武道大会~眠気の正体~
「ライ、急に呼び出すのやめてくれる?おかげで後輩の試合を見れなかったし、アイリスにも余計な心配をかけたかも。」
「そのことについては悪かったと思ってる。ただ、早急に伝えたいことがあってな。」
「ライがそこまで言うならかなり重大な何かが起こったって考えていいんだね?」
「アルバード王立高等学院だったか?そこの生徒として人ならざる者が堂々と侵入していることが分かった。」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「ちょうど一年ほど前にお前が休学になった事件があったろう?その時に教員と生徒の中にその事件を手引きした者がいないか極秘の調査が行われた。その際に2名が捕まりこの件は幕を閉じたんだ。」
「監視カメラもないのによくわかったね。」
「ハルシャ家の当主が現場で不審な魔力を感じたらしいんだ。穢れた魔石を一定時間持っていたらその“穢れ”が体内に入り自分の魔力と融合する。」
だからわかると?
「でも、魔力は見えないよね?お祖父様は勘か何かで分かったんだとは思うけど…お祖父様はあの時僕とずっと一緒にいたんだ。調査には加わっていないはず。その二人、一体だれが見つけたの?」
僕がそう言うとライは、はぁーとおもむろにため息をついた。
「本当にお前は何も教えてもらってないんだな。アイツ…説明を俺に全部丸投げしやがったな…。まあいい。学院長はな、魔力眼の保持者なんだ。」
魔力眼…予知眼と同じく神に与えらし力。
「予知眼と違ってそこまで強くはないんだが、こういう穢れたものを見つける時に役立つからな。それでだ、魔力眼で見つけたのはただの囮。本命はまだお前のとこにいるって話だが、それはまあスルーしておいてくれ。今のところ見つける術がないんでな。俺が動けたら話は別だったんだが…」
「結界をどうやって超えてきたの?あの結界はハルシャ家の二代目がかけた世に二つとしてみない最高傑作の結界だよね?」
「登録されている人間しか入れないってやつだろ?そんなの簡単だ。堂々と登録しやがったんだよ。入学時にな。精神をのっとっても体や魔力は人間のものだから禁忌魔法を使わない限りはばれやしない。ただ、神とのつながりがある人間には違和感を与える。お前の場合はもう少し後かもな。18才になったら俺の言わんとすることの全てが分かるはずだ。」
どうして18才なのか、、聞いても答えてくれなさそうだな…
「ライは本当にいろいろと謎だね。…どうして君はこの世界に来たの?」
「……別に大した理由じゃない。ただ、譲れない一線があっただけだ。もう戻れ、カイ。彼女が呼んでいる。」
その言葉を最後に僕の視界はまたもやぼやけていった。
♢
「ごめん、かなり寝ちゃったみたいだね。」
「ほんとですよ。先輩。」
「げっ…なんで君らまでここにいるんだよ。」
「げっってなんです。アイリス様に頼まれたんですよ。」
だからここにいないのか…
「そのフローレス嬢は今どこに?」
「武術学院の生徒の対応をしてると思います。さっきここに挨拶に来られたんです。だから、扉の外にいると思います。」
リースがそう言うと同時に扉が開く。
「カ…いえ、、ハルシャ卿、起きたんですね。あと5分ほどで始まりますから移動しましょう。」
「そうだね。その前に聞いていい?リースとアレスは勝ったの?」
「…いえ、、負けました。」
「へぇー負けたんだ。じゃ、僕もう行くから。」
「ちょちょっ、ちょっと待ってくださいよ!!他になにか言うことないんですか?お疲れさまとかよく頑張ったなとか、なんで負けたんだとか、、いろいろあるでしょ!!」
いや別に…アップルパイの代わりに訓練に付き合ってあげただけだし、ねえ?
「別に君たちが勝とうが負けようが僕に何の関係が…」
僕の発言はアイリスに口を防がれたことによって続くことを阻止される。
「ハルシャ卿は少し黙っててください。リースにリディガー卿。ハルシャ卿の発言はあまり気にしないでくださいね。こういう人なので。ほら、行きますよ。」
そう言って腕を掴まれる。
「…ねえ、僕何か余計なこと言った?」
「…言ってなかったら口を押えてませんでしたよ。あれ以上あなたを野放しにするともっとやばいこと言いそうだったのでこの件については許してください。」
もっとやばいことってなに??
「それで?今回の試合、勝てそう?」
「今の段階ではなんとも。挨拶に来てくださった武術学院の方々は貴族の方ではありませんでしたがとても礼儀正しい人でした。なのでカイくんとは相性がいいのでは?」
「どうして相手が礼儀正しかったら僕と相性が良くなるの?」
「ものすごい偏見ですが、礼儀正しい人は素直な人が多いと思うんです。そのため姑息な手が使いやすい。つまり騙しやすいってわけです。」
「残念ながら今回は煙玉とか使えないからズルはできないよ。まあ、アレスのように砂を思いっきり顔面に当てれば少しは動揺するかもしれないけどね。」
そんなことを話しながら僕らは会場へと足を踏み入れたのだった。




