白髪の少年
依頼掲示板を見てみるとGランクの配達依頼がちょうど2つ残っていた。
Gランク 配達 1100リビア
Gランク 配達 1200リビア
「すみません。この2つの配達先と配達内容を教えて欲しいんだけど」
「わかりました。この地図を見てもらえますか?1つ目は東門前のこの家に椅子を3つ、2つ目は鉄の斧っていうこの鍛冶屋に鉄を入れた袋を7つ持っていくことが依頼内容です。お受けになりますか?」
鉄の斧?あ~ゲルフさんの所か
「うん、受けるよ。」
「では荷物を持ってきますね。」
「これが配達物です。」
「ルーンにくっつけてもいいの?」
「破損させなければ大丈夫ですよ。」
よし、じゃあ失礼して
椅子を壊さないようにルーンの背中にしっかり結びつける。
「よし、これで落ちないはず。」
「じゃあ行こか!」
「そうや、カイ。この先パーティーメンバー増やす気ある?」
「うーん、難しい質問だね。無理に増やさなくても良いとは思うけど、この先何があるかわからないからヒーラーはいると思うよ。」
「ヒーラーか…。さすがにそんなエエ職業持ってる人俺らんとこに来てくれるかな?」
「さぁ?訳ありなら来てくれるんじゃない?あ、ここだ。ルーン椅子下ろすから伏せて」
「ワフッ」
やっぱりコイツ言語分かってるよな?月光狼ってそんなに知能高かったっけ?
することがなくなったコウが、コンコンと扉を叩くと優しそうな30代位の男性が出てきた。
「はい、なんでしょう?」
「冒険者ギルドから椅子を届けに来ました!」
コウって標準語?で喋れるんだ…
「そのようですね。判子を押したいので依頼書をお借りできますか?」
「はい!」
男性はコウから依頼書を受けとるとポンッと丁寧に判子を押した。
「何か良いことあったんですか?」
僕がそう聞くと本当に嬉しそうな顔をして頷いた。
「あ、わかります?明日妹とその子供が2人泊まりに来るんです。私は独り身で家に椅子が2つしかなかったので急遽取り寄せたんです。間に合って良かった。ありがとうございます。」
「そうなんですね、お役にたて良かったです。それじゃあ、僕達は次の依頼があるのでこれで失礼します。」
「ええ。お気をつけて」
「あの人、いい人そうやのに独り身なんかぁ…。世の中厳しいなぁ。」
いい人=結婚できるっていう方程式はちょっと違うと思うんだけどな…
「そう?かなり雲散臭かったけど…」
「ええ!?めっちゃ優しそうやったやん」
「いや、何て説明したらいいかわからないんだけど何か匂うんだよね。嘘ついてたし」
ようやく着いた、重すぎ…
「え、嘘?あ、ちょっカイっ」
コウを無視して鍛冶屋に入る。
「ゲルフさん、いる?鉄のお届けものだよ」
「…うん?ああ、カイか、ありがとよ。ちょっとそこに座って待っとってくれ。」
「おっちゃん!俺も居るからな~!」
「この鉄、思ったより重かったんだけど。これなら2回にわけた方が良かったんじゃ……」
「まあ、しゃあないやん?それで、嘘ついてるってどういうことなん?」
「ええ?あ~あれだよ。もうすぐ妹が来るってゆうの」
「…それ、嘘かわからんくない?」
「扉を開けたときにチラッと見えたんだけど、部屋汚かったんだよね。妹さんだけじゃなくて子供まで来るのにさすがにそれはおかしいと思わないかい?」
「今から片付けるんちゃう?」
「もうすぐ夕方だよ?ある程度だけ片付けようとしても明日までには終わらないよ。それに、椅子3つってどう考えてもおかしいでしょ。人は3人しかいないのに椅子だけ合計5個あるんだよ?1つもしくは奇数が嫌だからって2つ買うのが関の山だよ。それに…」
「おうおう、その辺にしてくれねぇか?ほら、判子押しといたぞ。てゆうか、その狼なんだ?お前さんらの従魔か?」
「カイの従魔やで!かっこいいやろ!」
「黒い狼か、男のロマンだな。仲間にしたんなら可愛がってやれよ。」
「当たり前や!」
いや、なんでコウが答えてんの!!
「ほら、冒険者ギルドに報告してきな。次は客として来てくれよな」
「あ、シーナさん。依頼終わりました。」
「あら、じゃあ依頼書を見せてくれる?」
「はい、…てゆうかずっと気になってたんやけどシーナさんだけフレンドリーすぎひん?」
「どうしてそう思うのかしら?」
「だって他の受付嬢さんは皆敬語やもん。」
「ああ、それはね。冒険者ギルドのアルクィン限定だとは思うんだけど、冒険者登録を担当した人だけタメ口で話してOKって規則があってね。」
「ええ?それ、誰得なん?」
「さあ?ギルドマスターが決めたことだからなんとも。ああそうだ、ランクアップしたからバッチを変えないとね。………………………はい、これと交換して。」
少し色が違っていて真ん中に大きくFと書いてある
「それじゃあこれからは討伐依頼を受けれるわよ。…そうだ、常駐依頼なんだけどホーンラビットの角余ってない?今まで狩った魔物も売れるようになるのよ。」
「ああ、それならたくさんあります。………………ええっと、とりあえずこれだけお願いします。」
「あら、たくさん狩ったわね。それじゃあ1本400リビアだから25本でちょうど1万リビアよ。この常駐依頼もクリアにしておくわね。他には何かあるかしら?」
「いや、これで全部だよ。」
「そう、なら…「何でダメなんだ!」あら?」
「うーん。規則としかいいようがないです。」
「僕は怪我をしてもヒーラーだから治せるし戦闘用の魔法も使えるって言ってるじゃないか!」
「ですが、Fランク以上は討伐依頼が有るため2人以上のパーティーを組まないといけないってことになってるんですって。それに、前衛がいないと魔法使いやヒーラーはやっていけませんよ?」
「僕だってパーティーを組みたいけど皆僕の眼を見てパーティーに入れてくれないから仕方ないだろ!!」
「…規則なので。これ以上騒ぐと迷惑になるのでお引き取りください。」
「なんなんだよ!」
白い髪の少年はバンっと音をたてて出ていった。
「気の毒よね。この街では眼が赤い人と一緒にいるとその人と一緒に殺されるって迷信が流れてるからって…「カイ!」」
「…追いかけるなら早くした方がいいよ。どっちに曲がったか分からなくなっちゃうから」
「そう言うと思っとったで!シーナさん、すまんけど俺らもう行くわ!」
あれ、僕も?まあいいや




