やっぱり起きれない
「なんやったん?」
「ここで野営していいかって訊かれただけだよ」
「いまどきそんな律儀なヤツがいたんだな」
そうなのだ。大半の冒険者はそんなこと訊かずにしれっと近くで野営する。今回みたいなことは滅多にない。なんなら今まで一度もない。絶滅危惧種といっても過言ではないだろう。
「しかもパーティーリーダーが敬語を使ってきてさ…あれじゃあ近いうちに厄介ごとに巻き込まれるんじゃないかな」
「もしかしてコウみたいなヤツなのか?」
「そうそう。」
「…なんやねん、俺みたいなやつって」
「群を抜いてお人よしで困っている人を見たら思わず助けてしまうタイプの人ってこと。ああ、、あと、簡単に人を信じてしまうも入れておこうかな」
「そんな人がパーティーのリーダーで大丈夫なんですか?」
「パーティーメンバーがしっかりしていたらね。一応忠告はしておいたけども…。あっ、そうだ、、言うの忘れてたけど、うちのリーダーはコウだからね。」
「「えっ?」」
ユウリとエレンの声が重なりあう。
「カイじゃなかったのか?!」
「なっ、なんでコウさんなんですか?」
「ええーなんでだっけ?」
「カイの名前が公になったらあかんかもしれへんってことで俺になったんや。なあ、イリアス。」
「いや、あの時君たちがこそこそと何か話し合っているのは見ていたがその内容は知らない。」
「せやったっけ?」
「まあとりあえず僕らのリーダーがコウだと分かっていたらいいよ。」
「…今からでも変わるで?」
「いや、いいよ。めんどくさそうだし。」
あの時リーダーをコウに押し付けたのも半分それが理由だし。まあそれをコウに言ったら怒られそうだから言わないけど。
「甲羅集めは無事終わったから明日はハイゴブリン狩りに行こうと思うけど何か意見がある人は手上げて。」
そう言うとユウリが控え目に手をあげた。頷いて話すように促す。
「ゴブリン狩りはここから少し行った先にあるブルージュの森でしますよね?」
「うん、そのつもりだよ。この平原にはハイゴブリンはいないからね。」
「その…できたらでいいんですけど…ブルージュの森に生えているヘルシア草が欲しいんです。」
「ヘルシア草?確か下級の魔力回復ポーションの材料だよね?」
「はい。この前カイさんが魔力回復ポーションの不味さをどうにかしてほしいって言っていたのでまず下級で研究してみようと思いまして。ジェノアさんも協力してくれるみたいなので…」
そう、ポーションの類は物凄く不味い。しかも魔力回復ポーションはその中でも群を抜いて不味い。
ちなみに下級は魔力を100、中級は魔力を1000、上級は魔力を10000回復する。上級の上にはいくつかあるが市場にはあまり出回ってないので割愛させてもらおう。
下級であってもおよそ1万リビアほどする。上級ポーションにいたっては一本100万リビアする。味はどれも最悪である。
「ヘルシア草やったらこの前図鑑で見たで。ヘルシン草の群生にひっそりと生えてるやつやんな?たしか葉っぱが三つなのがヘルシン草で四つなのがヘルシア草でめっちゃ似てるから見つけにくいって書いとったで。」
…うん?それって日本でいう三つ葉のクローバーと四つ葉のクローバーなのでは??
「どうせ時間なら余るほどあるからそれぐらい見つけてあげるよ。」
「いつもありがとうございます!」
「いいよ。ユウリのおかげでみんな植物に詳しくなったから。エレンも毒キノコを触らなくなったし。」
「…一言よけいだよ」
「ほんとのことじゃんか」
そう言ってみんなで笑う。寝るタイミングがなくなるぐらいテントの中は笑いが包み込むのだった。
♢
「&$C%!k$#イ!かーい!カイ!!」
「…なに…ふわあああ」
「のんきにあくびしとんちゃうで。もう朝ごはん出来てるからそろそろ起きて。」
「…みんな…起きてるの?」
「おん。カイが最後や。」
そう言ってコウは僕の簡易ベッドに腰をおろす。
「ユウリが来た当初は見栄はって起きとったのに全然続かんかったな。」
「なんかね、僕は人よりも寝ないと頭が回復しないみたいなんだ。僕もよくわかってないんだけどね。」
「学院の時はどうしてたん?今は一人部屋なんやろ?」
「遅刻してたよ。毎回一限目には絶対間に合わないから大体二限目から参加してた。テストで結果残せばあまり咎められなかったからね。」
「そろそろ頭回ってきたんちゃう?朝ごはん食べに行くで。」
「はーい」
そう言ってテントから出るとエレンたちが例のパーティーと仲良くご飯を食べていた。
「…で……から、、あっ、カイ!ようやく起きたんだな。」
「うん。ところで何をそんなに熱弁してたの?」
「ああ、コイツらに騙してくる大人の特徴を教えていたんだ。俺は元とはいえ商人の子どもだったからな。」
「ふーん、、そう。」
敵意などを感じ取ることができる『真眼』を持っているエレンならコツなんてなくても見分けられると思うんだけどな
そんなことを考えながら目玉焼きを口の中に入れたのだった。




