久しぶりに冒険へ
それからあっという間に半年がたち二度目の夏休みが訪れた。飛び級にも成功し僕とフローレス嬢は来学期から中級Ⅱのクラスへと進級することとなった。ハミルとジェノは残念ながらついこの前の飛び級試験に合格できなかったため来学期は中級Ⅰクラスのままとなった。
殿下は卒業し今は次期国王として王宮でいろいろと教わっているらしい。なんでそんなことを知っているのかというと度々殿下から泣き言が綴られた手紙が届くからである。
そんなことはさておき、
一年前の夏休み同様僕の家には何人かが遊びに来ている。シドさんとカールとジェノだ。ブライアン卿は研究で忙しいため泣く泣く来ることが出来なかった。もちろんハミルもこの家にいる。
「かーい、そんなとこで何してんの?」
「…何してるように見える?」
正直言って何もしていない。ただ木の下に寝転がってボーっとしているだけである。改めて考えると生産性ないな、これ。
「うーん、新しい技を考えてるとか??」
なんのだよ、なんの。僕、そんなのしたことあったっけ…
「コウはさ、夏休み何したい?」
「俺、久しぶりにみんなで依頼こなしたい!カイ抜きでやるのはどうかと思ってたからまだ一回もDランクの依頼受けてへんねん。」
「エレンのパーティー登録はもう済んだの?」
「やろうと思ってんけどメンバー全員そろってないとあかんらしくてまだできてへんねん。」
そりゃ僕の責任だな。何かとめんどくさがって外出してなかったからな…
「なら早くやらないとね。あっ、御祖父様だ。」
手を振ってこちらに呼ぶ。
「二人ともこんなところで何してるんだ?」
「この夏休み何するか話してたんだ。Dランクの依頼を受けたいんだけどダメ?」
「それは構わないがカイ達の周辺に護衛をおくことになるが大丈夫か?」
「護衛?騎士の人たちがつくん?」
「いや、騎士じゃなくて影の者だ。カイ達が危険に陥ったと判断したり『助けて』と一言いえば助けてくれるだろう。そんなことは起きないと思うが一応な。何日か行く予定なのか?」
「一度も依頼を見てないから何とも言えないけど三日~五日ぐらいかな。詳細分かったら影を遣わせて報告させるよ。」
まあそんなことしなくても勝手に密告されるんだろうけど。
「わかった。今から行くのか?」
「うん、そのつもり。」
「ユウリはどうするんだ?」
「流石に連れて行くのは気が引けるしギルドから怒られそうだから置いていくつもり。」
「そうか。今エレンは訓練場、イリアスは図書室いると思うぞ。」
「了解。コウはエレンの方よろしく。僕はイリアスの方へ行くよ。」
そう言って別れた。
♢
㏌図書館
「おーい、イリアス!あっユウリもいる!」
「ちょ、カイ、ここ図書室だから声をもう少し小さくしてくれ。」
って言ってもここには僕ら以外いないんだけど…
「今からギルドに行って依頼を確認したいんだけど行く?ユウリは何か欲しい素材とかある?取ってきてあげるかも。」
「今から?僕は構わないが急すぎないか?」
「…コウが提案したから僕に言われてもネ」
「えっと、カイさん達はどこに行かれるんですか?」
「霞の森は個人的に行きたくないからアミール草原になると思うよ。」
「僕も連れて行ってもらえませんか?おとなしくしておくので…」
「分かってると思うけどそれなりに危険なんだ。」
「もちろん承知してます。それでも行きたいんです!」
僕の方が身長が高いので仕方ないちゃないのだが上目遣いは本当にやめてほしい。なんでも頷きそうになる。
「…レインを連れて行けば何とかなるかな…?」
…結局OKしてしまったのは言うまでもない。
♢
Dランク ハイゴブリンの討伐 証明部位:魔石
最低15匹 1体1500リビア 10日以内
(魔石は1つ1000リビアで引き取れます)
Dランク 巨大亀の甲羅×10枚 5日以内
1枚3000リビア
※傷がついている場合価格が下がる可能性があります。
※依頼分以上は買い取りません
「どう?」
「ええんちゃう。なあ、イリアス?」
「うん、僕もそれでいいと思う。」
「…ねぇ、なんか視線感じない?僕の気のせいかな?」
「気のせいちゃうやろな。俺も感じんもん。」
「多分カイがつけてるその緑の宝石が原因だと思う。」
「ああこれか、、んじゃ外そ」
いつも僕は2つの首飾りを持ち歩いている。一つは母親から貰ったもの、もう一つはライから貰ったものだ。今外したのは前者だ。
「この二つの依頼を受けたいんだけど。」
「はっ、はい。この二つですね。了解しました。」
「あと、エレンのパーティー登録も行いたいんだけど今いいかな?」
「はっ、はい、もちろんデス。」
なんかぎこちない気がするけどまっ僕には関係ないしいっか…
「えっと、、最近盗賊がアミール草原付近で目撃されているので気を付けてくださいね。」
「わかった、ありがとう。じゃあみんな早く行こうか」
エレンから殺気を感じたのはおそらく気のせいではない。
何もなければいいがと思いながら久しぶりの冒険が始まったのだった。




