告白
部屋に着いてから少し黙りこくって今後のことを考えていると、コウがチラチラと僕の方を見てきた。
「カイどないしたん?記事受け取ってから変やで?」
「……そんなに変?」
「うん。いつもと全然ちゃう。なんかそわそわしてる。」
うーん、なんて説明しようか…。実は異世界から転生しましたなんて誰が信じるんだよ。
適当にごまかすか?いや、でもな……
コウに嘘はつきたくない。例えそれで望まない結果になったとしても…。
人間誰しも腹をくくらないといけない時があるんだ。
「…実は信じられないと思うんだけど、僕にはこことは違う世界の記憶があるんだ。」
「違う世界?そういえば、伝承でたまに別世界で生きていた前世の記憶を持っている導かれし人っていう人がおるって言い伝えられとるけど、ほんまにおってんな。」
「…信じてくれるんだね。僕が言うのもなんだけどそんなに簡単に信じちゃダメだと思うよ?」
なんか将来詐欺師に騙されそうな匂いがするが気のせいだろうか?
「カイやからやで。俺、カイが真面目な話で嘘つかんの知ってるからな。それに俺と同い年のくせにどこか大人びすぎていると思っとってん。」
そう言われると少し照れる
「取り繕ろうともしてなかったからね…。それで、この表紙を見て欲しいんだけどここに書かれた人、僕知ってるんだ。」
そう言って先ほど貰った記事をコウに渡す。
「確かハールーン帝国が、スタンピードの多発による魔物の活発化を警戒してっていう理由で召還した勇者やんな?」
「本当のことはわからないけど表向きにはそうだよ。でも問題はそこじゃない。問題なのは彼らな僕の前世での知り合いだということなんだ。」
そう言うと、コウは少し首をかしげた。
「同じ世界におったってこと?知り合いやったらエエことちゃうん?」
首を左右に振り違うことを言外で伝える。
「普通の知り合いなら良かったんだけど、僕は彼らに日常的に虐められていてね…。なるべく会いたくないんだ。」
「虐められてた?!!そら会いたないな。勇者ってことは潜在能力が普通の人よりあるやろうし、強いスキルだって持っとるやろうから敵対するわけにもいかんしな…。(コソッ そいつら絶対にぶん殴ったろ…」
「うん?まあ、そういうわけでアルクィンにはDランクくらいまで上げたら去りたいんだけど、どうかな?」
「エエよ別に、てか今すぐ移動せんでも大丈夫なん?」
「うん。とりあえず魔物を狩る訓練もしときたいし、この家の地下も整理したいしね。」
「なるほどな。じゃあ俺らの目標は、とりあえずハールーン帝国に注意しながらランク上げるってことやな。了解した。とりあえず飯食わん?腹減ったわ」
「そうだね。コウも手伝ってくれる?」
「もちろんエエで!」
あっ、手伝ってはくれるんだ…
結論を言うとやはり僕よりも断然コウの方が料理が上手かった。
どこまで上手くできるのかは知らなかったがここまでとは思わなかった。
「これは、、料理担当はコウに決まりだね…」
「ええ…。俺カイの作った焼きリンゴもっかい食べたい~。」
ああ、だいぶ前にこっそり作ったあれか…
「君の作った焼きリンゴには敵わないと思うけど?」
「例えそれでもエエねん。カイが作る料理の味はカイにしか出されへんから、俺には似せることしかでけへんよ。」
似せることができるということには驚きを隠せない。
「それでいいならまた今度に作って上げるよ。でも、今日は材料ないから無理だよ。」
「わかった。あ、カイ魔物図鑑持ってる?今夜読むわ。」
偉い…
「もちろん。はい、どうぞ。僕は地下に行って鑑定の練習しとくから何かあったら、いやなくてもいいけど、来てね。」
「了解!お互い頑張ろな。」
そうして僕は地獄の鑑定修行へと行くのであった。




