隣にいてもいいですか?
そして僕達のアルクィンに向けての旅が始まった。
アルクィンまでは大人でも5日はかかる。
11才の子供二人なら10日、いや、12日くらいかかるかもしれない。
最初は街道沿いを進み、その後はほとんど森の中を進むことになる。
地図
アルクィン 街道 山山山山山山 街道←今ここ
「ねえ、コウ。冒険者になった時も君の隣にいていいかい?」
少し遠慮気味にそう言うとコウは少し驚いたような顔してから微笑んだ。
「もちろんやで!俺もお前もアルクィンに着いたらまず神殿に行って祝福を受けよな!はよ自分のステータス見たいねん!」
確かに、このまま行けばちょうど僕の誕生日くらいになるか…
「そうだね。てゆうか、なんでコウは今まで神殿に行かなかったの?1ヶ月くらい前に12才になったはずだよね?」
不思議に思って聞いてみると少し照れくさそうにそっぽを向いた。
「………カイを待っとったんや。一緒に冒険者になりたかったからな。」
そう言ったコウの頬は少し赤みを帯びていた。
「顔赤いよ?大丈夫?」
「これは夕焼けが!…って、わかっとって言っとるな!」
「まあね。でも、ありがとね。」
「あ、こっから道ないな。どうする?」
ざっと見たところ一寸先は森だった。
もう夜は明け時計は朝の7時を示していた。
「もう4時間も経ったみたいだしお互い朝ごはん食べてないでしょ?ここらへんで朝食を食べていこう」
「ええな!たしか干し肉あったよな?それ食べよ」
カバンの中から干し肉を出してコウに渡す。
「ずっと聞きたかったんやけど、カイはなんで赤眼に嫌悪感がないん?」
たしかに、あの国出身で嫌悪感がないのは気になるよな…
「僕は無神論者だからね。神なんて信じちゃいない。神がいたら君が排他されることもなかっただろうし、僕がこの世を恨むこともなかっただろう。もし神が存在していたら聞いてあげるよ。どうしてこんな残酷なことをしたのかってね。」
半分嘘で半分本当だ。
神を信じていないわけじゃない。ただ、確かめる術がないものは議論しない主義なのだ。そう、孔子のように。
たとえどんなに神に祈っても結果は変わらなかった。結局この世界は僕らに厳しいのだ。
ただ、その厳しい世界の中でコウに出会えたことは神からのプレゼントだと思うことにした。
これから先、どうなるかは分からないがキセキを信じてみても悪いようにはならないだろう。
そうして僕らは11日かけてアルクィンに着いた。
その道中奇妙なほどに何もなかった。ゴブリン程度の魔物になら普通は遭遇するはずだ。反対側からとはいえスタンピードが起きたのだ。この森でもおかしなことが起こっていても不思議ではない。
まるで僕らの知らないところで何かが僕らを守っているみたいだ。
そう思ったものの今はただ無事にアルクィンに着いたことを嬉しく思うことにした。
後から知ったことだが、僕らが街を出た後何者かが街の周りに火をはなち、僕らのすぐ後に街を出ようとした者は火に呑まれて死んでいったそうだ。
もちろん街に残った者も漏れなく死んでいった。




