出会い1
僕はカイ。
何の因果か前世と同じ名前である。
僕が前世の記憶を思い出したのは10歳の時だった。
継母に叩かれた時、バランスを崩してタンスに頭をぶつけた拍子に思い出した。
僕は金持ちの家に生まれたが、僕は前妻の子供で父親が再婚し子供も生まれたため家族から疎まれているのだ。
しかし、体裁を保つためかはたまた食事のためかはわからないがお小遣いはくれる。
まぁ一緒に食卓を囲むことはしないが。
僕の1日は家から本を数冊もって街が見渡せる丘に登ることから始まる。
僕の住む国、ハールーン帝国は戦争が絶えない国で、僕の住んでいる街でも戦争で親を失った孤児達がたくさんいる。
そのため、下手に街を1人でうろつくと財布すられたり、カツアゲされたりする。
なので、慎重をきさなければならない。
「おい、お前!キレイな身なりをしてんなぁ!死にたくなかったら有り金全部置いていきな!」
と、言ってるそばからこうである。
「やだよ。なんで君らに渡さないといけないんだ?」
そうめんどくさそうな顔をして言う。すると、周りにいる孤児達が少し顔をしかめる。
「ちっ、こうなりゃ力ずくて奪うまで!いけ、お前ら」
取り巻き達が僕を襲おうとしたその時だった。
「おい、お前らなにやっとんねん!」
関西弁というのだろうか?少し特徴のある声が聞こえてきた。
「おい、あいつってたしか」
「悪魔だ!逃げろ!!」
その声の主を見るや否や孤児達は我先にと逃げていく。バケモノでもみたかのように顔を青くしている。
「君、大丈夫か?アイツらは最近良くない噂聞くから、次見たら逃げるんやで。」
その声の主はとても綺麗な赤い瞳をしていて僕と同じ黒髪だった。
「大丈夫だよ。それにもう少ししたら衛兵の巡回時間になるし。…それより眼、キレイだね。」
そう、僕が殴られているところに衛兵が来るという感じで計算していたのだ。僕がただでやられるわけがない。
「お世辞はええで。この眼、悪魔のようやって言われて村も追い出されたんや。」
そう言って少年は少し悲しそうな顔をした。
「へー、そうなんだ。その人達悪魔を見たことあるの?」
たしか、この国では意味がわからない理由で赤眼は迫害されていたはずだ。少年の村でもそうだったのだろう。まあそんな変な宗教を国教にしてるのは帝国くらいだが…
「さすがに無いやろ。悪魔は神話におる生き物やし。」
少年は何故そんな当たり前のことを聞くのかと言わんばかりの顔をした。
「その村の人、頭おかしいんじゃないの?存在してるかも怪しい悪魔なんてものを信じて、かってに恐れて子供を追い出すなんて。」
少し立場は違うが昔の自分を見ているみたいだ。
「それに君のそれは悪魔のものじゃない。それだけは確かだよ。こんなキレイな赤色、僕は初めて見た。じゃあ、もう行くね。さっきは助けてくれてありがとう。」
まあもう会うこともないのだろうけど…という言葉は胸にしまって少年に手を振った。
「あ、ああ。気をつけてな…。キレイ、か。ありがとうな。」
その言葉は青い綺麗な空へと消えていった。




