開けてはならないパンドラの箱
作戦はこうだ。
まずウィンに頼んで僕が持ってきたボスの首をアジトの前に落してもらう。大騒ぎになるだろうからその隙に小さくなったルーンが近づいても気づかないはずだ。次にルーンがギリギリまで近づいたと思ったら即座に巨大化する。そしてルーンの姿を盾に僕らも近づく。
まずユウリの手のみを影に取り込んで、例の睡眠薬を6個中4個使い満遍なく影の中に流し込む。
昨日実験したためルーンに影響がないことは把握済みだ。
そして外にいる奴らからどんどん影に吸い込ませては寝かせて影から追い出す、以下エンドレスだ。
この作戦の弱点は影の中にいない魔術師がルーンに向かって魔法を放つことだ。
まだ成体でないルーンはそこまで強いわけじゃない。専門職に魔法を撃たれたらどうなるかは自明の理だ。そうならないように上手く動かないといけない。
それに僕は……
「それじゃあルーン、出番だよ。」
「ワフ!!」
任せておけと言わんばかりに颯爽と草むらを離れていく。
30秒程経ちルーンが巨大化する。
「それじゃあ行こう」
ちなみにイリアスはここにはいない。エレンを見る人間がいないとかなり問題だし容態が悪化した時に何とか出来るかもしれないのはイリアスだけだからだ。
僕の予想通り盗賊達は固まって集団でいた。
「コソッ)ユウリ」
「コソッ)了解です」
ユウリとコウは眠らせた盗賊の始末とルーンの護衛のためここに残し、僕は洞窟の中に1人で入った。
隠密スキルとこの大騒ぎのお陰で僕がこっそりアジトに入ってきているということはまだ気づかれていない。
ここら辺か…。横にご丁寧に置かれてある松明を1つ手に取る。
そして反対側の手で魔法鞄の中に手を突っ込み油をとりだす。
僕が何をしたいか分かった者も少なくないはすだ。
僕は奥の部屋に向かっておもいっきり投げてビンを割った。
「な、なんだお前は!」
そう叫ぶ者もいたが…
「もう遅いよ…」
そう言って松明を投げつける。
部屋の中がしきりに燃えていることを確認して石でできた扉を閉める。
「こんな感情はレイが死んだ時以来だ。忘れていたよ……確かに僕は今怒っているんだ。」
この扉の向こうには10数人の人がいる。日本でやったら大問題だけどこの世界では逆に誉められる行為だ。今は思えば生まれてくる世界を間違えたのだろう。あの世界の常識から考えたら僕の倫理観は欠如しているのだろうがそれでいい、それでいいのだ。
フッと笑って扉に向かって小さくあっかんべーをしてルーンの元へ戻る。
油を撒いたんだ、普通の水魔法じゃ止められないよ。
僕をここまで怒らせたんだ。死の覚悟を持ってもらわないとね!
途中ですれ違う盗賊を後ろから襲う。
「グワッ」
気が動転してるからって雑魚すぎやしないか?いや、それとも僕が強いのか…?
途中で違う部屋を見つけては睡眠薬を放り込んでいく。
なぜかって?動物がいたからね。僕、動物には優しいんだ。
それに、木の扉だったし…
「おーい、カイ!そっちは大丈夫そうか?」
「問題ないよ。そっちこそ大丈夫?」
「ああ、なんとかな煙玉と麻痺玉を全部使ってしまったけど全員やっつけたで!」
ざっと見ただけでも15人程死んでいる。地獄絵図とはこの事かな?
「ユウリの溜飲が少し下がってくれたらいいけど…」
「もう、大丈夫です。協力してくださってありがとうございます。」
そう言ってユウリはペコリとお辞儀をする。
「いいんだ、気にしないで。それじゃあ2人とも中に入ろうか」
そう言ってアジトの方へと進もうと足を向ける。
「えっ、中に入るん?」
えっ、入らないつもりなの?
「そらそうでしょ、お宝があるかも…?」
「はぁ…まぁエエけど残党おっても知らんで?」
「大丈夫。絶対にいないから。」
眠ってるし死んでるし大丈夫大丈夫
「その自信はどっから来んねん…」
それから僕は呆れたような顔をしたコウとユウリを無理やり引き連れて洞窟の中に入った。
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