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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
絶望に咲く彼岸花

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神の思し召し

その頃、学院では騒ぎが起きていた。卒業試験を終えて帰還した生徒のうち二人が転移魔法陣起動中に行方不明になったからだ。その上、引率していたリベルという魔法陣学の教授が見るも無残な死体となった。


「逆探知までおよそ一日…そんなに待ってられないね。緊急転移陣を使い王宮とハルシャ家に向かう。ルークスが何か知っているかもしれないわ。」


そう言って学院長は緊急転移魔法陣がある場所まで急いで走った。


******

ハルシャ家の屋敷にて


執務室でルークスと学院長が向かい合って座っていた。ルークスは事の顛末を学院長から聞き、少しため息をついた


「…学院長、申し訳ないがこの件に関して俺は何もできない。おそらくこれは()()()()()()だ。カイの第二次覚醒が近いのだろう。」


「…そう…ここが正念場ということね。神の思し召しなのであれば()()()()()()()()()我々は介入できないし、、」


そう言って学院長は黙り込んだ。


「…こんな時に神の血を憎く思う。」


神の思し召しだと分かっていて、それを邪魔することは半神ないし神眼を持っている者にはできない。第二次覚醒は成功すれば回復能力が手に入り、失敗すれば死んでしまう、そんな過酷なものであるがゆえに、助けることができないルーカスは神への恨み言を吐かずにはいられなかったのだ。


ハルシャ家の屋敷の別室ではルシアンが窓の外を睨みつけていた。


「私は絶対にお前たちを許さない。たかが二次覚醒に失敗したからといって弟だけを死なすなんて。」


ルシアンには双子の弟、ルシウスがいた。13才のときに、彼らは半神として第一次覚醒を果たした。一世代につき一人しか半神が生まれないという法則を破ったその出来事はハルシャ家にかなりの影響を与えた。その一年後、第二次覚醒が行われるものの、失敗しルシウスのみがこの世を去ったのだ。


それはまだ14才だったルシアンの心を完全に閉ざすには十分な出来事だった。


自分はなぜ生き残り、ルシウスが死ななけば行けなかったのか、どうして一緒に死なせてくれなかったのか、そんなことを考えても行き着く結論はいつも同じだった。そう、神の思し召しだ。


『神の思し召し』、そんな一言で弟は死ななくちゃいけなかったのか?


半神としての資格を奪われ、今まで感じていた力は失われたはずなのに、ルシアンがカイを助けにいこうとすると、体は鉛のように重くなった。通常ハルシャ家の人間、その中でも半神のみに感じるそれはカイが第二次覚醒に近づいていることを表していた。


ルーカスはカイの第二次覚醒のことは公爵と国王、そして学院長にしか言っておらず、まさかルシアンが気づいているなど夢にも思っていないだろう。


「…カイを死なせた暁には、本気でお前たちを殺してやる。これ以上、私の家族をもてあそぶな。」


ルシアンはそう言ってカーテンを閉めた。


「アイリス、この屋敷なんか匂わない?死体が放置されて丸三日たったような匂いなんだけど。」


「そうですか?私には分かりませんが…」


気づいてない、わけはないだろう。嗅覚を今すぐ封印したいぐらいの匂いだ。つまり、僕にしか分からない匂いということか…


「そっか、分かった。これからどうする?これによれば『作品』とやらを見なければここから出れないようだけど。」


「結界でも使われているんでしょうか?」


「かもしれないね。」


僕はそう言って窓を開けようとしたがびくともしない。思いきり殴っても傷一つ入らなかった。


「どうやら何らかの力が働いているのは間違ってないみたいだね。」


そう言って一歩踏み出そうとしたその瞬間、何かを感じて体を右に捻る。すると、体すれすれに刃物が飛んできた。


「これは一体…」


「『滅びの館』という名前をどこかで聞いたことがあると思っていたんですが、思い出しました。魔生物学の授業で先生が言っていたんです。たしか、人間が住まなくなった建物を支配してそれごと乗っ取っる魔物で、乗っ取られた建物は『滅びの館』と呼ばれ、小型のダンジョン化をすると。そこには罠がたくさんあって脱出するのはほぼ不可能。もし館に入ってしまったら、外部から助けがくるまで動かないで待っているのが得策、だとか。」


「…僕らにそんな余裕があればよかったんだけど、今は状況を確認するのが先だからな…でもさっきみたいな罠がそこらかしこにあるんだったら本当にそれで命を落としそうだよ。」


「罠の性質が分かれば発見しやすくなるんですが、そのためには罠にかかりまくる必要がありますし…」


「あーなるほど…ちょっと待って。」


そう言って僕はナイフを一本、少し遠くに投げた。すると、ナイフが刺さった地面がパッとなくなった。


「どうやらこういうのでもいいらしいね。」


僕はそう言って少しだけほっとしたのだった。

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