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国崩  作者: 新築工事
第1章
3/4

英雄の条件

二話目投稿です。

かなり長くなってしまいましたが、生暖かい目で見守ってください?

「今回の作戦もうまくいって、転生者一人再起不能まで追い込んだけどさー、なんで気絶してるやつに能力発動させて窒息させなかったの?」

モールはつまらなさそうに俺に聞いた。

「それが最終目標じゃないし、転生者狩りはあくまでそれに到達するための過程でしかないからだ。」

モールはどうでもよさそうに「ふーん。」とだけ言った。いつも通りだが、そんなことは気にせず俺は続ける。

「もちろん、それに値するほどつまらん奴だったら容赦せず始末するけどな。」

俺達は別に転生者の存在が気に食わない訳じゃない。ただ、たまたま得た力に胡座かいて、進歩の意志の欠片もなく、圧倒的な力という傘に守られているだけの奴が気に食わないだけだ。それがたまたま転生者に多いから転生者狩りなんてことをやっているわけで。というより、俺達はどちらかと言えば穏健派だ。もっとヤバい転生者狩りなんてゴロゴロいるし、逆に言えばそれが出来るレベルの連中が徒党を組んでるわけだ。国は相当見る目がないと言える。それとも、そんな力を抑え込める自信がないのかね?

そんなわけで、俺達は細々とちょっとした依頼や、問題解決をしながら、俺達なりのやり方で、世界を変えようとしているわけだ。

「それより、今は仕事しろよ。」

「へいへい。」

今日はモールと俺の二人で仕事だ。

村の水不足の原因を探ってほしいのだと。

なんでも、雨は降るが、水を溜めても次の日には一滴残らず水が消えてしまうらしい。

にわかには信じがたい話だったが、俺達はこの目で確認した。レニーに協力してもらって

、水を用意して、それを井戸に入れ、一晩待った。そしたら、後日には水の影も形もなかった。

今日はその原因の調査だ。

俺たち以外のメンバーは他の仕事をやっている。まぁ分業だ。

「井戸作ってても、そこから消えるんだろ?ピンポイントな問題じゃないし、量は相当なものだから転生者でも運べないと考えるとマジでどうなってんだろうな?」

「それを考えるのが俺らの仕事だ。」

とは言ったものの、既に若干の目星はついていた。ただ、それを解決する手が思い浮かばない。かなり大規模な工事になるが、あまり一つの場所に留まり続けるとかなり面倒なことになりかねん。

「なぁモール。お前の魔法でとりあえずここのあたりの地下を調べてくれないか?」

「それくらいならいいけどよぉ。解決の糸口は見えてんのか?」

「まだ『かもしれない』ってレベルだ。だが、もし憶測が正しいなら、かなり大掛かりな仕事になる可能性がある。」

「なるほど。んじゃちょっくら行ってくるわ。」

そういうとモールは、地面に『潜って』行った。

これがモールの魔法。

『面』に潜り、その中にある異空間を作り、移動する。

 石だらけの地面であろうが関係なく、それが地面であるならば、ほぼ無条件に『面』として捉え、魔法の発動範囲に入る。

 異空間と言っても、その風景は地中と変わらず、地中の状況は見ることができる。

「とりあえず一通り見てきたが、多分ここら辺は岩の種類が同じだな。ここら一帯の地域の地面が繋がってるものとして考えて相違無いんじゃないか?」

「やっぱりな。」

「やっぱりっていうと、予想通りって感じか。原因はなんなんだ?」

「岩だよ。ここら辺の一部の岩は水変岩だ。水を魔力に変換して、溜め込む性質を持つ。多分戦争前から土地が変わらず、辺境の村だから魔族側にもいかなかったんだろ。」

「なるほどな。じゃあどうすんだ?土地の一部が水変岩なら、土地ごと変えるしかないんじゃ…。」

そういうとモールは少し黙り込み、

「いや、策があった。一時的ではあるが、この村の水不足を解決できる。」

「本当か?その策って何だ?」

「とりあえず準備が必要になるから、明日にでもまたここに来よう。」

後日、俺たちは村人たちと一緒に、村のはずれにある、高台の場所に行った。今日はレニーも一緒だ。

「で?どうやって解決するんだ?」

「何で私は呼ばれたんだ?」

「簡単な話だ。ここら辺の岩に、目一杯魔力を作らせてやるんだ。」

「どういうことだ?」

「魔力っていうのは、ちゃんと質量のある物質だ。であるなら、当然キャパシティもある。」

モールがそういうと、レニーは察したようだった。俺も察したが、何とも脳筋な解決策だ。用は、満腹になりかけているところに、更に飯を突っ込んでやろうということだ。

「んじゃレニー頼むわ。この部分だけでいい。集中豪雨頼む。」

「お前は何とも単純な…。まぁ解決できるならやってやるが。」

レニーが魔法を発動した。すると、雲が突然井戸の真上に出て、集中豪雨を降らせていった。

レニーは魔法によって天候を操ることができる。範囲を広げることも可能だが、そうすると魔力の消耗が激しいらしい。

「この村は、たびたび水不足に悩まされてきたらしい。ならば、水不足でない時期もあったはずだ。この村は残っていない。」

モールはおもむろにしゃべり始めた。

「今まで対策がなくても、何とか生きていられるくらいには溜められてはいたってことだ。ならば、水変岩にも、魔力のキャパシティはあり、例えば集中豪雨などがあれば、途端にキャパは満タンになって、吸収は止まり、水は溜まる。用は、大量に溜まる時期があったから水不足で滅ぶことはなかったんだ。」

「なるほど。だから集中豪雨を使うことで、村全体のキャパシティを満タンにして、水を溜めるってことか。」

レニーは感心したように言った。

だが俺も驚いていた。水を高台から流せば、それは村全体の地面に駆けめぐり、水量によってすぐさま吸収を止める。

そうすれば、水はけの悪い井戸の部分に水が溜まるってわけか。

それと同時に、一時的にと言ったのも頷ける。

「だが、たびたび水不足になるっていう話が本当なら、用はそのキャパシティが消えるタイミングがあるというわけだ。この対策も、所詮は今溜めるだけに過ぎないってことか。」

俺が言うと、モールは頷いた。

「だが、ここらの岩は、魔力の研究素材としてとても優秀だ。国の連中に売りつけてやれば、かなりいい値段になるだろう。少なくとも、水不足で滅ぶ心配がないくらいにはな。」

モールがそう言うと、村人からは喜びの声が上がった。

「ありがとうございます!これで少なくとも水不足で死ぬことはなくなる。あなた方はこの村の恩人です。」

「別にいいよ。報酬貰えればそれで。」

モールは緩急の無い声で言った。もう飽きてきてるなこいつ。

「その件だが、この岩を多少貰うことはできるか?」

俺がそう言うと村長は首を傾げた。

「はい?そんな岩をですか?そんな嫌であれば、いくらでも差し上げますが。」

「ありがとうよ。報酬はこれでいい。」

「えっ」

「これはそれほどの価値のあるもんだ。」

うまく役立てろよ。」

そう言うと村長は涙を流し、

「あなた方は村の英雄です!本当にありがとう!」

そう言った。

『英雄』その言葉に俺は引っかかった。

「俺達は英雄なんかじゃねぇよ。」

俺の呟きは、モールや、レニーにも聞こえていないようだった。

「にしても本当に報酬はそれでよかったのか?」

帰った後、打ち上げ中、酒場で他のメンバーと合流した時、レニーは呆れたように言った。

「良いんだよ。これだけでもヤバいほどの価値のあるものだ。俺達の研究も更に進歩するだろうぜ。」

「それなら良いけどよ。」

レニーはこの件に関しては興味を無くしたようだった。

「あの村長俺達を英雄って言ってたな。」

モールがおもむろに口を開いた。

「…ああ。」

「笑っちまうよな。俺達にそう呼ばれる権利は無いっていうのに。」

そうだ。国崩の信条として掲げているのは、『英雄にはならない。』だ。

 利を求めず、弱きものを助けるために、己の身を危険に晒すことのできる者こそが、真に英雄と呼ばれるのだ。

 俺達には相応しくない。ならば、英雄が生まれるまでの舞台装置になる。

 それが俺達国崩だ。

 今この世界には、英雄が必要だ。暗き未来を照らし、先を進む存在が必要なのだ。

 俺達はそんな英雄の露払いだ。英雄を導かなければならない。そのためには、今いる腐った力を持つ者達が邪魔だ。そのために俺達は血を被らなければならない。汚れ仕事は、俺達がやってやる。

 だから表舞台は頼んだぜ。まだ見ぬ英雄たちよ。

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