月の兎
新しい登場人物が二人も出るよ!
あれから剣也は清志郎と乙女の二人と一緒に次郎と雲母にGATの事を教えた
そして夕方になり疲れて眠ってしまった二人を連れて三人はバトルスタジアムを後にした
「それにしても・・・二人共、大興奮だったね」
「家では少し動かす程度の事しかしてなかったからな
だから今日みたいに広々とした場所で遊ぶ事が出来て嬉しかったんだろうさ」
「確かに・・・GATは家の中で遊ばせるのは危険だからね〜・・・
いくらセーフティーが付いているとは言っても暴れる犬や猫と一緒だしね」
GATには人に危害が加えられないようにセーフティーが付けられている
これのおかげでGATは特定のフィールド外では行動が制限される
しかしそれでも動き回ればそれはもう暴れる犬や猫と一緒なので危険がないわけではない
それが分かっているからこそ剣也も家の中でGATを使わせなかったのだ
「そういえば優の家にも専用のフィールドがあるのよね?
バトルスタジアムが混んでいる時はそっちを使わせてもらうのはどう?」
「それはいい案かも!でもその時はちゃんと優君に許可をもらわないと駄目だよ!」
「分かってるって!てか優にも協力してもらってあの子達に教えるのはいいかもね?」
確かにバトルスタジアムは人が多くて二人に教える時間が限られてくるが
個人の持ち物であるフィールドならば時間も気にせずに二人に教える事が出来るだろう
「それいいな!明日になったら優に相談するか!」
「そうだね!そろそろ地元の大会も近いし自分達の練習もしないとね!」
先ほどまで彼らがいたバトルスタジアムでその大会は行われて優勝者には景品も出る
と言ってもそこまで真剣な勝負というわけではなくあくまでも遊びの範囲での大会となる
しかし二人にとっては今回の地区大会には優勝賞品とは別に勝ちたい理由というものがあったのだ
「実は前から考えてたんだけど今回は地区大会に参加しようって僕達は考えているんだ」
「それって勝ち進んでいけば全国大会に出て日本チャンピオンと戦うって事だよな?
なるほど・・・地元の大会で戦績を残せないようじゃ地区大会で勝ち残れるわけがないって事か」
「そういう事!だから今回は本気で優勝を目指すの!いつもとは違ってね!」
二人は本当に今回の大会で優勝するつもりのようでお互いの事をライバルだと思っていた
それを見て剣也は羨ましいと思うが自分では勝負にならないだろうとその高いには出ないつもりでいた
「・・・でも剣也に真剣勝負で負けちゃったからな〜・・・もっと特訓しないと」
「確かに・・・僕も色々なパターンを考えて戦略を練らないとな〜・・・」
「・・・二人共・・・頼むからGATだけじゃなくて勉強も頑張れよ?」
翌日になり剣也達はすぐさま登校して来た優に昨日の考えていた事を話すと
「もちろんいいよ!兄妹にGATを教えたいとは本当に剣也君は優しいな!
それに僕も地元の大会には出るつもりでいるからライバルと切磋琢磨するのもいいね!」
「優も大会に参加するの!?もしかしてアンタも地区大会を出るつもり!?」
「いや?単純にGATをやる者として興味が出てきたってだけさ
それよりも・・・剣也君は大会に参加しないのかい?この前のバトルでは二人に勝ったんでしょ?」
確かに剣也は大会に参加してみたいという思いはあるのだがまだ初心者過ぎてあまり参加する気になれなかった
「いや・・・俺は今回は参加しないでおくよ・・・その代わりに三人の応援をさせてもらう」
「そうなんだ・・・僕としては参加して欲しかったな・・・」
「悪いな・・・そう言えば今日は委員会の仕事があるから練習には参加出来ないんだ!
一応は清志郎と乙女に頼んではいるけど優もウチの次郎と雲母の事、よろしく頼むな!」
「もちろんだとも!友人のご兄妹ともなれば我が家の全身全霊を持っておもてなしさせていただこう!」
「いやそこは普通でいいと思うんだけど・・・」
清志郎は苦笑いしながら優を説得してくれたので多分、大丈夫だと思いながらも少しだけ心配に思う剣也だった
「そうなんですか・・・先輩だけじゃなくて弟さんと妹さんがGATを始めたんですね?」
図書委員に所属している剣也の隣で話を聞いているのは彼の後輩である魚住歌女
彼女はまさに文学少女という見た目をしておりその容姿から男子の人気も高い
しかし本人の性格からなのか男性は苦手なようでこんな風に話せるのは剣也だけだった
「というよりも俺の方が後になるのかな・・・GATを手に入れたのも二人より後だし」
「そう言えば先輩がGATを手に入れたのは特殊な経緯があるんでしたね
でも・・・本当に先輩のGATを作った企業は倒産してしまったのでしょうか・・・」
「やっぱり歌女ちゃんも気になる?実は俺も気になってるんだけど・・・あの署長さんを疑うのもな〜・・・」
実はあれから剣也はヤマトの経緯が気になっていたのだが調べようとした事はなかった
その理由は大樹署長を信じているからというのもあるが
一番の理由は自分が調べて何か成果があるのかと考えてしまったからだった
大樹署長ほどの権力がある人ですらその出所を隠すという事はそれだけ危険な代物だという事だろう
ならば尚更、自分のような学生が調べても情報など得られるわけがないと剣也は考えていた
(それに・・・大樹署長や露天の爺ちゃんは良い人だったし・・・
その人達が託したって事は俺には何か・・・ヤマトを託すだけの理由があるって事だ・・・)
「歌女ちゃん!借りていた方を返しに来たのですよ!おっ!今日は剣也先輩も一緒なんですね!?」
剣也が真剣に考えていると図書室の扉が勢いよく開けられて元気な美少女が入ってきた
彼女は歌女のクラスメイトでありスポーツが大好きな褐色美少女の猫田三夏
「三夏ちゃん・・・ここは図書室だから静かに入ってきてね?」
「はっ!忘れていたのですよ!ごめんなさいです!」
「いや反省する前にまずはその大きな声で喋るのをやめてくれ」
彼女はまさに猫のような人をかき回す感じのムードメーカーであり剣也もよく巻き込まれていた
「そう言えば先ほどまで随分と仲良さそうに話していたようですけど・・・何かあったのですか?」
「ああ・・・実は最近になってGATを兄妹と一緒に手に入れたって話をしていたんだよ
それで今日は清志郎達が優の家で教えてもらってるって話をしていたんだ」
「そうなのですか!?それじゃあもしかして地元の大会に参加するのですか!?」
「いや参加するつもりはないけど・・・もしかして三夏ちゃんも参加するの?」
「はいです!そしてこれが私の相棒である虎娘です!」
どうやら彼女もGATを持っていたようでその姿はまさに猫のような見た目をした女性型のGATだった
「そっか・・・ならライバルは多いみたいだし頑張りなよ?」
「はいです!・・・でも先輩が参加してくれないのは残念です・・・」
「そうがっかりしないでくれよ・・・てか初心者にそこまでの事を求められてもな・・・」
「いや〜先輩だから初心者なんて言葉が嘘なんじゃないかって強さを持っているんじゃないかと」
「私もです。先輩はなんでも出来るイメージがあったので・・・」
「歌女ちゃんまで・・・俺は別にそんな特殊な人間じゃないんだけどな〜・・・」
こうして楽しい話し合いをしながら委員会の時間は過ぎて行き下校の時間となった
帰り道で剣也は携帯を見るとそこには清志郎からのメッセージが来ており
どうやら優の家での特訓は終わったようで今から次郎と雲母の二人を送ってくれるそうだ
「こんな時間まで遊ぶなんて・・・よっぽど楽しかったみたいだな?・・・ん?あれは・・・」
剣也はそこまで二人が楽しく遊んだのだと嬉しそうに思いながら歩いていると見知った顔を見つける
それはこの前の職員室で見かけた隣のクラスである蜜柑でどうやら絡まれている様子だった
もちろんそれを見過ごしていられるような剣也ではなく急いで彼女の元へと向かう
「月白さん!大丈夫!?」
「・・・確か・・・隣のクラスの兜君・・・だったわね?・・・問題ないわ」
「あぁ?可愛い顔していて随分と余裕じゃねぇかよ・・・!その面が変わるのが楽しみだぜ・・・!」
どうやら絡んできている男達は典型的な悪い人間のようで剣也は身構えるが
彼らが懐から取り出したのは凶器ではなく何故かGATだった
「・・・気をつけて・・・!あれは多分・・・違法に改造されたGAT・・・!」
「違法!?もしかしてセーフティーがつけられてないの!?」
「それだけじゃない・・・!通常のGATよりも同調率が高いから・・・強い・・・!」
蜜柑の話では違法に改造されたGATには本来あるはずのセーフティーが外されており
しかも同調率もイジられているので通常のGATよりも強くなっているそうだ
「そういう事だ・・・!さぁ・・・!最初にボロボロにされたいのはどっちだ・・・!?」
「・・・分かった・・・ならお前達の相手は俺がしてやる!」
剣也はヤマトを取り出して男達との戦いを受けて立つ事にした
「今の内に逃げて!ここは俺が食い止めるから!」
「・・・ありがとう・・・でもこの戦いは私が先に売られたもの・・・だから私も・・・戦う・・・!」
自分が助けられるとは思っていなかった蜜柑は少しだけ目を丸くして驚いていたが
彼らに最初に戦いを仕掛けられたのは自分だと言ってカバンの中からとある物を取り出す
「これは簡易型のフィールド発生装置・・・これを使えば普通のGATでも戦える・・・!
そして・・・貴方達にお仕置きをするのは・・・私の大切な相棒・・・月兎・・・!」
蜜柑は簡易型のフィールドを作り出すとその後でCRバンドを装着し自分のGATを取り出した
「兜君・・・巻き込んでしまって申し訳ないけど・・・少しだけ付き合ってちょうだい・・・!」
「ああ・・・!俺もこういう奴らは嫌いなんでね!少しと言わず最後まで付き合わせてもらうよ!」
「テメェら・・・!たかだか中坊の分際でいい気になってるんじゃねぇぞ!?
その綺麗なGATごとテメェらをズタズタにしてやるよ!!」
蜜柑と一緒に戦う事となった剣也
果たして違法GATとどう戦うのか!?