお義姉さん(将来)。

そのままオレは部屋の外へと連れ出された。

「み、未来、そんな成美めいたことしちゃ駄目だ」

「うぅ、もう、黙って来なさい・・・成美めいたって何?」



バスを降りると公園にいる崇とムリョウさんを見つけた。

心做しか崇がぐったりしている。

「やあやあやあ、お二人さん!お出迎えご苦労」

と言ったら、殺意のこもった視線で返されたので、僕は麻琴の陰に隠れた。隠れらんないけど。

「未来さん、和尚!おはようございます!謙一はスルーしといてください」

「なるほど、一人でコレの相手は疲れるよな」

「崇がわかってくれて嬉しい」

よくわからん会話をしているな。失礼なのは判るけど。

「未来さん、キングは?」

「今、お兄ちゃんが連れて来るから」

「「お兄ちゃん?」」

ムリョウさんの口からそぐわない表現が。

僕と麻琴は顔を見合わせた。

「ツップリーズ、そこは突っ込まないでおいてくれ。色々面倒だか・・・ぐはっ」

あ、崇がムリョウさんに腹パン食らってる。

「あ、どうぞ続けて」

「「何をだ!!」」

二人に怒られた。

相変わらず明るく楽しいな。BOTHの活動って。誰も呼ばないサークル名。

「あ、お兄ちゃん!こっち・・・」

と振り向くと栗茶白のトリコロールの生命体が麻琴に向かって突進。

「なんで、リード放すの!」

「すごい勢いで振りほどかれたんだよ!」

あぁ、これが通称キングというバーニーズマウンテンドッグか。

「甘いよ、キング」

おぉ、麻琴がキングの突進を避けた。

キングと麻琴が距離を保ったまま見つめ合う。

「お兄ちゃん、この隙にリードを」

と、ムリョウさんが言った途端にキングがダッシュ。再び華麗に避ける麻琴。

しかし、キングもそれを見越していたのか、麻琴の脇をすり抜けて急ブレーキ&バックアタック。

麻琴、背中に馬乗りされている。ここから、どうテイムするんだろう?

特にグチョメチョにするでもなく、勝ち誇っている感じだ。

「キング、ちょ、ちょっと離れろ」

ムリョウさんのお兄ちゃんな人が必死にキングを引き剥がそうとしている。

どうやらキングは尻尾をブンブン振っていることから、麻琴に会えたのが嬉しいらしい。しかもただやられるだけじゃない、反応を見せてくれたのが楽しかったんだろう。

わかるよ、キング。

僕を見る麻琴の表情が無に近くなってきたので、そろそろ助けてみよう。

「キング!キーング!」

と僕が名を呼ぶと、キングが僕の方を向いた。

「こんにちは」

とキングに手の甲を差し出し、匂いを嗅がせてから頭を撫でる。

僕はそっとキングの首輪を掴んで、麻琴から引き剥がした。

「いい子だな、キング。でもこれは僕のだから、あんまり無茶苦茶しちゃ駄目なんだ」

と言い聞かせると、キングは僕の足元に伏せをした。

「ありがとな。キングも麻琴が大好きなんだよな?」

キングが僕を見て尻尾を振った。

「あの、ケンチ」

「何?ムリョウさん」

「キングと初対面、だよね?」

「うん」

「なんで懐くの?」

「え?僕が生物部だから」

「適当言ってる?」

「うん」

「崇、ケンチも殴って良い?」

「多分、真理愛さん的に駄目だと思うけど・・・謙一、その大好きな人も助け起こしてあげろよ」

「おっと。よっこらしょ」

と、お姫様抱っこしてみた。

「謙一」

「ん?」

「ズルい」

「キングをテイムしたから?」

「うん」

あいつら公園でお姫様だっことか恥ずかしくないのかとか言う崇の声が聞こえたがスルー。

「もう言い聞かせたから大丈夫。麻琴もテイム出来るよ」

「ほんと?」

「なぁ、未来。あの二人、テイムテイム言ってるけど何?あれが後輩?」

「う、うん。まぁ・・・バカップル」

「それは見ればわかる」

「ムリョウさん、お兄ちゃんさん、聞こえてますよ」

「未来、お前って無料なの?」

「お兄ちゃん、無料じゃなくてムリョウ。あたしのコスネーム」

「ふぅん」

「興味薄でしょ!もう。ケンチ!麻琴!紹介するから、こっち来て!」

お兄ちゃんさんに紹介してもらえるらしい。僕は麻琴をお姫様だっこしたまま、ムリョウさんの元へ。キングは僕の左側をとことこついてきた。

「謙一、おろして、恥ずかしいから」

あ、そうか。と麻琴を右側へ降ろす。

なんだか、麻琴、僕、キングと横並びでムリョウさんの元へ。

「あたしの後輩の栗原麻琴とその彼氏の進藤謙一。こっちはあたしの兄の秀一」

「はじめまして。わたしは未来さんの2学年下です」

「僕は麻琴の一つ上で、あっちの和尚のクラスメイトです」

「お、和尚?」

「謙一、余計な情報は出さなくて良い!困惑すんだろ」

「はぁ、ケンチを来させたの、失敗だわ」

失礼だなぁ、ムリョウさんは。



私とリリーナは、懐かしのショッピングモールに来ていた。

リリーナは懐かしくないだろうけど。

うん、未来のやらかしでのコミエ出禁騒動、懐かしい。

「どしたの?なんか感慨深い?で、合ってるかな。そんな顔してるよ望」

「うん、合ってるよ。ここは去年、未来と麻琴と買い物に来たことがあってね」

「そっかぁ。アタクシも連れてきてくれてThanks、望」

「大げさねぇ。そうだ、あのときは麻琴にゴスロリ衣装買わせたんだ。リリーナも似合いそう」

「ごす・・・ゴシックロリータ?麻琴は似合うだろうけど、アタクシは・・・」

「何言ってんの。それこそ、ビスクドールみたいになるから。ちょっと試着しに行こう。麻琴は1回きりしか着てくれないし」

と、私はリリーナの手を引いて歩き始めた。

「え?え?え?アタクシ、買う流れ?」

「着るだけ、着るだけ」

「ノ、ノゾミ?顔が、あの」

あはは、満面の笑みを浮かべている自覚はある。

「すけべな顔」

あれ?



あたしと崇とお兄ちゃんは、ケンチがキングを御して、その技を麻琴に伝えるさまを見させられている。

「基本はちゃんと教わってるな、出来てて偉いぞキング」

とケンチがキングの頭をワシャワシャしてる。

ズルい。あたしがやろうとすると、スルッと避けるのに。

「キング、今度は麻琴の言うことを聞いてくれ」

バフっとか返事してるよ、うちのバカ犬。

「麻琴、それじゃリード持って。うん。キングを常に自分の左側を歩かせるように意識して、麻琴のタイミングで、ストップとゴーの命令してみて」

「わかった」

犬を飼ってない二人が、うちの犬で躾教室をしている。

「言うこと聞いたら褒めてあげて!」

「うん。・・・キング、ゴー!・・・よしストップ!・・・すごい、言うこと聞いてくれた!偉いねキング」

今度は麻琴がキングの頭をワシャワシャしてる。

「あぁやるんだな、未来」

「うん。多分、お母さんとお父さんはやってるんだと思う」

「そっか。未来も頭下げて、彼に教わってこいよ」

「えーーー?」

「どんだけイヤなんだよ」

「屈辱」

「友達じゃないのかよ。どんな関係性だよ、まったく」

「あはは、常に立場を競ってる感じ?」

あ、崇が呆れた目で見てる。



麻琴も満足したようなのでキングを飼い主に戻した。

「んじゃ、キングの散歩行ってくるから、みなさんは未来の部屋でごゆっくりぃ」

と秀一さんは去っていった。

「ビーストテイマー♪ビーストテイマー♪」

と麻琴は上機嫌で口ずさんでいる。何の歌?自分の主題歌?

そこそこボリュームが大きいので、早く室内に行きたい。

「ねぇ、ケンチ」

「何でしょうか?妹キャラのお姉さん」

「それを他のメンバーの前で言ったら、処刑」

ここは黙って頷く。

「で、あたしの話聞く気ある?」

「ありますよ、ムリョウさん」

「・・・ま、とりあえず部屋行こ。・・・麻琴、歌やめ」

「へ?あ、声に出てた?」

出てたレベルじゃないんだが。



ノゾミが完全にアタクシを着せ替え人形にして遊んでいる。

センスが良いのが逆に腹立たしい。店の人もちょっと困ってる。

「ねぇ、まだ着るの?」

「やっぱ、下手に胸がない方がバリエーションあって」

「ノゾミ、それディスってる?」

「え?可愛いって褒めてる」

「そうなのかなぁ」

「じゃあ、次はコレ着てて」

と、セーターとデニムパンツとフリースのジャケットを渡してきた。

「これで最後だからね!」

「うん、次はランチに行こう」

完全にデートだわ。



「いいなぁ、マンションの一室が自分の部屋って」

とキョロキョロしているケンチ。

「みんなそう思うよな。オレも最初に来たときそう思った」

「やりたい放題だもんな」

「何をだよ」

「崇、あんまり深読みすんな。ムリョウさんが照れてる」

「こっちに振るな、バカケンチ」

「麻琴、ムリョウさんが悪口を言うよ」

「謙一は普段もっと酷いこと言ってるから我慢」

「はぁ・・・これだからツップリーズは」

「未来さん酷い」

「あーもーうるせえな、案の定」

「案の定って何?新しい御経?」

「謙一、真理愛さんに一体何を普段から教育してるんだ?」

「・・・学び学ばれ切磋琢磨する恋人たち?」

「ケンチ、あんまり調子乗ってると、あなただけ追い出すよ」

ケンチはお口にチャックのジェスチャーをして黙った。

気配まで薄くなるから、怖いんだけど。

「ふぅ、まぁとにかくそこら辺座って。クッションとか好きに使って・・・麻琴、寝ない!」

「はーい」

大きめのクッションを抱きしめて寝転がる麻琴を止めた。

ケンチは何も言わず、静かに正座してる。

「はぁ、で、未来、改まってなんだよ」

「うん、まぁ、これからの事、っていうか年末までの予定なんだけど」

「体育祭、ハロウィン、文化祭、クリスマス、冬コミエ、か」

「中間と期末を故意に抜かさない!それにあたしは受験じゃないけど、年明けには付属大学へ行けるかの試験もあるの」

「そっか、未来さん、3年生だもんね」

「なのよ。だからクリスマスはともかく冬コミエは参加しない。っていうか出来ない」

「そこはクリスマスも我慢の流れじゃないの?1週間程度だし」

「麻琴、彼氏との最初のクリスマス。我慢する理由は無いから」

「進級試験は理由になると思うけど」

「麻琴なら我慢できる?」

「わたしは、最初から会わないとか言わないもん」

ケンチを見ると、なんか目をつぶって黙想状態になってる。

「崇、やっぱりケンチがムカつく」

「喋ろうが黙ろうが嫌がられるのも凄いな」

ケンチは黙って頷き、サムズアップ。

「麻琴、ごめん。もう一度入院してもらわないといけないみたい」

「だめ!成美めいたことしないで!」

「ねえ、その言い回しが共通認識になっていないの、あたしだけ?」



ゴスロリ衣装も含めて数着を買う羽目になった。

ノゾミが半分出してくれるって言うから。

「ノゾミ、ありがとう。でも本当に良かったの?」

「うん。可愛いものを可愛くする投資に、法的上限規制は設けられていないから」

ちょっと何を言ってるのかわからないけど、イクヨシやケンイチの影響が強いことは判る。

「リリーナ、何食べたい?」

「ん、ああ、ランチね。今日はヘルシーなのが良いな。キョウが肉ばかり食べたがるから」

「なるほど。イヤなときはイヤって言わないと、きりが無いよ」

「そこはちゃんとしてるよ・・・手綱を握る、だっけ?うん」

「言うこと聞かないときはちゃんと、ガツンと、成美しないと」

「うん、わかってるよ。ちゃんと成美る。大丈夫。心配してくれてありがと」

「よし、野菜食バイキングの店に行こう!」

いつもとテンポが違うなぁ。やっぱり、今日のノゾミは浮かれてる。



未来に任せていると謙一に振り回されっぱなしになるから、オレが主導権を取るしか無い。

「で、謙一、今後の俺達の予定はどう企んでるんだ?」

途端に目を開け、あぐらをかく謙一。ヒクヒクする未来。もう、天才だよ、ほんと。

「お互いの体育祭は部外者禁止なんで、まぁ適当に流して」

「まぁ、仕方ないよな」

「僕は何も活躍しないし出来ない球技大会だから」

「ケンチ、球技苦手なの?」

「うん、もちろん」

「そ、そう」

「1回戦でさっさと敗退して、部室でのんびりするんだ」

「前向きに後ろ向きだな。ま、オレもそんな感じだけど」

「え?崇も苦手?」

「謙一ほどじゃないけどな・・・おい、謙一、別に褒めてないから照れるな」

「拾うねぇ、崇」

「麻琴、あんたは楽しそうに見てないで止める役割」

「えーーーーー、頑張る・・・謙一、ストップ」

「仕方ない。ビーストテイマーには逆らえないな」

「よしよし」

謙一の頭を撫でまくる真理愛さん。

「結局、ツップリーズ劇場じゃん!」

「落ち着け、未来。そんで、ハロウィンか」

「うん、街ハロってのがあって、僕達が最初に出会ったあの場所で、コスOKの範囲が街中まで広がってるイベント」

「それに出たい、と」

「なんか幾美が全員分のチケット買ったから、後で払えってさ」

「自由すぎんだろ、あいつ。予定あったらどうすんだよ?」

「ハロウィンに予定を入れてるほうが悪いから、チケット代は徴収するって」

「たちが悪いとかのレベルじゃねえな」

「人として間違ってるよな」

「宝珠さん、止めないもんな」

「ムリョウさん、先輩権限で宝珠を叱って」

「ケンチ・・・年齢が一つ、上なだけでしょ?それが何?って言われた身にもなって」

「あ、そういう事すでに言われてるんだ。麻琴なら強く出れるよね?」

「わたし個人の利になることしか、言うこと聞いてくれないけど」

オレはため息を付きつつ

「心行院女子、変だよな」

「崇、物凄く大雑把にまとめて失礼なこと言わないで」

「和尚、成美られる覚悟があるってこと?」

謙一がふざけなくても話、進まないじゃん。



「ハワイじゃ見たこと無い野菜ばかり。ここ、凄いね!」

「でしょ?」

近隣の農家と直接契約して仕入れている野菜は、スーパーマーケットの野菜売り場じゃ見ないものが多数。

時期的には秋野菜のはずだけど、まだ気温が高いせいか、夏野菜も豊富。

それらをサラダはもちろん、煮る焼く炒めるして、様々な料理になっている。

「写真撮って、ダディとマミィにも見せなきゃ」

少量ずつではあるけど、全種取る気なんだろう。テーブルが皿で埋まる。リリーナに喜んでもらえて嬉しい。

「ノゾミ、ノゾミ、デザートもすっごいよ」

「落ち着いてリリーナ。まずは今取りまくったものを食べてから、ね。補充は来るし、お残しは駄・目」

「オゥ、OK 」

ちょっとした麻琴レベルだなぁ、この量。



「崇の心が麻琴に折られたっぽいから、麻琴、話進めよう」

「え?わたしのせい?まぁいいや。うん。それじゃ、文化祭、クリスマス、冬コミエ、ついでに初詣も入れるね」

謙一から任されたから、わたし、頑張る。和尚の心は救わない。

「可能なら、ハロウィンまでに写真集の撮影も済ませたいな。中間試験もあるから余裕ないかもだけど」

「あ、そうか。それもあるね」

「未来、結局はツップリーズに任せた方が話が進みそうだ」

「うん、もう好きにして」

未来さんがヤサグレてる。

「心行院の文化祭は家族以外呼べないけど、わたし達が鳳凰学院に行くのは平気?」

「女子校は厳しいね。うちは大丈夫。だよな、崇」

「生徒一人あたり5枚。招待対象に制限なし、だったはず」

「良かったぁ、謙一の学校を見れる」

「学校でBOTH勢揃い?こりゃ一騒動ありそうだな」

和尚が腕を組んで偉そうに言った。

「え?なんでよ?」

「陰キャの生物部が美少女軍団連れ歩くんだぞ。ジェラシーが渦を巻くぞ」

「そんなことないと思うけど」

不思議そうに未来さんが言った。

「あのな、男子校の野郎共の彼女保有率なんざ、1%以下だから」

「え?生物部以外に彼女持ちいない感じ?」

「それは流石にアレだけど、悪ぶってるやつほど、逆にいないと思う」

謙一の偏見っぽいけど、逆に真実味がありそう。

「まぁ、変なことをしてくる事はないと思うけど、冷やかされる覚悟はいるな」

「変なことしたら、成美さんに成美られるとは思うけど」

「あまり、そっちを頼りにするのもみっともないけどな」

「だな」

「じゃあ、文化祭は鳳凰学院のにみんなで行く、と。クリスマスは?」

「そしたらクリスマス本番前に、みんなで集まってクリパして、クリスマス当日は各自で、でいいでしょ?」

「どうした未来、急に積極的に」

「言っとかないと、予定が勝手に埋まっていくからでしょうが」

「確かに。別に変な予定入れてないけど」

と和尚が謙一を見やる。謙一は当然スルーしてるけど。

「謙一、冬コミエは、まだいいよね?」

わたしも不安がないと言えば嘘になるので、確認。

「あぁ。当落も出てないし」

「じゃあ、次の初詣は未来さんの進学祈願しよ?ね?」

謙一が心得たとばかりに立ち上がって、天井を見つめて言った。

「つまり、進学祈願の奉納演舞を皆でするということだね?」

「「「違う」」」

ホント危ない。ここで否定しないと来週には振り付け考えてきかねない。



「ふぅ、野菜でお腹いっぱいとか初めてかも」

リリーナが細いままの健啖家とすると、麻琴は丁度いいプニプニの健啖家。

ダイエットに気を使う身として、どっちも羨ましい。

「リリーナの初体験、いただきました」

「ノゾミ、またスケベな顔してる」

「食後のデザートはリリーナを」

「やぁだよ、ノゾミのスケベ」

「リリーナのリリーは百合のリリーってことで」

と、私はリリーナを抱きしめた。

「だ、駄目だよノゾミぃ」

リリーナが赤面してモジモジするもんだから・・・萌えた。

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