新な旅へ
そうして別れた日の夜中、僕は大きな音で起きた。
時間は夜中の2時。緊急事態を示す時計台の鐘の音が鳴っていた。
部屋のドアを開けるとたくさんの使用人が廊下を走り回っていた。
何があったか聞くために引き留める。
「何があったの?」
そう聞くと使用人は物凄くうっとうしそうな顔しながらも答えてくれた。
「知らないんですか?スタンピードですよ!今大勢の魔物がこの街を襲撃してきているんです。早く逃げないと…」
スタンピート、だと?なんでそんなものが…
「父さんやお義母さん、アレクはどこにいるんだ?」
「今使用人に屋敷中にある金になるものを集めさして逃げる準備をしていますよ。私も速く逃げないと!」
そう言いサッとかけていってしまった。
全く、アイツらこんな時に何してんだよ。
お金なら自分達で探せよな。使用人にさせることか?
僕は、、どうしよう…。コウは無事なのだろうか?
そうだ、今なんじゃないんだろうか?この家からでていくのは…
1人で?無理だ。でも、2人なら…
窓から街を見ると至るところで家が燃えていた。
魔物達がもう街の中に来ているのか…時間はない。今すぐ逃げないと!
そうして僕は貴重品だけを持ち屋敷を抜け出してコウを探しに行った。
阿鼻叫喚でまさに地獄絵図だった。魔物に食べられている子供や死体となった愛する人をただ呆然と眺めて立ち尽くしている人。
その中にコウがいなかったことは不幸中の幸いなのかもしれない。
「どこにいるんだ、コウ…」
大声を出すわけにはいかない。それでも出さずにはいられなかった。
それでも返事が聞こえてくることはなかった。本当にどこに行ったんだ。もしかしてもう…
いや、そんなわけない。彼が死ぬはずないじゃないか!
そう自分に言い聞かせる。
もしかしたらあの丘にいるのかもしれない。行ってみよう。
そして丘の近くに近づくと何かの影が複数見えた。それは、人ではない何かだった。
ゴブリン戦士だ。Fランクだが今は4匹いるからEランクだ。
まだステータスを見ることができない子供に勝ち目はない。
考えてる最中にもゴブリンが近づいてくる。どうしたらいい。僕に何ができるんだ?
ドカッ、ドカッ
突然後ろから石が飛んできてゴブリンに当たった
「カイ、逃げるで!こっちや!」
声の方を向くと石を持ってゴブリンに投げるコウの姿があった。
「コウ!どうしてここに?」
「カイならここに来ると思ってん。早よ逃げんで!」
「逃げるったってどこに逃げるの?」
一応行き先は聞いておかないとな
「この街から一番近くて魔物が来たところから反対側にあって俺たちを受け入れてくれるのはシェナード王国の最東にある冒険者の街アルクィンや。そこに行けば何とかなるかもしれへん。一緒に行かへんか?ここにおっても助からへんで。この街の冒険者は最前線におってほとんどが殺られてしまったんや。」
「そうだね。でも、森に入る前に少し食料なんかを拝借しない?どうせこの街はもう終わりだ。」
「そうやな、ゴブリンは撒けたみたいやしそうするか。」
僕らは魔物に見つからないように崩れかかった建物の中などに入って物色した。
「あ、干し肉じゃん。こっちには乾燥フルーツ。」
「下級ポーションもあんで!毒消しもある。でも、ええんか?こんなことして。」
「いいんだよ。この街の人たちは君を蔑んだ眼で見ていたから。殴られることもあったんでしょ?その慰謝料とでも思えばいい。」
そう、これは盗みじゃない正当な慰謝料だ
「イシャリョウ?なんやそれ。よし、これぐらいでいいんちゃうかな?そろそろいこか。」
「了解。じゃあ行こうか、アルクィンへ。」
そして僕らは絶望の中再び歩きだした。