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第8話 席替えの提案




 その後、いつもの朝のホームルームが終了すると担任の女性教師が教壇に立ったまま教室中を見渡す。


 一限目の授業は現代国語。既にクラスメイトは各々机に座ったまま授業の準備を始めたりトイレに行こうと教室を出ようとしていたのだが、彼女は片手をうなじ部分に回すとぽりぽりと掻きながら気だるげに言葉を言い放った。



「あ、おーっす。てめーら座ってろー。言い忘れてたけど一限目に席替えすっぞー。あと喜べー、余った時間は自習なー」

「えー、自習は嬉しいっすけど氷珂(ひょうか)せんせー。この前の春に席替えしたばっかりじゃないですかー。まだ二か月くらいしか経ってないっすよー?」

「言っとくが同年代と仲良く出来んのは高校までだかんなー? 席替えをきっかけにてめーら同士で交流を深めとけー? あと幸助の癖に先生に口答えすんなー」

「酷い!?」



 幸助が軽い調子で発現するも氷珂(ひょうか)先生はバッサリと一刀両断。今朝の後輩彼女とのことで傷心中だったということもあり、どんよりと項垂(うなだ)れていた。


 因みに俺らの担任の名前は御堂氷珂(みどうひょうか)。年齢は二十代後半で容姿は整っており、街を歩けば百人中全員が思わず振り向くほどの茶髪ロングな美女。……なのだが、残念ながら彼女自身が(まと)う気だるげな表情や性格、雰囲気がそれを相殺していた。


 まぁ逆にその気だるげでさばさばした性格が高校では男女問わず人気が高く、親しみやすい現国の女性教師として知られている。


 あぁ、その皺塗(しわまみ)れのよれよれなワイシャツアイロン掛けしたい……! 



「んー、桐生どうしたー? もしかして先生に見惚れたかー?」

「いえ、それはないです」

「そっかー」



 どうやら氷珂先生は俺が向けていた視線を勘違いしたようだった。俺がはっきりと伝えると、心なしかしょぼんとする氷珂先生。

 彼女は身長は高いのだが、その眉が下がる様子はどことなく小動物が悲しそうにする表情によく似ていた。


 すると、俺の席から離れた廊下側から良く聞き慣れた甘ったるい元気な声が聞こえた。



「は、はーい氷珂センセー! せ、席替えってどういう風にして決めるんですかー!?」

「ん、そうだったなー。この前の席順はエクセルのシャッフルで決めたからなー。なので今日はこんなのを用意してみたー」



 教室中に元気で可愛いくるみの声が響いたが、その声はどことなく焦っていたように感じた。俺はそんなくるみの様子に対し不思議に思うも、氷珂先生の言葉は続く。



「ふふーん、酒を我慢してまで先生が徹夜して作ったんだぞー。感謝して崇め称えろよー」



 そう気だるげに言って氷珂先生が教壇の下から取り出したのは、上の一面だけにボール大の穴が開いた四角の形をした箱が二つ。

 それぞれの箱には『男』、『女』と目を引く達筆な筆文字が書かれている。一目で判別がつくようによいう先生なりの配慮なのだろう。


 それを両手に持った先生が勢いよく横に振ると、かさかさと紙同士が擦れるような音がした。



「でーん、くじ引きのヤツー」

「えー超普通でつまんないじゃないですかせんせー。あ、ドラフト会議風にしてみるのはどうっすか?」

「なるほどなー、じゃあ幸助、お前の席は廊下でいいかー?」

「酷いですわ!?」



 氷珂先生はいつも通り気だるげな雰囲気を纏わせつつも、視線は少しだけ鋭い。あ、これはちょっと怒ってるな。だって声音もすごい冷たかったし。


 ……おい幸助、さすがに俺でもそのお嬢様口調は引くぞ。あとキモい。


 缶ハイボール一日五本以上は必ず飲むっていうあのお酒好きな氷珂先生が折角俺らの為に我慢して作ってきてくれたんだぞ。「普通」とか「つまんない」とかバカかお前。



「はいじゃあてめーら、クソイキリパツキン野郎は放って置いて、一人ずつくじを引きに来いー。先生はその間に黒板に番号を振って見やすいようにするからなー。同じ番号になったヤツらは隣同士でよろしくー。……あ、パツキンは最後に引けよー?」

「だから酷いでやんす!?」



 因果応報、自業自得だな……って、お前はどうしてお嬢さまから小者にランクダウンしてんだよ。




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