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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
アルバード王立高等学院~新しい風~

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162/312

特別試験~開戦~

今更ながら決勝戦のルールを簡単に説明しよう


致命傷を与えるような攻撃、手や足の欠損がおきるような攻撃、心臓や首を狙った攻撃はもちろん禁止されていて破った場合は退学となり、また悪質と判断された場合は最悪奴隷落ちもありうる。


ちなみに剣は真剣を使うので例年死にかけてヒーラーのもとに担ぎ込まれる人が一定数いるらしい。

まあ欠損さえしなければ大抵は治してくれるみたいだけど…


勝利条件は大体は相手が降参するか気絶するかの二択だが、まれに死にかけているのに気絶せずなおかつ降参もしない人がいるのでその人限定で審判が判断する時がある。…まあ本当に稀らしいが。


ポーションは原則自作以外は禁止で、毒の類は自作も禁止らしい。煙玉などの無害なものはokだ。



「…ハルシャ卿は余裕そうに見えますね。」


「…それ、新手の嫌味かな?」


「いえ、単純にすごいなと。私、期待されるとダメなんです。」


「それはまた何で?」


そう聞いて少し後悔をした。誰だって踏み込んでほしくない領域(かこ)の一つや二つを持っているものだ。…僕のように


そんな僕の心を知ってか知らないでかアイリスは何かを懐かしむように目を閉じた


()()()の私の両親は私に何も期待していませんでした。そんな生活をずっと送ってきたからか期待されることがとても恐ろしく感じてしまうんです。」


「人というのは勝手に期待して勝手に失望するものだよ。失望したからって終わる関係ならない方がいいと思う。ちなみに僕は君に期待してる。でも、だからといって君がどんな失敗をしようと何も思わないよ。だっていつもの君を知っているから。」


「…やはり、ハルシャ卿は強いですね」


「ううん、そんなことないよ。僕も昔の両親はフローレス嬢と同じで無関心な人達だった。でも、この世界で温かい人達にたくさん出会って気づいたんだ。万人に認められなくても、失望されてもいいって。本当に僕のことを分かってくれている人が数人いるだけでいいんじゃないかな?」


アイリスは少し考える素振りをした後吹っ切れたように微笑んだ。


「たしかに言われてみればそうですね。ありがとうございます、ハルシャ卿。」


そうこうしている内に出番がやってきた。


「それでは!スタートです!!!!」


合図と共にフィールドの中に入る。焦げ臭い匂いが鼻を刺す。前試合でほぼ全域が火の海となったため焦げて真っ黒になった木々がいろいろなところに散乱していた。


「…見晴らしがいいね。これじゃすぐに見つかってしまう。アイリス、魔法に関しては任せたよ」


そう言ってご丁寧にも僕らを待っていてくれている相手のところまで全速力で走った。


僕が時間を稼ぎその間にアイリスが競技場にある川全体に魔力を注ぎ込む。一旦魔力を注がれた水は操りやすくなるからだ。今回の対戦相手であるバルスさんは炎の使い手として有名なので消火する手段が必要なのだ。


「…っ、、見えた!」


足に固定していた短剣を取りいつきても大丈夫なように構えながら走る。


相手の得物も短剣。…いけるか?いや、いくしかない!


ガキンという鈍い音がなる。


年上であるため力は向こうの方が上であると判断して一旦距離をとる。


「初めまして、ハルシャ卿。俺はバルス。君の従兄弟の友人さ。」


ガサツそうに見える振る舞いの奥には冷静な瞳が宿っていた。


「…こちらこそ初めまして。こんな出会いかたはしたくなかったんですけどね。」


「そりゃ俺もだ。ただ、ルシアンがそうしてくれなかったけどな。」


「兄さんはなんて言ってました?」


「おいおい、それを言ったら俺は裏切り者になるぜ?」


「一生に一度ぐらい裏切り者になってみたくないですか?」


「ないない。裏切ったら最後俺の首は物理的に飛ぶ。」


そう言って指で首を切る動作をする。


「そうですか。なら、そろそろやりますか?殺しあいを。」


「…一応言っておくが殺したらダメだぞ。」


「…もちろん知ってますよ。言ってみたかっただけです。」


それに、既に十分すぎるほど時間を稼げた。


「そうか、ならそろそろ始めるか…炎の輪(ファイアーリング)!!」


僕の周りを炎が囲む。


「…へぇ、慌てないんだな。」


「火よりも怖いものを知っているってだけです。」


そう言って水魔法で自分の体を多いながら火から出る。


火を消さなかったのは消したところでまたつけられるだけの不毛な戦いになるからだ。


それに、ここはもう燃やされていて燃え移りそうなものも周りにはない。


「ああそれと、僕以外にもう一人いるってこと、まさか忘れてはいませんよね?」


そう言って僕はまだ燃えていなかった木の上に飛び乗ったのだった。

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