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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
アルバード王立高等学院~隣国からの客人~

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偽りの正体

ライは23時間ぶりに体をおこした。その体は怒りで震えていて、自分の髪を掴み痛みを感じるほど引っ張っることによって怒りを抑えようとした。


「アイツのせいで()()()の人生がめちゃくちゃになったんだ…アイツのせいだ…許さない、、ゆるさない…絶対にっ!」


そんなライの悲痛な叫びに応じるかのように黒いナニカがライを取り込もうとする。


「…なんだ、これは、、まさかっ…まずいっ…」


ライは自分の魂を喰いつくそうとしているナニカを必死にとろうとするが黒いナニカはどんどんと広がっていく。


『神域創造』


ライがそう唱えた瞬間、部屋の中の時間だけが音もなく止まったのだった。


カイ視点

「だーかーら、なんでそんなことも…ゴホン、、どこで詰まってるのか分からないんだけど。」


いやまじで。この問題のどこに手詰まる要素があるっていうんだろうか?


「おー、ちゃんと言ったこと守ってんじゃん、カイ。」


「約束っていうのは一度守らなければ信用を失くすと思ってるから、よほどのことがない限りは守るつもりだよ。て言っても、これは僕が自分自身にした約束なんだけどね。」


そう言った途端、酷い頭痛に襲われしゃがみこんで、いや倒れこんでしまった。


なんだこの痛みは…絶対死んだ、、だって車に轢かれた時より痛いもん。


「…ぃたっ、、」


「おい、大丈夫か?カイ!!早く、誰か先生を!!」


そんなカールの言葉を最後に僕は意識を失ったのだった。



暗い場所で目が覚めた。どうやらここはあの世ではないようだ。ふわふわと浮いている思考の中で異質なもの見つけた。


「ライ?なんでここに?」


「…なあ、カイ。信頼していたものに裏切られてもお前は平気でいられるか?」


「…さあね。何かあった?」


「お前が前世であのような目にあったのは元をたどれば万物神レイと創造神ノアのせいだったんだ。そして俺の人生をめちゃくちゃにしたのも奴らのせいだ。」


「それは違うよ。いつか創造神様が言ってたんだ。君が大量殺人鬼になるのを予知して、それを防ぐためにレイを派遣したって。君はレイがいない世界線で、僕はレイがいた世界線で生きていた。そんな君の人生をレイがめちゃくちゃにできようがない。」


「お前こそ何言ってんだ?俺とお前はそもそも別の世界で生きていたんだ。分岐点とかない。神が言った言葉を素直に信じるな。ヤツらは平気で嘘をつく。」


「ライの言っていることが真実だとして、レイと創造神様が僕らの人生をめちゃくちゃにしたってどういうことなの?」


「それを知るにはお前はまだ幼すぎる。」


ならなんでこの話題振ったんだよ。


「あっそ。で、本当になんでここにいるの?」


「ああ…裏切られていたその事実に怒り狂っていたらナニカに乗っ取られた。」


「えっ、、ほんとに?それ結構まずくない?」


「とっさに『神域創造』というスキルを使って俺の部屋を神域にしたんだ。神域では自由に時間を操作できる。だから今俺の体は止まっているが、魂の一部が乗っ取られたままなんだ。ここにあるのは乗っ取られるのを免れた一部の魂だけだ。地上に神域を創るのはかなりグレーな行為。長くは持たない。だから、神域が解除される前に俺を乗っ取った犯人の本体を探し出して殺さないといけない。」


神域創造?神にでもなったんだろうか?


「どれぐらいもつの?」


「3,4年ってとこだろな。まあこれはお前に頼まないから安心しろ。お前よりも適任がいる。」


「そう…ちなみに今の僕の体はどうなってるの?酷い頭痛で倒れたところまでは覚えているんだけど。」


「お前がぶっ倒れた方の頭痛はおそらく俺の魂が何者かに侵略されたからだろうが、それとは別の頭痛がしばらく続くだろう。なんせ一つの体に魂が一つ以上入っているんだからな。」


「…それ、融合しないの?たまにライの記憶とか気持ちが伝わってくるんだけど。」


「そうなのか?俺はお前の気持ちなんて分からないから、お前だけみたいだな。あれだ、、俺は自我が強いからお前と融合しないんじゃないか?」


そんな適当な…


「あっ、言い忘れてたが、俺はお前が見聞きしたことを知ることができる。ライブ中継をテレビで見てる感じだな。お前と頭の中で会話することもできるようになる。カンニングし放題だな。」


カンニングするまでもないだろ…


「ていうか、神域創造なんて使えるなら神なんでしょ?乗っ取りぐらいうまくかわせって。」


「むりむり。神って言ってもまだ卵みたいなものだからな。感情的になったら力を上手く使えないんだ。暴走すれば世界なんてすぐに壊れてしまうから、とりあえず頭を冷やすために体と魂の一部を分離させたってわけ。」


頭冷やすためって…コイツ、まだ静かにキレている気がする。


「まあなんにせよ、状況は大体分かったよ。それと、信頼していたものに裏切られてもお前は平気でいられるかという問いについてだけど、僕はレイに怒ってないよ。レイが過去に何をして僕の人生をめちゃくちゃにしたのか知らないけど、その怒りをなかったことにするくらい、僕はレイに感謝してるんだ。僕は自分の人生全てが無駄だったとは思ってない。前世があったからこそ今の僕があるわけだから。ライが何に気づいてどうしてそんなに怒っているのか僕は知らない。でも、僕らは知ってるでしょう?神様よりも卑劣な行為をする愚か者を。」


「…あぁ、、知っている。知っているとも。」


ライはそう言って真っ赤な瞳を瞼の裏に隠したのだった。

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