甘酸っぱい告白
皆で冒険に行ってから少したち、ライズの夏の風物詩である流星祭の日になった
「なあなあ、今年も流星祭行くやんな?」
「行く行く!去年行けなかった屋台に行って全制覇したいんだ!」
「それ面白そうだな!!俺も混ぜてくれ!」
「俺も行きたい!」
上から順にシドさんエレン、カールだ。こんなだだっ広いライズにある屋台を全制覇なんて無理に決まっているのにどうしてしたがるのか謎である。
「僕も掘り出し物がないか見に行きたいです。」
「それ、僕も行きたいかも…」
ジェノもそういうの好きそうだもんな…
「それは面白そうだな。僕も付き合うよ。カイはどうするんだ?」
「僕は少し一人で回りたいから後で合流するよ。」
エレンの誕生日プレゼントも買わないといけないしな…
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「ふぅ…ここに来てもう一年もたったのか…」
草の上に寝転がって真っ赤に染まった空を見上げながら呟いた。その瞬間どこからか手紙が飛んできて僕の視界を真っ暗にした。
「…ゲルフさんからか…あの人どうやって毎度毎度僕の居場所を完璧に特定するんだろうか…」
そうぼやきながら手紙を開ける。
近々シェナード王国とフラーティア王国、そしてハールーン帝国によって三国会議が執り行われる。出席者は各国の国王とその側近ぐらいの閉鎖的な会議だ。本題だが、ライズのハルシャ家本邸にイシカガライ一行が訪れるそうなんだ。できたらでいいんだが彼と接触して赤目に関する情報を引き出してほしい
同士ゲルフ
まったく無茶を言う…お祖父様が許してくれるだろうか…いや、、ばれなければいいか…
「そんなことより本格的に暗くなる前にみんなを見つけないと…」
ゆっくり上体を起こして周りを見渡す。
「人が多すぎて無理だな。うん、諦めよう。」
それに、、シドさんとの約束もあるしね…
そう思って去年花火を見た場所に向かう。その間に空は暗くなっていく。
町の中心から離れているため人はまったくいなかった。ひっそりと存在していたベンチに座って空を眺める。
この数年でいろいろなことが変わった。嫌いだった青い空は好きになった。悪夢を見ることもほとんどなくなった。心の底から笑えるようになった。
僕をここまで変えてくれた皆には感謝しかない。だから、、優しいウソでもつきたくない。
「あっ、、カイくん!!」
手を振りながらシドさんが走ってやってくる。
「…約束覚えていてくれたんだね。」
「もちろん、覚えていたよ。」
「そう…なら私が今から言うことも予想できるよね?」
「それでもシドさんの口から聞きたいかな。」
「…アタシ、、今もカイくんが好き。もし同じ気持ちだったら、、アタシと、付き合ってほしいな」
「…この一年間たくさん考えた。『恋』とは何か、『愛』とは何か、、『好き』とは何かを。確かに僕はシドさんのことが好きだよ。ただ、その好きはコウやお祖父様のことが好きなのと一緒だったんだ。これはシドさんが僕に抱いている想いとは多分似て非なるもの。だから、その想いには答えることはできない。」
ああ…言ってしまった
シドさんの桃色の瞳からはとめどなく涙が流れていくが僕には止めようがなかった
「ごめん、、ごめんね。」
そう言ってシドさんが僕の側から去っていく。その後ろ姿を僕はただ見ていることしかできなかった。
花火の音が寂しげに鳴り生ぬるい風が僕の頬を撫でた。
彼女がなぜ最後に謝ったのだろうかと、ふと思った。人の感情は複雑極まりなく繊細だ。この後誰かが彼女を慰めてあげるのだろう。そこにばったり出会わないようにもう少しここにいよう
そう思って僕は空を見上げたのだった。
♢
とある馬車の中
「…どうして私の娘を連れていくのです?私より位の高い貴族にも年頃の娘はいると思いますが。」
「仕方ないだろ。俺のことを怖がらない未婚の女はお前の娘ぐらいしかいないんだから。俺に怯えるような存在は外交では役にたたないことは目に見えている。残念ながら役立たずを参加させることができるほどの余裕は今の帝国にはない。」
「それは存じ上げていますが娘のことも少しはお考えください。」
「はいはい、分かってるって。だいたいこの三国会議に出席する帝国のメンバーは非公開だろ。それに守秘義務もある。下手をうたなければバレないはずだ。」
「それはそうですが…」
「そんなことより伯爵に言っておかなければならないことがある。」
「なんでしょう」
「この外交が終わり次第、少し眠りにつく。」
そんな意味不明な言葉に伯爵は首をかしげる。
「それはどういうことですか?」
「思ったより速く呪いが回ってきているんだ。あと数年もつようにしばらく寝ていようと思う。死なないように一日一時間は起きて食事をしたりはするがな。伯爵にはその間の政務等を任せたいと思っている。重要なものはその一時間の内に見るから問題はないはずだ。」
「承知しました。」
「助かる。…あと二日でライズか…はやいな…」
ライはそう言って読んでいた書類にもう一度目を向けた。




