シュディス商会
「カイー、ほんとびっくりしたんだぞ、俺は。まじで手首切り落とすのかと思った。」
「切り落としてほしかったの?手首。でもごめんね、さすがにそこまではできないよ。悪態をつかれたぐらいでそんなことしてたらお祖父様に怒られると思うから。…ああいうの僕は慣れてるから何も感じないけど、ユウリには刺激が強かったかも。大丈夫?怖くなかった?」
「はい。どちらかといえばカイさんの方が怖かったです。」
「あっ、ほんとに?確かにああゆう言い方は怖いか…次からは一言もしゃべらずにニコニコしておこうかな。気味悪がって逃げてくれるかも。…あっ、ここちょっと寄っていい?」
「シュディス商会ですか?何を買うんです?」
「シュディス商会といったら薬だろ?イリアスがいるから必要ないんじゃないか?」
「買うのは薬じゃないよ。毒薬だよ。」
そう言って店に入る。
「毒薬なんて何に使うん?」
「うーん、盗賊退治?とくに決めてるわけじゃないよ。」
「ふーん…カイ、何個買うつもりなん?」
「とりあえず、ここからあそこまで棚にあるもの全てかな。」
「買いすぎや!!せめて3個づつとかにしなさい。ていうか、この薬とかいらんやろ!なにこれ、『指が消えたように見える薬(効果は10分)』?」
「何かの役に立つかもしれないじゃん。お金なんて腐るほどあるんだからこういうところで使って経済をまわさないと。」
「あかん。3個づつまでや。」
「ちぇ…」
全種類の毒薬(?)を三種類づつ買って商店を出る。
今回の依頼はここから徒歩1日でつく場所にあるのでレインに荷馬車を括り付けて快適に移動する。もちろんルーンも一緒だ。レインは賢いので御者は必要ない。もちろん有事の場合には必要だが…
ガタガタと揺れる荷馬車の中で僕は本を読んでいた。
「カイは今回短剣でいくん?」
パタンと本を閉じてコウの方を向く。
「…そうだね。よっぽどのことがない限り短剣を使うつもりだよ。」
「ていうか荷馬車で目的地に行くんだったら道中で商人だと勘違いした盗賊に襲われるんじゃないのか?」
まあ確かにイリアスの言うことももっともだ。だが…
「うーん、どうだろ。ギルドから討伐依頼が出ていることを何かしらの方法で盗賊が知っていたらどこかに隠れているんじゃないかな。よっぽどバカじゃない限りね。」
「冒険者を殺したらもっと強い冒険者が派遣されるからですか?」
「そういうこと。まあ僕らが敗れるなんて百万が一にもないだろうけど。」
どうせ影がついてきているだろうしね。まあ、学院を出たらやめるって言ってたから別にいいんだけどね。
「にしてもユウリ、ずいぶんと上手くなったね、弓。」
さっきユウリが撃ち落としていた鳥をむしゃむしゃと食べているルーンを見る。家出る前も何か食べてなかったか??
「僕ももう12歳なのでギルドに登録したんです。カイさんが卒業する前にはDランクになっていると思います。試験には自分で作ったものなら持ち込み可なので結構有利なんですよね。」
一年でDランクは凄いな…まあそれだけ頑張っているということか。それならこの先も一緒に冒険できそうだ。
「あっ、そうだ。エレン、前みたいに一人で盗賊に切りかかっていかないでよ。」
「それは心配いらへんと思うで。カイが学院におる時に何度か盗賊退治の練習に行ったから。」
「へぇー僕抜きで行ったんだ。なんか悲しいなーせっかく初めての盗賊退治依頼だからわくわくしてたのに。まさかフライングされてたとはー」
「ものすごく棒読みだな。」
「まーね。…ユウリ、前方11時の方向にゴブリン二体。」
「了解です。」
慣れた手つきでゴブリンの頭を射抜く。僕には到底できない芸当だ。なんせ僕には弓の才能がなかったから。
「お見事。ここら辺で今日はやめとこうか。大きい湖もあるみたいだし。」
「そうですね、それがいいと思います。」
湖の近くに荷馬車を止めてテントをはる。
「最近学院ではどうなん?」
「良くも悪くもないよ。相変わらず授業は退屈だし、陰口をたたくバカも多いけどそれなりに楽しいかな。でも、君たちと冒険者として活動している方が何百倍も楽しいと思うけどね。」
まあ学院での生活も悪くはないんだけどね。
「皆何食べたい?」
「俺何でもええで」
「僕も特に希望はないな。」
「僕、魚が食べたいです。」
「じゃあみんな、魚でいい?」
「構わないけど、どうやって捕まえるんだ?」
「エレンが素手で捕まえるよ、たぶん。」
「なんで俺なんだ??」
「だってエレンは狼の獣人でしょ?魚ぐらい素手で取れそうなものだけど。」
「たしかに狼は魚も食べるが、獣人だからといって魚を取れるわけじゃないぞ。ユウリに弓で射ってもらったらいいんじゃないか?」
「さすがにそれは無理だと思うよ。水の中に入ったら急速に速度が落ちるだろうし。」
話し合った結果、僕とコウとエレンの三人で魚を取ることになったが、4匹しか捕まえることができなかった。ただ、皆でわけあったその魚たちは屋敷の料理よりもずっと美味しかった。




