全ての始まり
6/6 19:01に訂正しました
「おい後藤、何かわかったか?」
そう言いながら中年の男がタバコを手にゆっくりと後藤の元へ近づく。
「橋本先輩、どこ行ってたんすか?くそ忙しいっていうのに…被害者の身元は分かりましたよ。○○高校の生徒のようです。今は被害者を轢いたと思われる車を全力で追跡中です。」
後藤はぶつくさと文句を言いながらも状況をまとめあげたノートを橋本に渡す。橋本はそれをちらっと見た後すぐにノートを開けたまま足元に転がっている遺体を見下ろした。
「そうか。…にしてもこの御遺体、妙だな。」
「…ああ、悲惨な死に方だというのに笑っているからですか?」
そう言って後藤はまじまじと四肢が粉砕している遺体を見つめる。その遺体の顔は嬉しそうに嗤っていた。
「ああ。俺はこんな死体を今まで見た試しがない。」
橋本は真剣な表情でノートとにらめっこをしながらそう答えるが
「…そっすか。」
と後藤は興味なさげに呟く。
そうしていると誰かに操られたかのように後藤と橋本は遺体から眼をそらし揃って後ろを向いた。
その時、青い蝶が一匹死体から飛びだし空高くに舞い上がった。
もちろん、それを見たものはおらず、その蝶の行き先を知る者も誰一人としていなかった。
♢
白い空間には銀髪の男と金髪の男のが2人が並々ならぬオーラを放って仕事をしていた。
長い年月もの間特に何も起きず銀髪の男が世界の管理をして金髪の男がそれを補佐していた。
しかしこの日はいつもと少し違ったことがおきた。いるはずのない魂が男達の元に浮かび上がってきたのだ。
銀髪の男はそれを見つけ、少し顔を歪ませた。
「うん?なんでこんな所に魂がいるんだ?おい、お前まさかまたミスったんじゃないだろうな?」
そう告げる銀髪の男に金髪の男が物凄い勢いで首をふる。
「そんな~違いますよ~。さすがに酷くないですか?創造主様」
金髪の男がそう胡散臭く答えると、銀髪の男こと創造主は少し疑いの眼差しを向けながら言葉を続けた。
「前科があるからな。ふむ、この魂どうするべきか。」
創造主は少し悩む素振りを見せながら金髪の男にそう問いかけた。
「もうこの世界に転生させたらどうです?」
金髪の男は待っていましたと言わんばかりそう答える。
「それもアリだな。まだ未練が残っているようだし。…では送ろうか。君の次の人生に幸あらんことを。」
創造主がそう告げた途端、パァーっと光った魂は彼らの近くにあった世界へと吸い込まれていった。
創造主はそれを見届けた後、金髪の男の方を向いた。
「で、いつまでサボっているんだ?」
「なっ、なんのことですか!」
まるで全てお見通しだと言うような創造主の言葉に金髪の男は少し慌てて答える
「この件についての始末書2000枚。さっさとやってこい!」
創造主がそう言うと金髪の男は慌ててどこかに行ってしまった。
「さて、彼を見守るとするか。十中八九アイツのせいだろうし。」
創造主は誰かに聞こえるようにそう言って水晶を取り出し、先ほど送り出した魂の行く末を見守る準備をした。