トライハウンド
がっつりバトル回!
戦いが始まってまだ一分ほどしか経過していなかったがまさに激戦と呼べるものになっていた
剣也は九重のヴォルフと激しい接近戦を繰り広げており蜜柑と優はそれを邪魔させないように白石達を牽制している
つまりこの勝負は真っ向から戦っているヤマトと九重のヴォルフが勝敗を分けると言っても過言ではないだろう
しかしお互いに決定的な攻撃を当てる事は出来ず近距離戦はまさに紙一重の攻防となっていた
(・・・まさかここまで俺とここまで戦えるファイターが出てくるとは・・・間違いなく素材は全国クラスか)
(スゲェ・・・!鮫牙との戦いで全国クラスの実力は理解出来たけど・・・この人は間違いなくそれだ・・・!)
九重は剣也が自分とここまでの接近戦が出来るとは思っておらず素直にその実力を評価しており
一方で剣也も鮫牙との戦いで全国クラスの実力を理解していたからこそ九重の実力も全国クラスだと理解した
お互いに全力で戦っても簡単には終わらないと理解したからこそ二人の顔には笑みが浮かんでおり
剣のぶつかり合いは更に激しさを増しその様子を見ていた両チームの味方も何やらテンションが上がっていた
「あんなに楽しそうな九重を見るのは県大会の決勝とか以来かもしれないな・・・!」
「そうね・・・逆を言うと彼はそれだけの実力者って事だからね?あんまり感心してる場合じゃないわよ」
「そうは言われてもな・・・公式戦じゃないしあんなに楽しそうな戦いを邪魔出来るか?」
長らくチームメイトをしている白石だからこそ滅多に見れない九重の姿を見て戦いを邪魔するわけにはいかない
その考えは小寺も同じだったようで不機嫌そうな顔をしながらも二人の戦いを邪魔しないようにしていた
「凄いですね・・・剣也君はGATを一番最初に始めた頃から知っていましたが・・・ここまでになるとは・・・」
「・・・確かに兜君の成長速度は尋常じゃない・・・でもそれは彼が純粋にGATバトルを楽しんでいるから・・・
きっと私達が昔に忘れてしまった感情を・・・今の彼は持っているからこそ強いんだと思う・・・」
「・・・そうですね・・・なら僕達も初心を思い出してこのバトルを楽しむとしましょう!」
楽しそうな二人の姿を見て蜜柑達は負けていられないという感情が浮かんできて対抗するかのように攻撃を続ける
「おいおい・・・向こうの二人も感化されちまったか?随分とやる気を出してきたじゃないの・・・どうする?」
「馬鹿じゃないの?確かに公式戦じゃないけどだからと言って負けるような戦いはしないわよ
九重がまともに動けないんだったら私達だけでもいつも通りの攻めをするわよ」
「了解・・・!それじゃあトライハウンドの実力を後輩達に見せるとしますかね・・・!」
どうやらここから白石達は本格的に動き出すようで行動を開始する
蜜柑はその動きを見て試合が今から動き出すのだと判断し冷静に状況を見極める事にした
一方その頃、バトルスタジアムの外でみんなの戦いを見ていた清志郎達も久しぶりにワクワクしていた
「まさかこんな戦いになるなんて・・・!こんなの全国大会でしか見られないよ・・・!」
「本当よ・・・!早く私も戦いたいのに・・・!あぁ〜!こんな戦い見せられたらストレスが溜まるわよ!」
「自分もです!剣也先輩もそうですけど向こうの人も強くて・・・私も混ぜてもらいたいです!!」
みんなはまるで本番の高いでも見ているかのような大興奮で伊部牧も年甲斐もなく興奮していた
(やはりGATはこうやって子供達に遊ばれてこそのもの・・・これこそがGATのあるべき姿なのじゃろうな
十兵衛よ・・・お主の孫娘もちゃんとその気持ちを持っているようじゃぞ・・・)
亡き友である男に伊部牧は子供達がとても楽しんでいる事こそがGATのあるべき姿だと喜んで話していた
そして今の自分はその罪滅ぼしをする為に生きているようなものだという考えも頭を過ったが
実際は単純に成長する子供達の姿を見て感動していたいという気持ちの方が強かった
おそらくは彼らのこの笑顔を作り出す事こそが
本当に自分が生きている理由なのではないかとも伊部牧は思い始めていた
(・・・ワシも随分と歳を取ったのう・・・子供達の姿を見てこんな感傷的な気持ちになるなど・・・
じゃが・・・ワシはまだまだ長生きせねばならんのう・・・この子らの為にもな・・・)
贖罪や使命などではなく単純に彼らのこれからを見届けたいからこそ
伊部牧はこれからも生き続けなければならないと考えていた
「・・・それにしてもトライハウンド・・・改めて見たけど本当にすごいチームだね・・・
チームワークに関しては言わずもがな僕達よりも遥かに上だし・・・GATの操作技術も凄い・・・」
「本当ね・・・私も剣也が戦っている相手と対峙してもあそこまで粘れる自信はないわ・・・」
「自分もです・・・そう考えると剣也先輩って本当に凄いですよね・・・もう全国レベルじゃないんですか?」
確かに三夏の言う通り今の剣也はもはや全国レベルでもおかしくないほどに強くなっているだろう
しかし彼の目指している鮫牙も同じく全国レベルの強者でありおそらくその強さはもっと上がっているはず
それを考えたらこの程度で満足しているわけにはいかないだろうし尚のこと、負けるわけにはいかないだろう
(・・・でもそれは私達にも言える事よね・・・必死に喰らいついていかないと置いていかれちゃう・・・!)
そしてそれは乙女達にも言える事でありこの合宿で自分達も剣也に置いていかれないようにしなくてはいけない
その気持ちを持ち続けている限りはきっと彼らは強くなり続ける事が出来るだろう
そして視点はバトルスタジアムへと戻り戦いはいよいよ佳境を迎えようとしていた
「う〜ん・・・配置には着いたけどあのクール系な美少女ちゃん・・・警戒心が強いね〜・・・」
「おそらくはあの子がこのチームの司令塔なんだと思うわ・・・でも一人でも倒せればこっちが有利になる」
「だな・・・それじゃあまぁ・・・先輩のチームワークを見せるとしましょうかね・・・!」
白石は岩陰から飛び出すと蜜柑達に対して綺麗な放物線を描くように何かを放つ
いち早く蜜柑はそれに反応して攻撃を躱す事が出来たが優は反応が遅れてしまい動く事が出来なかった
そしてその放物線を描きながら飛んできた何かは空中で破裂するとまるでチャフのように何かをばら撒き
まともにそれを受けてしまった優のダビデは視界が完全に塞がれてしまいその後ろにはいつの間に小寺のGATがいた
もちろん視界が塞がってしまっている優はそれに反応する事は出来ずそのまま胴体を撃ち抜かれて機能停止させられる
「ごめん・・・まさかあんな手があるなんて・・・完全にしてやられたよ・・・」
「今のは仕方ない・・・私も反応出来たのはギリギリだった・・・むしろ相手を褒めるべきだと思う」
優は一番最初にやられてしまい申し訳なさそうにしていたが蜜柑は仕方ないと判断していた
それほどまでに相手の次の行動は早くとても声を掛けている暇がなかった
まさに阿吽の呼吸の前では声がけなんて付け焼き刃の連携は無意味なのだと思い知らされた瞬間だった
(でもこれでこっちが数的に不利になった・・・兜君を呼び戻すべきだけど・・・あの戦いじゃ・・・)
「形勢はこっちが有利だな?さてと・・・それじゃあもう一人も頂いて九重の援護に行くとするかね」
「申し訳ないけどこれが勝負の現実・・・貴方達にはそれを教えてあげるわ・・・!」
完全に自分達が有利になったと判断した白石達は牽制射撃をしながらジリジリと月兎を追い詰めていく
そして当の本人もこれはもう助からないと負けを覚悟したその瞬間だった
「「「!??」」」
突如として小寺のGATに対して何かが飛んできたと思ったらその正体は九重のGATだった
もちろんチームメイトである彼が邪魔をする為に飛んでくるわけもなく飛ばしたのは彼と戦っていたヤマトだった
そう・・・剣也はあの戦いの中でもちゃんと自分の仲間の事を早くしており助けが必要だと判断して助けてくれたのだ
(マジかよ・・・あの戦いの中で味方の状況まで把握してるとか怪物どころの騒ぎじゃねぇぞ?
こりゃあ本当にとんでもない大型新人が現れたな・・・いや・・・もはや天才というべきか・・・)
「悪いが俺の仲間はもうやらせねぇ・・・!ここからが本当の勝負だ・・・!」
『タイムアップ!』
「「・・・えっ?」」
「すまん!バトルスタジアムの設定が制限時間制のバトルになっている事を忘れておったわ!!」
どうやら伊部牧がバトルスタジアムの設定を変更し忘れていたようで戦いに制限時間があったらしく
それを知らずに戦っていた剣也達はなんとも言えない形で戦いを終える事になってしまった
「・・・めちゃくちゃ不完全燃焼なんですけど・・・このやるせない気持ちはどうしてくれるんですか・・・」
「本当ですよ・・・僕なんてやられてまでこの勝負が終わってしまったんですけど?」
「それに関しては本当にすまんと思っとるよ!それにこれっきりというわけでもないじゃろ!?
流石に忘れろとは言わんがいい加減に気持ちは切り替えてくれんかのう!?」
伊部牧は必死に剣也達を説得してなんとか機嫌を直してもらうと考えているようだが
流石にこれくらいは先ほどの激闘の熱が冷めず剣也達の機嫌は直らなかったがそこへ白石達がやってくる
「いや〜!本当にお前達、強いな!?正直な話、俺達の相手になるのかと思ったけど過小評価だったぜ!
あそこまで追い詰められたのは県大会でもそうはなかっただろうな・・・なぁ?九重」
「ああ・・・接近戦で俺とあそこまでやり合えた人間はそういない・・・
いや・・・最後に関しては完全に俺の方が競り負けていた・・・剣也と言ったな?お前は強い」
九重は素直に剣也が自分よりも強いと称賛しておりその目にはこれまで見た事もない闘志が宿っていた
そして剣也に対してよろしくという意味と絶対に次は負けないという意味での手を差し出してきた
剣也はそれをしっかりと握り返して次こそはちゃんと勝利すると言わんかばりの笑みを浮かべていた
トライハウンドとの戦いが終わった剣也達
そしてここから本当の合宿が始まるのだった




