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8.魔法と戦闘前のピクニック

 ……おはようございます。

 全裸のまま、お片付けもしないで寝ちゃった神楽夜です。思ったより捗って……ほら、色々とチャレンジしてみたり、ね?


 声って出ちゃうものなんだぁ……と思いつつ、聖炎で証拠隠滅。ベッドに変な染みとかありません。床に垂れてたりもしません。


 あれ、来た時よりも綺麗になったよ? (白目)


 懐かしの、むしろ祖父の家とかでしか見たことの無い汲み取り式トイレで用を足し、拭く紙が硬そうだったので聖炎による処理。

 便利な技能があって良かったと本当に思う。


 両開きの窓を開けて外を見ると、まだ空は暗く、人が起き始めるのはもう少し後の様子。なので、どういう原理なのか分からない明かりを付けて、本を開いた。

 まあ、聖魔法とかその辺りなんじゃないかとは思ってるけど。


 で、昨日も読んでいた魔法の入門書。

 魔法の仕組みは、詠唱による魔法陣の展開と、それを発動する為の起動句。それさえ分かっていれば、後は才能と努力と魔力の問題。


 魔法陣を単体で作ることも出来ない訳じゃないけど、毎回描くことになるのは明らか。だから、詠唱と魔法陣をリンクさせて、詠唱していくと魔法陣も組み上げられていくっていう感じ。


 でも、それって無駄が多いんじゃないだろうか。この本には神への祈りがどうこうとか書いてあるけど、多分威力には何の影響もない。信じるものは救われる的な平等さがあったら、わたしにこんな力をくれたりしなかったはず。


 使う魔法が決まってるなら一文字で何個か組めるようにしちゃえばいい。幸い、属性毎にセット出来るみたいだから楽勝。

 脳内で構成するのは不思議な感覚だけど。


 じゃあ、早速試してみよう。


「燃えろ」


 手のひらに赤い魔法陣が展開されてオレンジ色の炎が灯る。

 魔力操作のお陰なのか、発動した後でもある程度は動かしたり出来た。ただの炎を出すくらいなら聖炎の方がいいけど。


「癒しを」


 思い切ってナイフで付けた傷。

 そこに手をかざしながら詠唱すると、綺麗に傷が消えてしまった。回復魔法はかなり重宝すると思う。


 ちなみに、起動句が無いのは最後の一文字が魔法陣の展開と発動の役割を担っているから。長い詠唱をするならともかく、『癒しを』で済むのに起動句まであったら面倒だもんね。


 火魔法の『燃えろ』は消費魔力が3。

 回復魔法の『癒しを』は2。


 この感じだと、ゲームみたいに発動したら固定値を持っていかれるわけではなくて、継続時間とかで変わるみたい。

 聖炎は300くらい消費していたけど、多いのか少ないのか、この段階だとなんとも言えない。


 そういえば、幻術って自分に使う分には魔力を消費しないんだね。今の今までかけていたのに、魔力は減ってないし。


 今解いたのは、しっぽをブラッシングするため。


 もっふもふのしっぽを梳くと、最高の手触りと一緒に毛が抜けていた。うぅ、これを9本分やるのって大変だよぉ……。

 誰か、やってくれないかな?


 そんな都合のいい話があったらなぁ……と思いつつ全部やりきると、ちょうど空が明るくなってきたところだった。

 黒いドレス、というか、鑑定したらすっごい丈夫な素材で作られてるらしいんだけど? 神楽様、ちょっと過保護なんじゃない?


 肌触りもいいドレスを着ながら部屋を出て、階段を下りる。

 どうやら、食堂の方も始まっていた様子なので、ミーニャに朝食の準備をお願いした。


 すると、


「……お姉ちゃん、一体どこに行くの?」

「魔物を狩りにだよ?」

「パーティーにでも行きそうなの」

「うん、わたしもそう思う」

「ミイも連れてってなの!」

「今度、機会があったらね」


 人が少なくて良かった。

 変な目で見られずに済むし。

 あっ、外に出たら変わらないじゃん……。


 行きたくないけど、美味しくてパクパク食べてたら食べ終わっちゃったし、そろそろ行かないといけない。

 今日の朝食はバジルソースのようなものがかかったパスタです。ごちそうさまでした。


「行ってらっしゃいなのー」

「行ってきまーす」


 ここはわたしの家ですか?

 と、首を傾げながらある場所に向かう。

 その道中、何のお肉か分からない串焼きやら、色んな果物のジュースやら、食べ物系のお店を冷やかして、美味しそうなものは買ったりもした。


 そして、目的の場所は……


「いらっしゃいませ。……おや、珍しいお客様ですね。私は燕休の館の店長を務めるシーゼックと申します」

「……ご丁寧にどうも、わたしは神楽夜です。シーゼックさん、どうしていきなり自己紹介が始まったのかよく分かってないんですけど……」

「私にも分かりかねます」


 分かってないとかあり?

 見た目は痩せ型の40代男性。営業スマイルの裏で品定めされているような気がしてならない。そもそも、こういう所って店長が対応するものじゃないよね。怪しい。


「強いて言うとすれば、勘でしょう」

「勘?」

「そうするべきだ、という勘です」

「そうですか……」


 つまり、特に理由は無いってことかな。

 まぁ、用があるのはルナさんだけだし、名乗られても関係ないというか……こう言うとあれだけど、どうでもいいよね?


 それは向こうも理解しているのか、


「カグヤ様はどのようなご用件で?」

「えと、レンタルをしたいんですけど……ルナっていう人は、まだ居ますか?」


 もうレンタルされてるっていう可能性も……


「呼んで参りますので、少々お待ちください」


 そんなことはなかったみたい。

 あと、目を細めるのはやめて欲しい。普通に怖いです。もしくは笑顔をやめるとか。笑顔で鋭い目を細められると恐怖しかありません。


 椅子に座って待つこと数分。


「お待たせしました」


 シーゼックさんの後ろには俯いたルナさん――かと思ったら、わたしに気づいてしっぽを振り出す愛らしいルナさんが居た。

 それを見て少し驚いたシーゼックさんは、すぐにわたしに向き直って話を始める。


「1時間で50ユーラとなりますが……」

「18時までお願いします」


 予め決めていた答えを返すと、紙に何かを書いてこちらに差し出す。詳しく聞いてみると、特殊な魔法紙を使った契約書で、書かれた内容に違反すると罰――犯罪職に堕ちる、あるいは罰金、死など、契約の重さによって変わるらしい。


 細かく見ていくと、暴力、性行為などが禁止されていることや、食事、プレゼントは問題ないということが分かった。

 昨日の脅しは無意味だったみたいです。あ、いや、レンタルした人以外には適用されないし、無意味では無いのかな。


「今回は初めてのご利用ですので、600ユーラで36時間とさせていただきます」

「……えっと、明日の18時? いいんですか?」

「ええ、彼女も喜んでいるようですので」

「えっ?」


 あ、ルナさん、しっぽがどう動いてるのか分かってないんだ。凄くご機嫌なんだけどね。言わないでおこう。


 で、おかしな所がないことを確認してから親指を押し付けると、魔力によって指紋が残った。

 直後、紙が光りを放ちながら消えていく。


 これ、内容を忘れたらどうするの?


「よろしくお願いします、ご主人様」


 どうしよう、ちょっと恥ずかしい。

 ご主人様呼びはやめてもらおうかな。


 外に出てから「ルナさん、ご主人様呼びはやめない?」と言ったら、「ダメですよ、奴隷なんですから」と嬉しそうに返された。むしろ、「奴隷に敬称はいけませんね」と言われてしまう始末。


「じゃあ……ルナ」

「はい、ご主人様」

「うぅ……」


 門を出る時は「仲良さそうだな」なんて笑顔で言われるし。ご主人様呼びがこんなに恥ずかしいものだとは思ってなかった。


 荷車を運びながら暫く進むと、


「ここからなら見えないだろうし、仕舞っちゃおう」


 荷車は収納して、代わりに地面に敷く用のシートを取り出す。


「あの、ご主人様……?」

「ちょっと待っててね」

「は、はい」


 途中で買った串焼きやらを、やっぱり途中で買ったお皿に盛り付けて並べていく。最後に、ルナを座らせれば完了。


「ご主人様の朝食、ですか?」

「ルナの朝食、です」

「え、いえ、ですが……」

「要らないとか、お腹いっぱいだとかは言わせないよ? さっき、食べたそうにお店のものを見てたのは知ってるんだから」

「はぅっ……」


 恥ずかしそうに俯くルナ。形勢逆転!

 まあ、そんなことよりも、ルナに喜んでもらいたいっていうのが大事なんだけど。


「だから、いっぱい食べていいんだよ」

「……でも、私は奴隷で……」

「食べてくれないなら嫌いに――」

「食べますっ」


 早かった。元々食べたかったんだし、食べないことでデメリットがあるってなったら、そりゃあね。


「……ご主人様はよろしいのですか?」

「うん、朝ご飯はちゃんと食べたから。あ、わたしが居ると食べづらいかな?」

「いえ、そんなことはありません。……ただ、ご主人様を差し置いて私だけ食べているというのは……」

「それなら1つお願いしてもいい?」

「はい、なんなりと」


 この状況でお願い出来ることは多くない。

 なので、ルナの足を見て思いついたことを言ってみた。


「膝枕して欲しいなって」


 渋ったりするかな、と思っていたのに「どうぞ」と頭を乗せやすいように正座までしてくれた。

 遠慮なく使わせてもらおう!


「ふぁぁ……柔らかい……」

「だらしなくて申し訳ありません。私としてはもっと筋肉を付けたいと思っているので、鍛えてはいるのですが……」

「え? わたしはこっちの方が好きだよ?」

「そ、そうですか……?」

「どうしてもムキムキになりたいって言うなら止めないけど、十分引き締まってて綺麗だし、柔らかくて気持ちいいもん」

「そうなんですね……」


 ちょっと恥ずかしそうにするルナは――しっぽを振っていた。あれ? そこは喜ぶポイントだったの?

 まぁいいよね、可愛いから。


 ……それから1時間ほど。

 食休みも含めて、まったりと過ごした。


甘やかして落とすんですね分かります。

まぁ、冗談ですけど。


次回は……明後日か明明後日になるかも?

チートの真髄を見せましょう!

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