プロローグ
近未来を舞台にしたSFロボットホビー小説です
とりあえずは暖かい目で見守ってください
少し先の未来、そこではgadget action robot。通称GATと呼ばれるバトルロボットホビーが人気を博していた
GATとはコアユニットと呼ばれている機械に頭、体、腕、脚、バックパックのパーツを取り付けて
更に色んな種類がある武器の中からそれを持たせて戦わせる玩具となっている
操作方法は極めて単純でコアユニットと呼ばれているパーツと一緒に腕に装着するコントローラーバンド
通称CRバンドが封入されておりまずはそれに自分の動かすGATを登録しておく
そしてCRバンドを腕に装着して起動させるとそれを経由してGATと視覚を共有する事が出来る
動かし方も単純であり体を動かす電気信号をCRバンドが読み取りGATの動きとして認識させる
つまり自分の体を動かすつもりで動こうとすればGATが動いてくれるという仕組みだった
今ではこのGATは全世界に復旧されており拡張パーツとしてアクセサリパーツなども増えている
これにより同じ機体でもかなりの個性を追加する事が出来て同じ機体は一つとして存在はしない
更には玄人専用のパーツ製作ソフトも販売されており今では普通の企業に混じって
一般人も自分でパーツを作り出してオリジナルのGATを生み出しているほどの人気だった
しかしこのGATという玩具には世間には知られていない裏の歴史も存在していた
それはGATが生み出されてから五年の月日が経った・・・とある研究所で起こってしまった事件だった
「・・・いよいよだな・・・」
研究員の一人は嬉しそうな顔をしながらとあるGATを持っていた
「ああ・・・だが本当にやるのか?やはり人体実験をするには早すぎるんじゃ・・・」
その隣にいたもう一人の研究員がおり彼はこれから行う実験は危険だと怯えている様子だった
「何を言ってるんだ!?これが成功すればGATの性能を更に上げる事が出来るんだぞ!?
そうなればGATは子供の玩具なんかじゃなくなる!みんなの助けとなる英雄になれるんだ!」
しかしそれでも研究員の一人は止まる事を知らずもう一人の静止を振り切って実験を始めてしまう
そして・・・事件は起こってしまった・・・
「獣兵衛!?おい獣兵衛!?しっかりしろ!!獣兵衛ぇぇぇぇええ!!」
研究員仲間の静止を振り切って実験を行った月白獣兵衛という男は
その日、研究の事故によって植物状態となってしまい・・・そのまま命を失ってしまった
そしてその研究員仲間も危険な実験を中止し友を失った悲しみからなのか
それとも自分の過ちを悔いたからなのか・・・研究者を辞めて姿を消してしまった
それから五年後・・・
「えっ!?ようやく剣也君もGATに興味を持つようになったの!?」
剣也の前で叫んでいた少年は彼の幼馴染でありGATにとても詳しい飛鷹清志郎だった
彼がどうしてここまでの大声を出してしまったのか・・・その理由は剣也にあった
実は清志郎は前々から剣也にGATを進めていたのだがいつも断られていたのだが
なんとその剣也がとうとうGATを購入するかもしれないと言っていたのだ
「俺じゃなくて次郎と雲母がな・・・それで父さん達も困っているみたいでさ・・・」
「ああ・・・確かに二人分のGATを買ってあげるのは厳しいもんね・・・」
そう・・・これこそが剣也がどれだけ清志郎にGATを勧められても始めなかった理由だった
GATは世代にもよるのだがかなりの値段が高くとても学生が買えるような額ではなかった
故に親に頼んで買ってもらうしかないのだがそれでも渋ってしまうほど値段は高かった
おそらくはそれ一台で最新の家電が買えてしまうほどだと言ってもいいだろう
剣也はそこまでして欲しいわけでもなかったので親に迷惑は掛けられないと買う事を諦めていたのだが
今回は自分でなく弟の次郎と妹の雲母が欲しいと言っていたのでこうして清志郎に相談していた
「実は俺も前々から清志郎に言われてたからお金を貯めてきたんだけど・・・それで買えるかどうか不安でさ」
「う〜ん・・・GATは特徴や使われているパーツとかで大きく値段が変わってくるからな〜・・・」
GATをよく知っている清志郎だからこそ剣也が言うような安いGATについてかなり難しい事を知っていた
それこそ中古のGATならば値段も安いのだがそれは同時に人の特徴が完全に染み付いてしまっているものであり
おまけにパーツも相当に劣化している可能性があるのでそれならば新品を買ってしまう方が安く済むだろう
「とにかくまずはどんなのが良いかを調べないとね!剣也君は次郎君と雲母ちゃんのどちらを買うの?」
「父さん達は雲母のを買ってあげるらしいから俺は次郎のを買う事になるかな〜・・・
何にしても小学生でも安全で尚且つ簡単に動かせるようなやつがいいけど・・・何かあるか?」
「そうだね〜・・・色々とあるからやっぱり剣也君に選んでもらうのが一番かな〜・・・」
「それなら僕の家に来たらどうだい?僕の家には市販されている全てのGATが揃っているよ」
そこへ姿を現したのは剣也のクラスメイトであり家が大金持ちの金子優という少年だった
「本当か!?助かるよ!!」
「兄妹の為にGATを買ってあげるんだろ?それを聞いてしまっては僕も協力しなくちゃね?」
「お前・・・本当に見た目と違って中身は良い奴だよな・・・」
「・・・それ・・・どういう意味かな?」
こうして放課後になり剣也と清志郎は優の家にやって来て彼の部屋に案内されていた
「すげぇ〜・・・これ全部GATなのか・・・こんなに出てたんだな〜・・・」
「確かに市販されているGATはこの部屋にあるので全てだけど世界にはハンドメイドのGATもあるからね
世界にあるGATを全て集めたらとてもこの部屋だけで収まるとは思えないよ・・・」
剣也は優の部屋にある百を超えるほどのGATを見て感動していたが
清志郎は世界にはそれ以上のGATが存在していると告げる
それを聞いて自分が思っていた以上にGATとは奥が深いのだと知って剣也も興味を持ち始めた
「とにかくまずは次郎君でも動かせるような機体を探さないとね!
とりあえず最新機体は用意してもらうとして・・・一世代前の物も用意してもらえるかな?」
「それなら向こうの棚にあるのがそうだったかな?ちょっと待ってて」
優は清志郎に言われた機体を棚から取り出して剣也の前に並べて見せた
「これが一番最新の機体でバランスに優れてて初心者にも優しいドギーって言うGATだよ!」
その中から清志郎が最初に選んだのは最新のGATでありバランスに優れていて
初心者にも扱い易いドギーと言う犬のような顔をしたGATだった
「へぇ〜・・・確かにこれならカッコいい感じもするし男受けは良さそうだな」
「でしょ!?それだけじゃなくてさっきも言ったようにこれはバランスがいいから
初心者の次郎君でもきっと扱えると思うんだ!実際に試してみよう!」
「それじゃあフィールドは別の部屋にあるからそこで試してみようか」
優の案内で二人はGATを動かす為の専用フィールドのある部屋へと向かいそこで実際に試してみる事にした
「まずはこのCRバンドを腕に装着して起動スイッチを押すと視覚が共有されるはずだから試してみて!」
「分かった。まずは腕に装着して・・・起動スイッチは・・・コレか?」
言われた通りに剣也はCRバンドを腕に装着して起動スイッチを押すと突如、視界に別の光景が映し出された
「うぉ!?びっくりした〜・・・なるほど・・・コレがGATの見ている景色ってわけか」
「そういう事!それじゃあ次は自分の体を動かす事をイメージしてみて!そうすればGATも動くはずだから!」
「自分の体を動かすつもりで?そんな簡単な事でこいつって動くのか?」
「まぁまぁ騙されたと思って動かしてみてよ!」
剣也は半信半疑になりながらも清志郎の言葉を信じて自分の体を動かすように足を上げる
「おぉ!?本当に動いた!?すげぇ!コレがGATか!!」
本当に自分の体を動かすようにGATが動いており剣也はとても感動している様子だった
それを見ていた清志郎と優もその光景を見て実際に試してもらって良かったと思っていた
その後も他のGATを試して最終的には一番最初に動かしたドギーが良いと言う事になり
翌日になり剣也はお店に向かって次郎にプレゼントするドギーを購入した
「二人共〜!お父さんからプレゼントがあるぞ〜!」
その言葉を聞いて次郎と雲母は急いでお父さんの元に向かっていく
「なになに!?プレゼントって何をくれるの!?」
「はっはっはっ!前からお前達が欲しいって言ってた〜・・・GATだ!」
お父さんは後ろから自分の購入したGATを見せるのだがそれは明らかに女性型のGATだった
「名前はメビウスというらしくてな。二人で大切に使うんだぞ?」
「うん!ありがとうお父さん!!」
「・・・ありがとう・・・」
次郎は一応、お父さんにお礼を言うのだがやはりカッコいいGATが欲しかったようで
諦めて雲母専用のにしてもらおうとした時、自分の頭に何かが置かれるのを感じた
「?」
「俺からお前個人にプレゼントだ。開けてみな?」
次郎は言われるがままに頭に置かれたそれを開けてみると
その中に入っていたのは自分が欲しいと思っていたカッコいいGATだった
「お兄ちゃん・・・!これ・・・!」
「大切にしろよ?それと雲母と仲良く遊んであげるのが条件だ・・・いいな?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべて次郎は雲母と一緒に大喜びしており
それをみていた剣也の両親は嬉しいと思う反面、複雑な心境になっていた
「悪いな・・・次郎の分まで買ってもらって・・・
俺にもっと稼ぎがあったらお前らの分を買ってあげられたんだが・・・」
「気にしなくていいよ・・・俺も次郎に喜んでもらいたくて買ったんだからさ」
「・・・お前は本当に良い長男だよ・・・剣也」
そう言って自分を褒めながら頭を撫でてくれる父に剣也は少しの怒りも湧いてこなかった
しかしたった一つだけ・・・その日の剣也は喜んでいる二人の姿を見て羨ましいと思っていた
それは父親からプレゼントをもらった事ではなく
(・・・あの感覚・・・俺もまた味わいたかったな・・・)
生まれて初めてGATを動かした事で剣也はその魅力に惹かれてしまったのだ
次回はいよいよ運命の出会いを果たす!