勝利への意地
今回で二人の戦いが決着する!
氷塔の一撃により大きく空へと殴り飛ばされるヤマトを見て誰しもが氷塔が勝ったと思い込んでいた
しかしたった一人・・・ヤマトに攻撃した氷塔だけは自分の勝利ではない事を理解していた
(・・・やられた・・・!今の攻撃・・・手応えがなかった・・・!)
その理由は今の一撃に対して倒したというだけの威力がなくそしてもう一つの理由が自分の武器にあった
彼の武器はヤマトに攻撃を当てる前に打ち返したマグマのせいで若干ではあるが融解していたのだ
それにより当たりどころが変わってしまい結果として今の手応えのない一撃になってしまった
「あっぶねぇ〜・・・マジで今の一撃はやられたかと思った〜・・・」
そして今の一撃を耐え切ったヤマトは華麗に空中で体勢を立て直し着地を決めた
その様子を見て剣也を応援していた全員が安堵の声を漏らすと同時に試合の展開が読めなくなっていた
(確かに今の一撃でやられなかったけど・・・おそらくヤマトは相当のダメージを受けたはず・・・!
こうなってくるともう両者の間に強さの差なんてない・・・!後は・・・力で制した方が勝つ・・・!)
清志郎の考えている通り、先ほどの一撃はヤマトに対してかなりのダメージを与えているのは事実であり
このまま戦ってもじわじわと削られて剣也が敗北するのは目に見えているだろう
となれば残された方法は氷塔に攻撃などをされる前に自分が攻めて相手に攻撃させない事
つまりこの先の戦いは文字通り力と力のぶつかり合いになると彼は予想していた
しかしそんな中で彼らの戦いをよく観察していた鮫牙だけは清志郎の予想と違っていた
(アイツ・・・さっきの武器でマグマで打ち返すなんてした代償だろうな・・・まともに使えなくなってる
それに比べて剣也の武器はそんじょそこらの武器と違うのか全く損傷が見られない・・・
つまり・・・さっきの一撃が正真正銘・・・アイツにとっての渾身の一撃だったってわけだ・・・
ここから先・・・おそらくは剣也の一方的な試合運びになりそうだな・・・)
そう・・・実を言うと条件に関しては氷塔の方が部が悪く、負ける可能性があったのだ
その理由は他でもない剣也を仕留められなかった武器の破損だった
もちろん破損に関しては別に使えないというほど激しいものではないのだが問題は剣也の方
彼の武器に関しては氷塔と同じようにマグマを斬り払ったにも関わらずどこも損傷していない
つまりもしもお互いの武器がぶつかり合えば損傷している氷塔の武器が先に壊れてしまうのだ
そうなってしまえばもはや氷塔に攻撃の術はなく後は一方的にやられるのを待つだけになるだろう
(かといって攻撃しなければ向こうが一方的に攻めてくる・・・つまりどう転んだとしても・・・氷塔の不利)
そしてそれは戦っている氷塔自身もよく理解している事であり自分の武器を見て己の勝利がない事を確信していた
しかしそれは武器が壊れたからというものあるのだが一番の理由は先ほどの攻撃を受け切られた事だった
あれはおそらく氷塔が出せる全力の中で最も良い選択肢だったのだが剣也はそれを受け切った
つまりもう氷塔にはあれを超えるだけの戦いをする事は出来ないと言う事だ
それを理解してしまったからなのか氷塔の目にはもう闘志は宿っておらず完全に負けを悟った顔をしていた
(・・・もう・・・ここから巻き返すだけの策は俺にはない・・・
ここまで完璧な敗北をしてしまっては認めるしかないな・・・お前の方が強いという事を・・・
だが・・・これだけの戦いを出来ただけで俺は満足だ・・・ああ・・・満足だ・・・)
氷塔は全力を出し切った今、後はもう彼にやられるだけだと思って構えてすらいなかった
するとその事に対して誰よりも早く気がついて叫んだのは他でもない律矢だった
「何を諦めているんだ君は!?私の知っている氷塔はたとえ負けると分かっていても勝負を捨てるような男じゃない!
たとえどんな強敵であろうと諦めずそれこそ死ぬ物狂いで強くなろうとするような男だ!
分かったら立て!立って武器を構えろ!!そして前のめりに当たって砕けるんだ!!」
「・・・律矢・・・ああ・・・そうだ・・・!そうだったな!俺はいつだって前のめりに倒れる男だ!!」
彼の言葉を聞いて完全に闘志を取り戻した氷塔はボロボロになっている金棒を構える
その様子を見てどうやら吹っ切れたようだと剣也も笑みを浮かべながら同じく武器を構える
「ああ・・・やっぱりバトルはこうじゃないと面白くないよな!?氷塔!!」
「その通りだ!残念ながら俺にはもうお前を倒す為の作戦はない!だから・・・馬鹿みたいに真正面からぶつかる!」
二人はもはや完全に作戦などなく真正面からのぶつかり合いを披露していた
しかもその接近戦は最初の頃に行われていたものよりも更に洗練さが増しており
その場にいたほとんどの人間が二人の戦いに魅了され大きな声援となって二人を応援していた
(凄い・・・!凄いよ二人共・・・!こんなに会場を盛り上げるなんて・・・!!)
その様子を見ていた清志郎はバトルの勝敗など関係なく二人の事を凄いと高く評価していた
それは実力だけではなくこの場にいた全員を虜にしてしまう不思議な魅力に対しての評価だった
そんな中で先ほど氷塔の背中を押した律矢だったが二人の試合を見て応援ではなく涙を流していた
(・・・よかったな氷塔・・・ここにはお前を認めてくれる人達がこんなにいるぞ・・・!)
そして氷塔もまるで律矢の声が聞こえているかのように同じ事を考えていた
(ああ!どうせならもっと戦っていたいが・・・それは叶わないようだ・・・)
徐々にベアルの武器は壊れていき次の瞬間、バラバラに破損すると同時にヤマトの一撃がベアルを捉えた
「・・・ありがとうベアル・・・俺のわがままに付き合ってくれて・・・後はゆっくり眠ってくれ」
『バトルエンド!勝者!兜選手!!』
バトルが終了すると氷塔はとても天井を見ながら敗北を噛み締めており
それが終わるとゆっくり剣也へと歩き出してそのまま彼に対して手を差し伸べる
「完敗だ・・・本当にあの頃と比べて強くなったんだな・・・この俺が負けるとは・・・」
「でもこれで終わるつもりはないんだろ?また強くなって戦えるのを楽しみにしてるぜ!」
「・・・ああ・・・次こそは必ず俺が勝ってみせる・・・!」
二人が熱い握手を交わすとその瞬間に会場は大盛り上がりを見せており準決勝第一試合は幕を閉じた
そして観客席へと戻る通路を歩いている氷塔を出迎えたのは律矢だった
その顔はとても悲しそうであろうと同時にどこか安心したような気持ちも含まれた顔をしていた
「・・・どうだった?彼との戦いは?君にとって満足の出来るものだったかい?」
「ああ・・・これまでにないほど俺は満足させてもらった・・・だが・・・やはり悔しいもんだな・・・
こんなにも満ち足りた思いをしたはずなのに・・・どうしても悔しいという気持ちが出てきてしまう・・・!」
どうやら氷塔は気持ちとしては満足しているはずなのに悔しいという気持ちが止まらなかった
おそらく律矢はその気持ちが痛いほどに理解出来たのか彼の気持ちは間違っていない事を伝える
「・・・負けて悔しいと感じない人間なんていないさ・・・私だってとても悔しいと思っているよ・・・
だけどね・・・その気持ちがあるって事は君はまだ剣也君と戦う事を諦めてはいないって事だ・・・!
だからこそ・・・!また特訓して戦おう・・・!その時こそ剣也君に勝ってみせるんだ・・・!」
「律矢・・・まさかお前の口からそんな熱い言葉が聞けるとはな・・・正直、似合わないぞ?」
彼の言葉を聞いて律矢も柄にもなく変な事を言ってしまったと顔を赤くして恥ずかしがっていたが
別に先ほどの言葉を否定する事はなくむしろそれに対して氷塔の返事を聞こうと思っていると
(・・・いや・・・もう彼の顔が結論を言っているようなものか・・・君も強くなったな・・・氷塔・・・)
もはや氷塔の顔には先ほどの悔しいという表情は一切なくとても晴々しい顔をしていた
そしてその目の奥には再び剣也と戦って今度こそ自分が勝ってみせると強い闘志が宿っていた
それを見て律矢はもうなんの心配もする必要はないと思いながら彼と一緒に観客席へと向かう
二人で観客席に向かうとそこには彼らの子分達の姿があり先ほどの戦いに対して涙を流して感動していた
同時に氷塔が負けた事をとても悔しく思っているようでもしかしたら彼以上に悔しいと思っていたのかもしれない
そんな彼らの姿を見て氷塔は改めて自分にはこれだけの仲間が居るのだと自覚し嬉しそうな顔をするのだった
一方その頃、裏方で彼らの試合を見ていた伊部牧と大樹署長は先ほどの戦いにとても感動していた
「・・・本当に素晴らしい戦いでしたね・・・おそらくはあれこそがGATの本来あるべき姿なんでしょうね・・・」
「うむ・・・確かにGATはあくまでも子供達と一緒に遊ぶ玩具であり機械じゃ・・・
じゃが・・・ファイターはそんなGATを自分自身のように扱い戦わなくてはならない
つまりファイターにとってGATとはもう一人の自分なのじゃ・・・」
そしてそんなGATが戦うからこそ観客は戦いに熱中し人々の心を夢中にする
それこそがおそらくGATを作り出した人々が願っていた事なのだろう
その事を改めて認識させてもらった伊部牧は激闘を繰り広げた二人の事を大いに称賛する
(・・・願わくば・・・こんな風に彼らが楽しんでいられるような世界であり続けてほしいのじゃがな・・・
それがあんな事件を引き起こしてしまったワシらが願うたった一つの事じゃ・・・のう?獣兵衛よ・・・)
伊部牧は亡き友がかつて人々の為になると思って引き起こしてしまった事件
そんな悲劇が二度と起こってほしくはないし起こしてはならないと思いながら試合の準備を始めてるのだった
(兜君・・・本当に凄い戦いだった・・・私も・・・負けていられない・・・!)
氷塔との戦いに勝利を収めた剣也
そして次は鮫牙対蜜柑!!




