月と鮫
鮫牙対蜜柑!
見事に氷塔を倒して先に決勝へと駒を進めたのは剣也だった
それを控え室で見ていた鮫牙は先を越されてしまったと思うと同時に嬉しそうな笑みを浮かべる
その理由はもちろん彼が決勝まで残ったという事であり戦える機会が出来たという事だった
(これでアイツは約束を守った事になる・・・後は俺がお前と同じ舞台に立てばいいだけだ・・・!)
そう・・・剣也はあの時の約束を守って決勝というステージに足を進めた
残るは鮫牙が蜜柑を倒して決勝に進むだけなのだが彼女もそんな簡単に負けるつもりはない
いや・・・正確に言うのならば彼女はむしろ鮫牙に対して自分が勝つと考えていた
もちろんその自信は別に根拠がないものではなくちゃんとした理由があってのものだった
(彼のGATはあくまで接近戦を得意としている機体・・・それに比べて私の月兎は遠距離が得意
しかも相手のGATよりもスピードは上・・・つまり距離を取って戦う事が出来る・・・!)
彼女の自信がある理由は鮫牙のジョーズと自分の月兎との相性の良さにあった
ジョーズが近距離での戦いに強いのに対して月兎は弓での遠距離での強さを持っており
更にはスピードに関しても月兎の方が上なので鮫牙が距離を詰めれる事はない
つまり二人が戦うことになれば蜜柑の方が一方的に攻撃出来てしまうという事なのだ
それが分かっているからこそ彼女はこの後の準決勝に対して勝利する自信があった
しかし同時に彼はどうやってこの不利な状況から勝利するつもりなのかという事も気になっていた
確かに有利な条件で戦えるのは蜜柑の方なのだがそれはあくまでも条件だけの話であり
戦い方や場所によってはその条件による有利性も無くなってしまう可能性があるのだ
だからこそ鮫牙がその作戦についてを考えてないはずがないと蜜柑は考えており
それが分からない限りは絶対に慢心も油断もしてはいけないと彼の事を見ていた
(・・・やっぱり奴はそこまでの油断をするわけがないか・・・まぁいい・・・
どちらにしてもまずはどんなフィールドで戦うのかを確かめてから仕掛ければ問題ない)
そして鮫牙としてはどうやら蜜柑が自分の優位さに気づいてそのまま油断して欲しいと考えていたようだが
予想していた通り、彼女に慢心や油断などというものは存在せず自分の事をじっくり観察していた
しかしこれは鮫牙にとっては予想通りの事でしかないので特別問題になる事はなかった
『バトルスタジアムの準備が整いました。両選手はメインステージの前まで来てください』
『さぁさぁいよいよこれで決勝戦に進む最後の枠が決まります!その枠を勝ち取るのはどちらかになるのか!?
それでは選手に入場してもらいましょう!まずはこの方!その動きはまさに全国クラス!
その圧倒的な実力であらゆる敵を薙ぎ倒してきた天才!鮫牙選手!!』
司会のお姉さんに紹介されて鮫牙はメインステージの上に上がると大きな歓声が上がる
『対するはどんな状況でも落ち着いて対処しそのスピードはおそらく大会最速!
そして弓の腕前はまさに狩人の如し!クールビューティースナイパー!月白選手!!』
そして蜜柑も同じくメインステージに上がると観客席から清志郎達の応援する声が聞こえてきた
会場は剣也達の戦いで今まで以上に盛り上がっており鮫牙達も真剣な顔で火花を散らしていた
そのまま二人は司会の指示に従ってGATをセットするとバトルが始まる合図を待つ
『それでは皆様ご一緒に!GATバトル・・・ファイト!』
試合が開始されると二人のGATが戦うバトルフィールドは市街地だったのだが問題は天候だった
「これは嵐!?あれじゃあまともに戦うなんて・・・!いやそれだけじゃない・・・!」
「ええ・・・蜜柑の武器は弓・・・この嵐の中じゃ間違いなくまともには飛んでいかない・・・!」
なんと二人が戦う市街地の天候は嵐になっており二体のGATは飛ばされないようにするので精一杯だった
とても戦うどころではないが最も厄介なのは蜜柑の有利だった条件が嵐で無くなってしまった点だ
本人もまさかここで運要素が絡んでくるとは思っていなかったがまともに動けないのは相手も同じ
だからこそまだ勝機は十分に残されていると判断していたが、どうやらそうでもないようだ
「悪いが・・・この程度の事で俺が止まると思ったら大間違いだ・・・!」
なんとジョーズは背中に取り付けられているスクリューを回転させる事でこの嵐の中を突き進んでいた
流石に最速を出しているとは言えないがそれでもまともに動けない月兎よりも早く
このままでは確実に負けてしまうと蜜柑は急いで対策を考えているとこの嵐の所為でビルが倒壊
しかもその倒壊したビルが丁度、二人に向かって落下してきておりこのままでは仲良く下敷きになってしまう
「チィ!本当に厄介な天候だな!だが・・・悪天候の中での戦いなら慣れているんだよ・・・!」
ジョーズは自分に落ちてきた瓦礫に向かって飛んでいくとそれを見事に両断してみせた
蜜柑もそれに乗じて自分に飛んでくる瓦礫を狙撃し逆にその粉々になった破片を目眩しにして姿を消した
「・・・逃げられたか・・・だがこの天候の中では奴の武器は封じられたも同然・・・勝負は・・・」
(・・・彼にまともなダメージを与えるとしたらもう・・・接近戦しかない・・・!)
(まずいな・・・この天候の中で蜜柑がまともにダメージを与える為には接近戦しかない・・・
だが接近戦に関して・・・鮫牙に勝てるような実力は・・・おそらく持っていない・・・!!)
控え室から試合の様子を見ていた剣也も蜜柑の方がかなり追い詰められていると考えており
ここから勝つ為には自分にとって圧倒的に不利な条件である接近戦で鮫牙に勝つしかない
しかしそれは現実的に考えても不可能な事でありおそらくそれは本人も理解しているだろう
だからこそ彼女は鮫牙に対しての策を考えるのだが問題となってくるのはやはりこの天候だった
(いくら自分が有利になるように動いたとしてもこの天気が邪魔をする・・・!
たとえ一瞬であったとしても彼ならその一瞬で瞬時に対応出来てしまう・・・
つまり・・・私が勝つ為には彼に対して絶対に隙を見せずに攻撃する以外に選択肢は・・・ない・・・!)
それはおそらく氷夜がやったマグマを利用する作戦よりも難しい事であり
何よりも問題なのは現状の蜜柑からはその状況になる為の作戦が思い付かない事だった
それほどまでに彼女は追い詰められておりそれを煽るかのように鮫牙が徐々に近づいてきていた
(逃げた場所がバレてる・・・この天候だから逃げる場所は限定されているから・・・
となると・・・もうあまり時間は残されていない・・・!こうなったら・・・勝負に出る・・・!)
蜜柑は策はないがどうせやられるのならば相打ちを覚悟で鮫牙に挑む事にした
そして彼の前に出ると鮫牙は自ら姿を出すとは思っていなかったようで驚きの声を漏らしていた
「ほう?まさか自ら姿を現すとはな・・・しかもその目・・・勝つ事を諦めていないという事か・・・!」
彼女の目を見てまだ勝機を捨てたわけではないと判断した鮫牙は最大限に警戒する
それは蜜柑を過小評価していないという表れでもあり同時に全力で彼女を倒すという意思表示でもあった
おそらくは彼女もそれを理解したからなのかその心には素直に感謝の気持ちが出てきていた
(・・・まともに勝負してくれるのは正直、ありがたい・・・もう今の私にはこれ以外の策はない・・・!)
そう・・・実は蜜柑にはこの状況を打破する為の作戦がたった一つではあるが存在していた
そしてその為には鮫牙が自分に対して全く油断をせず警戒する事こそが必要不可欠だった
(残りは私の運が強いか・・・それとも彼の運の方が強いか・・・賭けの勝負・・・!)
蜜柑はまさしく最後の勝負と言わんばかりに鮫牙に突っ込んでいき彼も迎え撃とうと武器を構える
そして両者がまさに後一歩でお互いの武器が命中する距離まで近づいた瞬間
「・・・今!!」
「!?」
蜜柑は何故かジョーズに向かってではなく上空に向かって矢を放った
その突発的な行動に鮫牙も驚かされたがすぐにその理由が分かる事にもなった
何故ならばその矢が放たれた直後、雷が落ちて先ほどの矢に反射し二体のGATを捉えたからだ
流石の彼もこんな自爆に近い作戦までは予想していなかったようで回避する事は出来ず
両機は完全に雷を受けて所々に火花を散らしながらその動きを停止させた
(まさか月白さんがあんな作戦に出るなんて・・・!まさにこれは賭けだ・・・!)
そう・・・このままでは間違いなく引き分けとして認定されてしまうので
どちらかが先に動かなければならないのだが問題はどちらの方がダメージが少ないか
月兎の方が先に動けばこの作戦は見事に成功となるのだがもしもジョーズの方が先に動いてしまったら・・・
そして・・・そんな不安を現実に示すかのように先に動き出したのは他でもない・・・ジョーズの方だった
「そんな・・・!アイツの捨て身の作戦は・・・失敗したの・・・!?」
「・・・!いや・・・どうやらまだ勝負は終わってないみたいだ・・・!」
しかしどうやら月兎の方も稼働しているようでまだ勝負は終わりを迎えていなかった
「ふっ・・・お互いに運が強かったようだな・・・!だが・・・!ここから先は実力の勝負だ!」
「・・・いいえ・・・残念だけどこの勝負は私の負け・・・運がなかったのは私の方・・・」
鮫牙は何を言っているのか理解出来なかったが彼女の月兎を見てその言葉の意味を理解した
そう・・・先ほどの雷の一撃で月兎の片腕が機能を停止してしまったのだ
両腕を使わなくてはいけない弓を持つGATにとってこれはもはや致命傷
つまり・・・蜜柑はもう・・・戦う術を失ってしまったという事だった
そしてその事を理解したバトルシステムが無情にも機械音でバトル終了の音を鳴らす
『バトルエンド!勝者・国崎選手!!』
(後一歩・・・届かなかった・・・)
いよいよ大会も最終局面!
果たして勝つのは剣也か!?それとも鮫牙か!?




