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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
アルバード王立高等学院~新たな出会い~

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ハールーン帝国での動乱

その夜


僕は今寮の部屋である人からの手紙をみていた。今は深夜なので殿下も寝ていたため人に視られる心配はなかった。

手紙の内容はこうだ。





ハールーン帝国の国王がある男に殺された。男の名は維志科駕 頼。読み方は“イシカガ ライ”だそうだ。その男が国王となり好き勝手しているという状況だ。赤眼とは関係ないかもしれないが一応知らせておく。


同志 ゲルフ





そう、これはアルクィンで会った鍛冶屋のゲルフさんからだ。

何故このような手紙が来るのか今から説明しよう。


単刀直入に言うとゲルフさんは情報屋のボスであることに気づいた僕がそれをネタに脅sゲフン、えー説得し、赤眼に関する情報が入れば連絡してくれることになったのだ。


どうして気づいたかについてはおいおい話すとしよう。


また、僕の居場所くらい向こうは一瞬でわかるので手紙を送ることができるのだ。無論、どうやって僕の棚の中に仕込んだかは謎だが…


まあもちろん暗号が書いてあるため上記の手紙は解読したものになる。



それにしても"維志科駕 頼 (いしかが らい)"、か。まさか、な…


お気づきの人もいるだろう。イシカガライはイガラシカイのアナグラムだ。

こんなわかりやすいことをしてくるなんて一体どういうつもりなんだ?

漢字だっておもいっきり当て字だ。意味があるのだろうか?


維は“つなぐ”、志はそのまま“こころざし”、科はとがと読んで“過ち”、駕は“しのぐ”、頼は“たよる”


これを繋げると


志はつないだ。過ちをしのぐために頼れ


となる。


僕の眼がおかしくなければこれは僕の味方であると言っているように見える。何かの罠かもしれない。いや、絶対罠だろ。どうやってか相手も僕のことを知ってわざわざ自分の名前を分解し名乗るなんて理解に苦しむ。


もし、僕が彼の立場だったらそんなことは絶対にしない。もしかするとレイのように彼に味方する神がいて僕のことをバラしたのかもしれない。


僕も手をうたなければな。殺られる前に殺る。これは生きずらい世界で生き抜くための鉄則である。












少し前に遡る


ハァーっと深いタメ息をついた男はハールーン帝国の国王の首を持ち、王冠をかぶって王座に座っていた。


「これからは俺が王だ。いいな?」


男がそう言うと貴族の大半は怯えながら頷いた。1対多数であるのに大勢の人間が怯えるのはこの男がとてつもなく強いからだ。しかし、この1人の男だけは屈しなかった。


「…認められません。あなたが王位につけばハールーン帝国は滅びてしまう。」


その男の名はロメス・タルメリア。彼が反対であるという意向を示すと男は予想通りだと心の中でクスリと嗤った。


「それはどうかな?先王と違って俺は優秀なんでね。それと、タルメリア伯爵が、いや、お前ら全員が反対しようと俺が王になることは初めから決まっている。…あぁそうだ伯爵、お前は優秀だ。だから俺の補佐につまりは宰相に任命する。後で執務室に来い、正式に任命してやる。異論はないな?…それじゃあ解散だ。さっさと出ていけ!」


そう男が怒鳴ると全員あたふたと出ていった。


端から見ると情緒不安定な子どもである。


最後の1人が出ていき大きな部屋に男が1人だけになると黒い影が天井から落ちてきた。


その黒い影の瞳には光がなかった。


「彼のことなのですが、シェナード王国のハルシャ公爵の孫だったようで公爵家の一員になったようです。」


そんなことはすでにわかっている、と思いながらもそれが伝わらないように男は返事をする。


「そうか。貴族には容易に手は出せないからな。あそこの貴族はみなアルバード王立高等学院に行くはずだ。そこで接触を試みる。方法は考えるからとりあえず周辺に潜り込んでおけ」


「御意」


そう言って黒装束の怪しい人影は闇へと消えた。



ここまでは予想通りだ。ハァー、誰かさんのせいで面倒なことになったものだ。…早く計画を進めないとな。


それにしてもあのバカ勇者どもは本当に弱かったな。称号に““神に見捨てられし者””ってついてるなんてどこの勇者だよ、ほんと。

ああでも、腕を1本切り落とした後のいろいろなものでグチャグチャになった顔は最高に見物だった。アイツにも見せてやりたかったな。

だが、やはり殺したのは早計だったかもしれない。この世界には回復魔法があるからな、何度だって殺り続けることができたのに。俺が受けた苦痛に比べたらそんなもの屁でもないだろう。

だが、まさか2回も殺せるとは思わなかったな。良いことをしたよ、ほんと。


もう少し速くこの世界に来れたならアイツが爆発に巻き込まれることもなかっただろうにな…


いや、『たられば』をいくらほざいたところで何も変わりやしないか…


そう思いながらも男は玉座の部屋にある窓辺へと近付いた。


男の濁った黒い瞳はキレイな月を写していたが、男の心は月ではなく愛した女を恋しく思う気持ちに支配されていた。


ほんの少し幸せだった昔の記憶を思い出しながら余韻に浸かったが、男は余計に哀しくなり月から目を反らした。


その後、いつまでこの王座に座っていられるかを頭の中で計算し今やるべきことを即座にまとめると、その多さに頭を悩まし、やるせない顔をしてため息をついた。


それから男は伯爵が待っているであろう執務室に足を進めた。














ハルシャ家の執務室



「ハールーン帝国の国王が数日前に何者かに殺害されたそうです。」


そう言ってクレインは胃の辺りを抑える。心なしか顔に疲れが見えてきていた。


「…誰がやったのかは分からないのか?」


真剣な目付きをし公爵が尋ねる。


「恐らくその後に自称国王を名乗った男がそうでしょう。これを」


そう言ってクレインは書簡を手渡した。






シェナード王国の国王、レオン・エスペラード殿に挨拶申し上げる。

我が名は"維志科駕 頼 (いしかが らい)"

いや、ライ・イシカガと言うべきだろうか?

この度ハールーン帝国の国王となった者だ。

突然だが貴殿の国とは仲良くしたい。過去の因縁をたちきって友好関係を築こうではないか!

いい返事を待っている。





そこには子供が書いたといっても遜色のないものが書かれてあった。


こんなものを王として送れば宣戦布告と勘違いされてもおかしくない、と言えば酷さをわかってくれるだろうか?


当然公爵は顔を歪ませた。


「なんだ、この手紙は。無礼にも程がある。まさか陛下はこれを受け入れたんじゃないだろうな?」


そう言って渡された書簡を握りつぶした。


「まさか。しかし無下にできないのも事実です。ここ数十年で彼らの軍事力は桁違いになりました。万が一戦争が起こったときにシェナード王国の住民を1人でも多く守ることができるよう、我々もアルクィンなどの国境に兵を派遣した方がよいかと思います。ちなみに、もちろんその書簡は本物ではありませんので握りつぶしても意味はありませんよ。」


クレインはそう言いながらも公爵の手から書簡をさっと抜き取る。


「そうだな…フィールに手紙を出さねばな…」


そう言って公爵は新たな頭痛の種に眉をひそめた。

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