憧れじゃない
第二回戦!
第一試合を終えた剣也はステージを降りると他のみんなから惜しみない拍手が送られた
しかし誰一人として勝者である剣也に話し掛けようと近づいていかなかった
その理由はもちろん大会はまだ終わっておらず、剣也はライバルだという認識があったからだ
それ故にみんなは緊張感と集中力を切らせないようにしようと敢えて剣也を遠ざけていた
そして剣也もそれが分かっているからこそ、みんなには話し掛けずに手を振って端に移動した
するとそこへ同じくライバルであるはずの蜜柑が近づいてきて剣也に話しかけてきた
「・・・一回戦突破おめでとう・・・すごい見応えのある戦いだった・・・」
「ありがとう・・・えっと・・・月白さんは俺に話しかけても大丈夫なの?一応はライバルなんだけど・・・」
「?問題ない・・・私は他の人と違って戦いになってもちゃんと本気で戦える」
確かに彼女は他のみんなと違って気持ちが鈍り手加減をしてしまうなんて事はないだろう
それを考えて蜜柑はこう言った女性だったと剣也は少しだけ緊張が取れた気がした
いや・・・緊張というよりも単純に先ほどの戦いで得ていた高揚感が抜けていなかっただけなのだろう
しかし蜜柑と話せた事でそれは完全に抜ける事が出来たと思っており、少しだけ彼女に感謝していた
「そっか・・・ってそれよりも月白さんも準備しておいた方がいいんじゃないの?」
「私の試合は一番最後だから問題ない・・・もしも兜君と戦う事になったとしても・・・」
「戦うのは決勝戦になるってわけか・・・でもその前に強敵がいないわけじゃないんだろ?」
そう・・・トーナメント表を見たら蜜柑は決勝で剣也と戦う前にとある人物と戦わなくてはいけなかった
その人物とは他でもない、おそらくはみんなの中で最も戦っている乙女だった
「・・・彼女とは何度も対戦している・・・でも今回は・・・気持ちが彼女を強くしている・・・」
「だろうね・・・俺としては誰が相手であろうとも油断出来ないのは確かだけど・・・」
「・・・私も彼女に油断した覚えはない・・・だから今回も・・・必ず勝つ・・・!」
初心者である剣也は言わずもがな蜜柑も相手な何度も勝っている乙女だからと言って油断はしていなかった
いや・・・むしろ普段と違う分だけ今まで以上に警戒していると言った方がいいかもしれない
その様子を見て分かったのか剣也はやっぱり彼女の心配はしなくても良さそうだと思っていた
「・・・みんな順調に勝ってるな・・・この分だとやっぱり俺はみんなと戦いそうだ・・・」
「・・・あまりこんな事を言いたくはないけど・・・決勝で待ってる・・・!」
『さぁさぁさぁ!盛り上がっていた第一回戦!勝利したのはこの八名!ここから更に人数が半分に絞らます!
それでは第一試合!ゼッケン番号一番!剣也選手!対するはゼッケン番号三番!清志郎選手!』
「・・・いよいよだ・・・!いよいよ剣也君と真剣勝負をする時が来たんだ・・・!」
清志郎はまるでこの時を待っていたと言わんばかりに喜んでいたが、同時にその手は震えている様子だった
その理由は当然な事であり清志郎にとってはいつだって剣也は越えるべき壁として存在していた
優とは違った意味で清志郎は剣也に対し憧れに近い感情を抱いていた
しかもそれは優と出会う前からなので小学生の時よりも前からだと言えるだろう
剣也はいつだって誰かの為に行動し、そしてその時にこそ誰にも負けない力を発揮するタイプだった
それを間近で見てきた清志郎だからこそ、羨ましいと思いそして憧れてきたのだ
もちろん清志郎だって努力を惜しんでいるわけもはなくそれなりの特訓だってしてきた
それでもこれは精神的なものであり自分が変わったと自覚出来ない限り特訓の成果が出たとは言えない
言うならば今回の戦いはまさにその努力の成果を感じられるかどうか、清志郎にとって大切な一戦
だからこそこんな風に緊張で体が震えてしまうのも無理はないだろうがやはり背負い過ぎている感じもあった
するとそこへ一番最初に剣也と戦った優が近づいて震えている清志郎の肩を優しく叩いた
「!?優君・・・」
「清志郎君・・・君の気持ちは僕にはよく分かるけど・・・戦う前からそんなに緊張していては駄目だ・・・
勝ちたいと思う気持ちは大切だけどそれ以上に大切なのは満足のいく戦い方をする事なんじゃないかな?」
「・・・そうだね・・・優君の言う通りだよ・・・!勝ち負けを考えちゃ駄目だ!僕は僕の戦いをするんだ!」
優の言葉を聞いて清志郎はようやく自分が何をしたいのか、何をしなくてはいけないのかを理解する事が出来た
確かに自分は剣也に憧れているし今回の戦いで彼に勝って少しでも近づきたいと考えていた
しかし本当に清志郎が剣也に見て欲しかったのはそんな事ではなく自分がこれほど強くなったのだと言う事だ
それを見せる為にはこんな風に緊張している場合ではないし緊張していていいバトルなど出来る訳もない
ようやくそれを思い出す事が出来た清志郎の顔はこれまでに見た事がないほど覚悟の決まった顔をしていた
その顔を見る事が出来て優も安心できたようで行ってこいと言わんばかりに清志郎の背中を押し出した
「・・・本当・・・男って単純な生き物よね〜・・・見てるこっちが恥ずかしくなってきちゃうわよ・・・」
「そうですか?私はああ言った熱い感じのは大好物です!天理先輩だって嫌いじゃないですよね?」
「・・・まぁ・・・嫌いではないけど・・・」
そんな二人の様子を見ていた乙女と三夏は少しだけ羨ましいと思いながらステージの方を見守っていた
『両者共に準備はいいですか!?それではGATバトル・・・ファイト!!』
「ちょっ!?おいおいこれは・・・なんとも凄い設定のフィールドで戦う事になったな・・・!」
剣也がヤマトの画面越しに見たフィールドはまさかの天候が嵐になっている住宅街だった
これでは相手の居場所を探すのにも時間が掛かってしまうし何よりも風や雨で行動が制限されてしまう
しかしそれはホークスも同じ、いやむしろ空を滑空出来る長所を持っている分、余計不利に働くだろう
「どうしたもんか・・・このまま道路のど真ん中にいたら間違いなく攻撃を受けるだろうし・・・!?」
このままではどちらにしても身動きが取れなくなってしまうと考えた剣也は一度、移動しようと考えようとした瞬間
まるでそんな剣也の考えを狙い澄ましたかのように銃弾が飛んできた
幸いな事に剣也はどうにかその銃声を聞き取る事が出来たので攻撃を躱す事ができ急いで建物の影に隠れる
(あっぶね〜・・・流石は清志郎だな・・・!まさかもう居場所を突き止められていたとは・・・
しかし厄介だな・・・この雨と風の所為で銃声がほとんど聞こえなかったぞ・・・)
完全に先手を取られてしまった剣也は今の状況を整理していると再び銃弾が飛んできた
しかも今度は完全に雨と風で銃声がかき消されてしまい直撃ではないにしてもヤマトに当たってしまった
「マジかよ!?少しくらいはどうやって戦うか考えさせて欲しいもんなんだけどな・・・!」
「そんな時間を与えたら絶対に逆転されちゃうからね・・・!だからこのまま押し切らせてもらうよ!」
どうやら清志郎は余計な時間を与えずこのままヤマトを完全封殺して勝つつもりのようだ
と言ってもあくまでそれは言っているだけであり実際にそうなるとは思っていなかった
これまでの経験からこんな逆境くらいでは剣也が止まる訳ないと信じているから
(マジでどうしたもんか・・・このままだったら清志郎の言う通り一方的に攻撃されて終わる・・・!
どうにかしてホークスの狙撃地点を突き止めたいけどこの視界と音じゃどこから弾丸が飛んできているか・・・!)
先ほどまでこの天候がホークスにとって悪い方向に働くと思っていた自分を戒めたくなるほど
清志郎はこの状況を上手く利用していた
それでもこのまま諦めるような剣也ではなく色々と周りを確認しながら作戦を考えていく
そんな時にここが住宅街だという事を思い出して一つだけこの状況を打開する作戦を思いついた
「行くぜ・・・!ここからが本番だ!清志郎!!」
「望むところだよ・・・!剣也君!!」
「うぉぉおおらぁぁぁああ!!」
「!?建物を破壊し始めた!?しまった!剣也君の作戦は!!」
観客は剣也が建物を破壊していた事に対してやけになったのかと心配するが清志郎だけはその意図を理解した
そう・・・剣也は建物を破壊する事で瓦礫などを作り出し射線を遮る作戦に出たのだ
つまり相手の居場所が分からないのならば来ると分かっている攻撃の方を優先して止めた方が早いと考えたのだ
そしてその作戦は見事に刺さり先ほどまで射線の通っていた清志郎はヤマトの姿を完全に見失ってしまう
「・・・やられたよ・・・まさかこんな作戦で攻撃を防がれるとはね・・・!」
「前に戦ったあのガトリングブラザーの事を思い出してな・・・!その作戦を再利用したのさ」
あの時は単純に壁を作り出すだけだったが元々、遠距離武器に対して盾や壁は天敵そのもの
それをあの一瞬で理解した剣也に対して清志郎はやはり凄いと評価していた
「でも分かっているよね?確かに攻撃を防げたとしても剣也君もホークスの居場所を突き止めた訳じゃない・・・!
つまり試合は振り出しに戻っただけで状況は何も好転した訳じゃないって事を・・・!」
清志郎はそう言うとホークスを大きく飛び上がらせて上空からヤマトの事を探し出す
建物を破壊したという事は同時に上空の視界を開けさせたという事でもあり清志郎はそれを利用したのだ
・・・しかし清志郎は気づいていなかった・・・これこそが剣也の狙いだったという事を・・・!
「そこだぁぁぁああ!!」
「っ!?しまっ!!」
上空に飛び上がった事で清志郎はホークスの居場所をわざわざ晒す事になってしまい
それを待ち構えていたヤマトは瓦礫を踏み台にして飛び上がりホークスに向かって蹴りを放つ
清志郎も急いで迎撃しようとするが間に合わず見事にヤマトの蹴りはホークスの胴体を貫いた
『それまで!勝者はゼッケン番号一番!剣也選手!』
清志郎との戦いに見事、勝利した剣也
果たして次に戦う事になるのは一体、誰になるのか!?




