フレイムベア
「見えた!俺が突撃するからカイは裏に回って」
「イリアスはコウが突撃したときにリンに頼んで真ん中あたりにいるホーンラビットの足に草を巻き付けて妨害してくれる?」
「了解!」
裏に回るため草むらを足音をたてずに駆け抜ける。
ピロン 忍び歩きがlevel2に上がりました
それは嬉しいが何が変わったかは正直よくわからない。
てゆうか走っているのに忍び歩きって…
ヒューとウィンが急にそばに現れると「もうOK?」
とイリアスの声が聞こえた。
「うん、いつでも大丈夫。わかってると思うけど、額の魔石は壊したらだめだからね?」
と言うとシュッと消えて数秒するとコウの「ハァァァ!」という声が聞こえたので自分も突撃する。
まずは一番奥のウサギから狩る
ズシャっとした音とともに首が落ちた時にはコウは2体倒していた。
残りの2匹は草によって足を縛られて動けなくなっていた。
「イリアス、とどめやる?」
「いいのか?」
「イリアスって魔物倒したことないでしょ?練習としてやっておけばいいよ。」
「首か心臓狙えばええで!無理やったら額の魔石を壊したら倒れるで。はい、剣貸したるわ!」
いや、だから魔石は壊したらダメだって…
「いや、自分のナイフを持ってるから大丈夫だ。」
そう言って意を決したような顔つきをしてグサッと2匹とも心臓をひとつきした。
「気分のいいものではないな。」
「命を奪うっていうのはそういうものだよ。こればっかりは慣れてはいけないからね。でも、無闇やたらに殺してるわけじゃないから感謝して魔石と角と肉を剥ぎ取らないと。」
「もう慣れてる気がするのは僕だけか…?」
「いや、俺もそんな気はする…」
「2人とも?解体するよ」
「「……は~い」」
今日の収穫はホーンラビットの魔石23個,角25個、ホーンバードの卵が20個。
ちなみにホーンラビットの魔石が角に比べて2個少ないのはコウが勢い余って壊したからである。
あれだけ言ったのに……
「明日の予定を言っとくと、まずホーンバードを探しに行ってからフランドル高原に行って、ゴブリン退治とコボルトを退治しつつ魔石を取るって感じかな。ああ、魔物はホーンラビットとかの例外を除くと大体は心臓に魔石があるみたいだから、余裕がある時でいいから心臓は狙わないでね。」
「了解!そういえばこの依頼終わった後もイリアスは神殿で生活するん?それともどっか宿取ってたりするん?」
「今のところ神殿に住んでるよ。あっ、そういえば神父様がカイとコウに会いたがっていたから今度神殿を訪ねてくれないか?」
「もしかしてあの優しそうな青い瞳の神父さん?」
「そうだけどなんで知ってるんだ?」
「僕達、この前アルクィンの神殿で祝福を受けたばっかりなんだ。で、その時の担当がその神父さんらしい。」
「すごい偶然だな。」
「ワフッ」
「うん?自分のことを忘れてないかって?ゴメン。結構忘れてた気がする…」
「ワフッ!」
プイっと首を背けられてしまった。
「あ-あ、そこは嘘でも忘れてないって言うべきやったって~。ルーンこっちにおいで~」
「ワフッ!」
あいつ、コウに飛び付きやがった!!
「この裏切り者!」
※
※
※
夜
『僕』が写真を手にとって座っているのが見えた。
「僕がこのまま何もせずに死ぬのはあいつらの思うつぼだ。#@%する前にあいつら全員に地獄を見せてやらないと気がすまない。
どうしようか…。あいつらを1人ずつ地獄に落とすのもありだけど、なんせ時間がない。さっさとあの世に行きたいからな。
そんなことで時間を取るのは非合理的だ。
……ああ、あの方法なら一気に方をつけれるな。
フフッ。待っていてくれ、#*&$%。今そっちに行くからさ。」
そう言って『僕』は手に持った写真をそっと伏せるのだった。
「カイ、起きろ~。コウが朝ごはん出来たって!」
夢?あまりにもリアルだった。
僕が死んだのって不慮の事故じゃない?それならなんで死ん「おーい、大丈夫か?」
「あっ、ああ。今行く。」
♢
「ホーンバード、今日はおると思う?」
「いるんじゃない?昨日卵を根こそぎ取っていったのがばれてたら多分鳥さんサイドが見つけてくれると思うけど」
「あっ、あれじゃないか?」
イリアスが指指している方を見ると鶏みたいな魔物がいた。
鑑定!
名前:なし
種族 ホーンバード レベル5
体力 648/800
魔力 0
俊敏 45
スキル
頭突レベル2 呼び寄せレベル3
呼び寄せレベル3
仲間を呼び寄せる。1匹だと雑魚だがたくさんいるとかなり厄介
ちなみに鑑定のlevel4は格下の生き物のステータスを丸裸にできる。
「あれだね。ホーンバードは味方を呼ぶから気をつけてね。」
「了解!俺行くわ!」
コウが素早く鳥の首を飛ばした。
ここまでは良かった。そう、ここまでは…
「すまん、周り見てへんかった!」
「えっ、何匹いるのこれ?」
「はぁ、はぁ。…30匹は越えてるな」
「言うてる場合か!そや、木に登ろ!さすがに登ってこれへんやろ」
「そうだね。イリアスは登れる?」
「はぁ、はぁ…。多分無理~、ゲホッ」
「もうイリアス限界やん。リンにお願いして木に巻き付いてる蔦操って上にあげてもらい?」
「ああ、分かった。はぁ、はぁ、リン!」
近くにあった蔦がイリアスに巻きついて上に持ち上げた。
「僕達も登るよ!」
見渡す限り鳥の頭が一面に広がっている。
「それで、これどうすんねん。」
「とりあえず下に一瞬降りて狩って登っての繰り返しかな」
「まじか…。まあ、撒いた種はちゃんと回収せなあかんからな。…よし、やるか!」
30分後…
「やっと帰ってくれたな…。何匹狩ったんやろ?」
「さすがにこれだけの数を解体するのは日が暮れるから魔石だけ取って魔法鞄に入れるよ。まあ、ギルドに説明しないといけなくなるけど」
「OK!じゃあイリアスも手伝ってくれ!」
「分かった。にしてもすごい数だな…」
そして僕達は魔石の回収をしてからフランドル高原に向かった。
「結構近いな。どうする?」
「イリアス、ウィンに周りの探知を頼めるかい?」
「了解!ウィン、よろしく。……………………前の方になんかいるっぽい。」
「OK!少し近づこうか。」
「うーん。この動きはゴブリンか?5体ぐらいいるな。とりあえず3体と2体で分裂させたい。僕が水魔法で2体の顔面に水を叩き込むからその隙にコウとはできれば魔法使いを狩って欲しい。イリアスはコウが仕留めれなかったゴブリンの、武器を持っている方の手を草でぐるぐる巻きにして欲しい。ルーンはイリアスのこと守ってて。」
「「了解!」」
「ワフッ!」
「カイは水を叩き込んだ後どうするんだ?」
「後ろに回って首をかっ切ろうと思ってる。失敗したら一旦みんなさがってね。」
まあ失敗するとはつゆほどにも思ってないが…
「じゃあカイは準備できたら水魔法使って。それを合図に動くわ」
「了解」
チラッと木の上から見るとゴブリンが5体ちゃんといた。
「よし。そろそろかな?」
今ゴブリンは真下にいる。集中して水をつくる。結構練習したので多分大丈夫だろう。
バシュという音でゴブリンに水球があたる
「よし、いまだ!」
木の上から飛び降りた衝撃を加えてゴブリンの首に短剣を叩き込む。
よし、1匹もらい!あと1匹、
いるであろうゴブリンの方を見ると、地獄絵図になっていた。
「ちょっ、カイなにしてん!」
「あっそっちは終わったの?」
「おん、もちろん!…ってそうじゃなくて!」
コウをほっといて苦しみもがいているゴブリンの頭を落とす。
「カイ、ゴブリンに何をしたんだ?」
「みんな揃いも揃って酷くないかい?ゴブリンには何もしてないよ?」
「てことはゴブリン以外になんかしたんやな…」
「ライの実から取った液体、売ってたでしょ?それを水球に入れただけ。」
ライの実とは唐辛子みたいなものでめっちゃ辛いとだけは言っておこう
「ほんとにカイって敵に対しては鬼畜だな。」
「右に同意」
「うん?なんかよくわからないけどありがとう」
「「いや、誉めてない」」
そんなこんなで夜になった。
今日の成果はホーンバードの魔石45個。ちなみに肉は57匹分ある。そしてコボルトの魔石12個
ゴブリンを15体コボルトを15体倒したので全ての依頼は達成できた。
「ねぇイリアスに、聞いていいかわからないんだけど聞きたい事があるんだ。」
「そういうときは1回聞いてみたらどうだ?」
「…………うん。答えたくなかったら答えなくても構わないんだけど、イリアスってハールーン帝国の貴族の子供?」
「……どうしてそう思うんだ?」
「その髪とヒーラーとしての素質かな?ハールーン帝国のラディア伯爵家の直系は全員白髪で代々王室の治癒術士として働いているらしい。」
「そこまで分かってたんならなんで俺なんかに声をかけたんだ?貴族に捨てられた子供なんて厄介者以外の何者でもないだろう?」
「どうしてだろうね?あえて理由をつけるなら僕達と少しだけ似ていたからかな。僕は家族に疎ましがられていたから、同情したのかもしれない。」
「俺は貴族ではないけど親に捨てられた所は一緒やで。よかったら聞かしてくれへんか?イリアスがどうやって生き延びてきたのかを。」
「…いいよ。…僕はカイの言った通りラディア伯爵家で生まれたんだ。
貴族は平民と違って10才になると祝福を受ける。
その時まではまだ置いておく価値があると思ったんだろう。酷い扱いはされても殺されはしなかった。
そして彼らは祝福を受けた時に僕が精霊術とヒーラーの才能があることを知ったんだ。ちなみに精霊術は母の家系から受け継いだものだ。
そこからは勉強漬けの毎日だったけどかなり待遇も良くなった。だからこんなにもレベルが高いんだ。
でもそれは1年だけだった。
僕の1年違いで腹違いの弟が祝福で素晴らしい才能を受け取った。
その日ウィンが偶然にも伯爵が用済みになった僕をどう始末するかについて話しているのを聞いたんだ。
だから誰でも歓迎してくれるこのアルクィンに来たんだ。
もともと自分の事はある程度自分でできてヒールが使えたからここまで生き延びれた。」
「追手はどうしたの?」
「それなんだが、気味が悪いほどに何もなかった。彼らの手の上で踊らされているだけかもしれない。」
「じゃあ次俺やな。
俺はハールーン帝国の山岳地帯にある小さな村で生まれたんや。
やっぱり村の人はルディア教を信仰してたから悪魔として扱われた。親も同じや。
でもたった1人だけ、兄貴だけは俺のことを弟として接してくれた。
剣も兄貴が教えてくれたんや。
やけど、兄貴は悪魔と仲良くしたとして村の大人に殺されたんや。
それに怒った俺はその大人をぶん殴ろうとしたんやけど勝てへんくて逆に川に突き落とされたんや。それでなんやかんやあってカイの住んでた商業の街フィレンにたどり着いたんや。」
「そうだったんだ。」
「カイも初めて知ったのか?」
「うん。お互い過去の事についてはあんまり話さないから。」
「そんじゃあ次カイの番やで。俺のは別にええけどカイのは他言無用やで」
「いや、別にコウのも言わないけど…」
「実は僕、この世「ドガン!」」
「なんだ?襲撃か?」
「見てくるよ」
テントの外にでると大きい熊のような魔物がいた。
「みんな、外にでるんだ、速く!…あれは確か炎熊だ。」
フレイムベアはたしかCランクの魔物でフランドル高原の奥に生息しているはずだ。
なんでこんなところに…てゆうか絶対何人か殺った眼をしている。怖っ
魔法鞄にテント等を収納して相手の出方を待つ。
「イリアス、もし見つかったらルーンに乗って逃げろ。木が邪魔であまり大きくなれないからね。ルーン、最短距離で森を抜けてくれ。」
「カイとコウはどうするんだ?俺は2人を見捨てることなんてできな「グワァー!!」」
「見つかった、ルーンイリアスのことを頼んだよ!」
「ワフッ!」
「走るぞ!」
「でもどうすんねん。多分勝てへんどころかワンパンやで俺ら。」
「そりゃ力が尽きるまで走り続けるんだよ!」
「嘘やろ!」
まあ、一様撒けるかどうかは試してみようと思うけど…
ライの実の液体はあまり残ってない。さて、どうするか。
やっぱり眼にぶちこむか…。でも避けられた後が怖い。
「コウ、少しだけでいい。あいつの体に傷をつくれないかい?」
「さすがに隙がないと無理や。」
「隙を作ればいいんだね?」
周りにできるだけ大きい水球をいくつか出した。
やはり思った通りだ。魔物は知能が低い。
目の前のフレイムベアは僕らに眼もくれず水球に写った自分に攻撃している。
「コウ、頼んだよ!」
「任せとけ!」
コウが水に写った自分と戦っている熊を後ろから思いっきり切りつけた。
「グヮー!」
そして僕がその傷めがけてライの実の液体をぶっかける!
「グッ、グヴォー!」
めっちゃ苦しんでる、まあ自業自得だ。喧嘩売った相手が悪かったんだ。
「カイ」
「分かってる」
そして僕達は全力で森を抜けるために走った




