出会い1
僕はカイ。
何の因果か前世と同じ名前である。
僕が前世の記憶を思い出したのは10歳の時だった。
継母に叩かれ、バランスを崩してタンスに頭をぶつけた拍子に思い出した。
転生できたのはいいとして、今回も複雑な家庭で生まれたようだった。
家自体は貴族ではないものの、国一番の商家で食べるものには困らなかったが、両親からの愛を感じたことはなかった。
もともと母は僕を生んですぐに亡くなったため、顔も思い出せないが、父は母の死後僕のことを屋敷に放置し、使用人に育てさせた。
義母はいつから父の愛人だったのか、僕より少し下の子どもを屋敷に連れてある日突然現れ、女主人のように振舞いだした。
といっても、義母が現れてからは僕の待遇が幾分かましになった。まず、日中は外で過ごすようにとお金を渡され屋敷を追い出されるようになったおかげで、ある程度自分でいろんなものが買えるようになったのだ。
これは凄い変化である。もともとお金なんてもらえなかったため、ずっと屋敷で本を読んでは食って寝る生活をしていたのだ。とてつもなく健康に悪い。
日中外に出るようになったおかげで頻繁に出ていた眩暈や頭痛もなくなり、とっても健康になったのだ。
とまあ、僕の生い立ちについてはここまでにして、僕の日課を紹介しよう。
僕の1日は家から本を数冊もって街が見渡せる丘に登ることから始まる。
僕の住む国、ハールーン帝国は戦争が絶えない国で、僕の住んでいる街でも戦争で親を失った孤児達がたくさんいる。
そのため、下手に街を1人でうろつくと財布をすられたり、カツアゲされたりする。
なので、慎重をきさなければならない。
「おい、お前!キレイな身なりをしてんなぁ!死にたくなかったら有り金全部置いていきな!」
と、言ってるそばからこうである。
「やだよ。なんで君らに渡さないといけないの?」
そうめんどくさそうな顔をして言う。すると、周りにいる孤児達が少し顔をしかめる。
「ちっ、こうなりゃ力ずくて奪うまで!いけ、お前ら」
取り巻き達が僕を襲おうとしたその時だった。
「おい、お前らなにやっとんねん!」
関西弁というのだろうか?少し特徴のある声が聞こえてきた。振り向くとそこには僕と同い年ぐらいの少年が立っていた。
「おい、あいつってたしか」
「悪魔だ!逃げろ!!」
その声の主を見るや否や孤児達は我先にと逃げていく。バケモノでもみたかのように顔を青くしていた。
はて?と思いながら逃げて行った方をボーっと見ていると、トントンっと肩を叩かれた。
「君、大丈夫か?アイツらは最近良くない噂聞くから、次見たら逃げるんやで。」
その声の主はとても綺麗な赤い瞳をしていて僕と同じ黒髪だった。
「大丈夫だよ。それにもう少ししたら衛兵の巡回時間になるし。…それよりその目、キレイだね。」
そう、僕が殴られているところに衛兵が来るという感じで計算していたのだ。僕がただでやられるわけがない。
「お世辞はええで。この目、悪魔のようやって言われて村も追い出されたんや。」
そう言って少年は少し悲しそうな顔をした。
「へー、そうなんだ。その人達悪魔を見たことあるの?」
たしか、この国では意味がわからない理由で赤眼は迫害されていたはずだ。少年の村でもそうだったのだろう。まあそんな変な宗教を国教にしてるのは帝国くらいだが…
「さすがに無いやろ。悪魔は神話におる生き物やし。」
少年は何故そんな当たり前のことを聞くのかと言わんばかりの顔をした。
「その村の人、頭おかしいんじゃないの?見たこともない生き物の目が赤だと断言して、赤い瞳の人を弾圧するなんて。せめて見たことあるならまだ分かるんだけどさ。」
少し立場は違うが昔の自分を見ているみたいだ。
「君のそれは悪魔のものじゃない。だって、こんなにもキレイで透き通っている。…ていうか、僕から財布を奪おうとしたアイツらの方が悪魔だよ。それじゃあ、もう行くね。さっきは助けてくれてありがとう。」
まあもう会うこともないのだろうけど…という言葉は胸にしまって少年に手を振った。
「あ、ああ。気をつけてな…。キレイで透き通ってる…か…」
少年のそんな独り言を聞きながら僕は目的地まで歩いて行った。




