一瞬の時
今回でトライハウンド戦、決着!
いよいよ誰の目から見ても勝負は終盤、お互いにメンバーを一人づつ失い残るメンバーは二人のみ
リーダー機を撃破すれば勝利となる今回のチーム戦だがもはやここまで来たらそれは関係ない
おそらくどちらかが全滅という形でしかこの勝負が終わる事はないだろうとその場にいた全員が思っていた
問題は現在の状況であり清志郎を失い更には撃破された九重の機転で白石達の前に炙り出された剣也達が不利
しかし白石達もエースである九重を失ってしまった事により剣也を確実に倒す事は出来なくなってしまった
そう・・・ここからは死に物狂いで戦う華麗な戦いとは程遠いものとなるだろうがそれでも観客は目を離せない
それほどまでに熱中してしまうものがこの戦いにはあり観客はそれに抗う事が出来なかった
そしてそれは蜜柑達も同じであり正直、試合の内容に関しては彼らを知っているはずなのに予想出来なかった
(飛鷹先輩が戦闘不能になるのもそうだったけど・・・まさかトライハウンド最初の脱落者が九重さんになるなんて
しかもこの状況・・・剣也先輩達は後手に回されてトライハウンドは攻め手を潰された・・・
もうどっちが勝ってもおかしくないはずなのにどうして・・・まだ何かあるような・・・そんな予感がする・・・)
素人である歌女から見ても終盤なのは間違いないはずなのだがどうしてか彼女はまだ何か起こる予感を感じていた
それが予感などではなく予兆だったのかも知れないと彼女は思う事になるのは時間の問題だった
「・・・このままじゃ決着が付かない事はお互いに分かってる・・・おそらくどこかで動きがあるはず・・・
そこで先手を取れた方が・・・間違いなく勝利に近づく事になる・・・問題はそのタイミング・・・!」
蜜柑の言う通りここまでは白石達が有利に事を進めてきたが現状では剣也の動きを制限するだけで倒す事は出来ない
一方で剣也達もこの状況では身動きが取れないので互いにこの拮抗状態を動かす瞬間がやってくるだろう
そしておそらくはそれに先手を取れた方が有利になるのだろうがひとたび、そのタイミングを間違えってしまえば
逆にそこを疲れて敗北を一途を辿る事になってしまう事は明らかでありここからは相手の様子を伺う事になる
そう言った意味では剣也達の動きを制限出来ている白石達の方が有利なはずなのだが何故か動きはなかった
どうしてなのか蜜柑は分からなかったが一つだけ分かっているのはその理由に剣也達の勝機があるという事だけ
(トライハウンドが動かない理由は私でも分からない・・・でも彼らがそれに気づければ勝機はあるはず・・・
この勝負・・・全くと言っていいほど結果が見えてこない・・・それほどまでに・・・拮抗している・・・!)
果たしてどちらが勝つ事になるのか、それは蜜柑をもってしてもいまだに見えてこないようで
それこそどんな勝ち方になるのか・・・少なくとも自分達が想像しているようなものではない事だけは分かっていた
(・・・頑張って・・・そしてどうか・・・本選でもう一度だけ・・・戦わせて・・・!)
一方その頃、肝心の白石達はどうやってこの状況を打開すればいいのかを必死に考えていた
(九重がいない事でこっちは近距離での攻撃が出来ない・・・迂闊に近づいてもチャンスを与えるだけ・・・
簡単な話・・・剣也と戦えるだけの操作技術を俺らは持っていない・・・どうしたもんかね〜・・・)
白石達がいまだに攻めない理由は剣也と渡り合えるだけの実力を持った九重を失い対等に渡り合えなくなったから
現状ではたとえ二人で攻めたとしても謙也の得意か接近戦に持ち込んでしまったら逆にやられる可能性の方が高い
かと言って遠距離攻撃がヤマトの尋常ではない反応速度によって躱されてしまいダメージにすらなっていない
つまり白石達にとっては現状を維持する事が最善な手になってしまい確実に攻めるだけの手段がないのだ
それこそ清志郎達が考えていたような自爆覚悟の戦術しかないのだろうがそれをするわけにはいかない
(ただでさえチームの総合力的にもこちらが不利な状況・・・剣也一人で俺達二人の相手をする事も可能・・・
確実に倒せる手段がない中で攻撃の為だけに自爆戦法を取るわけにはいかないが・・・だからと言って・・・)
別にこれは過大評価などではなく本当の意味で白石は剣也が自分達よりも強い事を理解していた
それこそ自分と小寺の二人を相手にしたとしてもどちらかは確実に片方だけでも撃破出来てしまうほどに・・・
そしておそらく剣也ならばその片方をリーダー機である自分を狙ってくるであろう事も分かっていた
そんな相手に対して自爆覚悟の勝負を挑むなどあまりにも部の悪すぎる賭けだと言ってもいいだろう
策士である白石がもちろんそんな手を使うわけもなくやるとしても確実に勝てると確信した時のみ
しかしだからこそ今はちゃんとした攻め手がないの事実であり白石が頭を抱える原因とも言える
するとここで思い出したのは彼らが接触してくる前に残していた罠の存在だった
(あそこに連れていければまだ勝機はあるか?・・・いや・・・確か剣也は九重との戦いで罠を見ていたんだったな
なら出来る事は罠の存在を明確にアピールしてアイツらの動きを一時的に封じる事だけか・・・だが・・・!)
今の攻め手がない状況を鑑みれば少しでも作戦を考える時間が欲しいと思うのは当然の事だろう
そしてそれを罠があるかも知れないという心理戦で獲得する事を思いついた白石達は早速その場所に移動する
剣也達はそれを見て追いかけようとも考えるが逃げた方向が先ほどまで罠のあった場所だという事に気づき
迂闊に近づけば罠にかかってその隙を狙われると判断しどうにか踏みとどまって動くのを止めた
(白石さんを相手に時間を与えるのはあんまり得策じゃない事はわかってるけど俺達にも考える時間が必要だ・・・
どうにかしてこっちの得意な距離に二人を誘い込む方法を・・・そうじゃなきゃ負けるのは・・・こっちだ!)
剣也達も白石達と同じくどうやって自分達の得意な分野に持っていくかを考えその策を導き出す
そして・・・いよいよ決着を付ける・・・誰もが待ち望んでいた瞬間がやってくるのだった
「・・・やっぱりこの策しかないか・・・頼むからしくじってくれるなよ?もしも失敗したら・・・」
「わかってるわよ・・・てかこの作戦に失敗したらどっちにしても負けるのは確定でしょ・・・いくわよ」
最後の勝負に出る事を決めた白石達は罠のある場所を自分達から出て行って剣也達の元へと向かう
すると彼らは先ほどの場所から逃げた様子はなくまるで待っていたと言わんばかりに白石達の真正面に立っていた
「おいおい・・・どう考えてもそれは作戦じゃねぇだろ・・・俺達が何も考えてないと思ったわけじゃねぇよな?」
「もちろん・・・その上で待つ選択肢をしたんですよ・・・今の俺達じゃ白石さん相手に策で勝つのは無理ですからね
だから・・・作戦は最小限・・・後は・・・真っ向からの実力勝負・・・!それが俺達が導き出した答えです!」
側から見れば明らかに剣也達の導き出した答えはやぶれかぶれと馬鹿にされそうだが実際に戦っている白石は違った
彼の言っていた通り清志郎という司令塔を失った今、剣也達が策で白石達を超えるのは絶対的に不可能
しかし逆に完全な実力だけの勝負ならば圧倒的に剣也の方が上、だからこそ敢えて不必要な策を無くしたのだ
そう・・・まさしく彼らの導き出した答えは最善の手であり同時に最強の言ってでもあるのだ
(本当に厄介だね〜・・・それをおそらくは本能で導き出しちゃうあたりが怪物なんだよな〜・・・
だけど真正面からの勝負はこっちも願ったり叶ったりだ・・・!それじゃあ最後の賭け・・・いくぜ!)
白石達は最後の勝負とばかりに剣也に突っ込んでいくと案の定というべきか一対一の状況に持ち込まれる
そしてもちろん白石は最も実力のある剣也と戦う事になるがこれは彼にとって計算の上での立ち回りだった
敢えて自分が不利な状況に追い込まれる事で逆にパートナーである小寺が有利な状況にし先に優を撃破
その後、何の懸念もなくなった状態から相打ちを覚悟で突っ込んでもらいその隙をついて剣也を撃破する
まさに失敗が許されない策と言うには程遠い最悪なものだがそれでも勝利への道筋はこれしかなかった
(後は小寺が優を撃破するまでに俺がどこまで剣也を相手に持ち堪えられるか・・・だな・・・!)
自分の実力が剣也に劣っている事は十分に理解しているがそれでもこの作戦の為ならばと白石は意地を見せる
それにより剣也も攻撃を当てる事は出来るのだが致命打にはならずまるで自分が追い込まれているような感覚だった
そんな二人の様子を見ていた小寺は急いで決着をつけなければならないと優に渾身の一撃を当てる
その一撃を受けた優のダビデはそのまま岩に激突しそこから出てこない事を確認して白石の援護に向かう
二人になったトライハウンドのコンビネーションは剣也が予想していたものよりも遥かに凄かった
そしてとうとう持っていた武器を撃ち落とされ素手の状態になってしまい白石達は勝機を悟った
(この一撃を当てれば今度こそ・・・俺達の・・・勝ちだ・・・!)
そう思い込んた瞬間・・・突如として後ろから攻撃が飛んできて白石のGATの片腕を吹き飛ばした
「なっ!?」
二人は慌てて後ろを確認するとそこに居たのは他でもない優であり彼はやられたフリをしていたのだ
そして自分から完全に注意が逸れた瞬間、白石に向かって攻撃するように指示を受けていた
そう・・・まさに白石達が考えていたような囮作戦を剣也達も実行していたというわけだ
見事に策に嵌ってしまった白石達は一瞬だけ動きを止めてしまいその瞬間を逃さなかった剣也の一撃が振り下ろされる
しかし先に反応した小寺が白石を庇うかのように割って入り代わりにその一撃を受けて戦闘不能になる
「小寺!チィ!!」
庇ってもらった白石はその間に自分を攻撃した優を今度こそ完全に撃破し
残るはリーダー機である剣也との一騎打ちとなったがこの時点で彼は既に自分の敗北を悟っていた
(片腕を失い実力的にも向こうの方が圧倒的に上・・・どう考えても負ける要素しかないな・・・だが・・・!)
「ここで背を向けたらリーダーとしての恥だからな・・・!たとえ負ける戦いだったとしても・・・!
俺は逃げずに戦おう・・・!正真正銘、策も何もない・・・真っ向勝負だ・・・!」
「・・・その勝負・・・受けて立ちます・・・!」
二人はお互いに武器を構え意を決して同時に突っ込んで行き攻撃を放った
そして・・・その勝負に勝利したのは・・・
(・・・本当に強くなったな・・・)
『そこまで!勝者!兜剣也チーム!』
トライハウンドに勝利し本戦に駒を進めた剣也達
そして他の三つある枠も次々と決まっていく




