表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
最後の夏休み~揺れる心~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

254/309

君と僕が同じなら

暖かい風が僕の頬を撫でた。レインの乗っているため、周りの景色はあっという間に変わっていく。


  ー聞こえる?ルーン。コウたちの隙をついて僕を追ってくるんだ。できるね?


  ーウン、まカせて…


テイムスキルのレベルが上がり、ルーンと脳内で会話できるようになったおかげですごく楽だ。まだ簡単なことしか話せないがもう少しレベルが上がったら普通に話せる日も来るかもしれない。


『おい、カイ。お前ほんとに家に帰らない気か?』


当たり前じゃん。

家に帰ったらクローネリンドの謎を解けないでしょ?気持ち悪い状態にするのすごく嫌いなんだよね、僕。


『何日家を空けるつもりだ?』


うーん…1週間ぐらいかな。それぐらいあれば解決できると思う。


『この問題を解決するのは少し厄介だぞ。どうする気だ?』


厄介?どこが?僕の仕事は密売している人間を見つけ出すこと。そこまで難しい問題じゃないはずだけど?


『…シェナード王国でモルスを密売したらたとえどんな理由があろうとも死刑だ。しかも本人のみならず一等親以内の家族も死刑になる。』


知ってるよ。学院に入る前にこの国の法律はあらかた覚えたからね。シェナード王国は昔モルスによって滅びかけたからその戒めの意味も込めてるんだよ。


『成り立ちはどうでもいい。…お前は犯人の子どもが年端もいかない幼児だとしても死刑にする気か?』


…帝国でライも同じようなことしてなかった?直前で恩赦があったらしいけど、あれは絶対ライがしたんじゃないよね?


『どうしてそう思う?』


だって僕が君なら恩赦なんか絶対にしないから。君が僕と同じ魂という()()()()が本当であれば君もそうするはずだ。たとえ育った環境が違っても、根っこの部分までは変わらないし変われない。結局僕らはただの自分勝手な人間でしかない。

僕は僕が大事だから、自分の心を守るために僕と僕の大好きな人達を全力で守る。過程は関係ない。たとえどんな犠牲を払っても僕の心が壊れなければそれでいい。


「……でも、それは間違っている。」


ぽつりとこぼれた言葉は僕の心の臓をナイフで切り刻む。その場所がズキンズキンと鈍く痛んだ。


『…人間というのは皆そういう生き物だ。お前だけじゃない。俺も昔はそうだった。』


昔は?今は違うっていうの?


『両の手を伸ばした時に手で掴める命は救おうと思うようになった。この世界はお前が思うよりお前に厳しくはない。今までしようとも思わなかったことをしていけばいい。気づけなかったことにも気づけるようになるはずだ。』


「……たとえば彼らを助けるとか?」


100mほど離れた場所に人と魔物がいる。あれは冒険者だな。人の血の匂いがするから誰かケガしてるな…


「レイン、もう少しスピードあげてくれる?魔物を思いっきり蹴とばしてくれてもいいよ。その衝撃で止まれればなおよし。」


 ーワかっタ


猛スピードで走るレインの上から状況を確認する。


あの姿、どこかで見たことあるな…あっ、もしかして…


「僕の助けは必要かな?ラルク。」


レインを急停止させて目の前で血を流している少年にそう声をかける。


「…っカイさん?!どうしてここに…いえ、なんでもいいです、助けてください!」


「はーいっ…と…」


周りを囲んでいた魔物の頭を次々と切り落としていく。


コイツらなんでこんなところにいるんだ?生息地が違うと思うんだけど…なにか森に異常でもあるのだろうか。


「敵をかみ砕け、氷の牙(アイスファング)!」


とがった氷が巨大な獣の口の形をして魔物に襲い掛かる。まあこれで全部仕留めきれたはずだ。


そう思って後ろを向く。


「…やあ、久しぶりだね、雷鳴の獅子さん。」


「はい、久しぶりですね。何度も助けてもらってすいません。」


「これ使って。」


そう言ってポーションを渡す。


「えっ、いいんですか?これ高いやつですよね?」


「原価は知らないよ。ユウリが作ったやつだし。その代わり僕と会ったことは誰にも言ってはいけないよ。分かったね?」


「わかりました。」


相変わらず礼儀正しくお辞儀するラルクを少しほほえましく思いながら立ち去ろうとすると、ローブを掴まれた。掴んだのはラルクではなくティーナだった。


「どうしたの?」


「カイ…さん。…やめたほうがいい。、、何かよくない気がする。」


「ティーナ?…カイさん、何しに行くのか知りませんけど、辞めておいたほうがいいかもしれません。ティーナの勘はよく当たるので。」


「そう…だけど、残念ながらそういうわけにはいかないんだ。これは僕の貴族としての義務だから。」


そう言って僕はさっとその場を離れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ