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5.ゴブリン戦、そして街へ

戦闘やで。(眠い)

 わたしの獲物は意外とすぐに見つかった。

 さっきのゴブリンの仲間なのかは分からないけど、三体ほど固まって動いている所を発見。


 これ、どうしよう?

 奇襲でもする?


 そんな事を思っていると……


「いいですね。では、行ってみましょう」


 実にいい笑顔で、『真正面から行け』と指差すルナさん。当たり前のようにスパルタである。

 まあでも、ルナさんがそう言うなら出来ないことはないはず……。


「はいっ」


 抜剣しながら走り出すわたし。


「えっ、カグヤ様!?」


 風圧でよく聞こえなかったけど、きっと頑張って下さいとかそんな感じだと思う。


「グギャ!?」


 ふっ。雑魚め、今さら気づいたか!

 ……嘘ですごめんなさい。武器を持ってるゴブリンが怖くて、ついふざけてしまいました。今から真面目にやります。


 恐怖を無視して近づきながら、並行して剣に聖炎を纏わせる。

 聖炎の特徴は、燃やす対象を選べる事と、自由自在に操れること。けど、熟練度が低い今は纏わせるので手一杯。


 そこで、さっき拾った石にも聖炎を纏わせる。

 ある程度近づき、ゴブリンが身構えたのを確認して一旦止まる。……と見せかけて、助走を利用した聖炎石を投擲。


 ただの石ならともかく、これを食らうのはまずいと本能で理解したのだろう、聖炎石は剣で振り払われる。


 それは、致命的な隙だった。


「せいっ!」


 投げると同時に走り出していたわたしは、腕を振り切ったゴブリンの首めがけて横に薙ぐ。

 剣術の技能と聖炎が仕事してくれているようで、その一撃は見事に決まり、ゴブリンの首が宙を舞う。


 残り2体。


 当然、黙って見ていた訳ではなく、左右の前方から迫ってきていた。

 小石に聖炎を纏わせると、右のゴブリンに投げつける。


 だが、防いでいては同じことの繰り返しになると理解しているらしく、大袈裟なくらい大きく跳ぶことで回避することに成功。

 そしてそれが、わたしの狙いでもあった。


 追加でもう一個投擲しつつ、左のゴブリンに接近。大きく振りかぶり、縦に振り下ろされる錆びた剣。

 そう、切れ味はほぼ無いであろう錆びた剣、だ。


 わたしが取った行動は、下から斜めにすくい上げるように切り上げること。普通なら、技術のないわたしは弾いて終わり。


 しかし、


 バキンッ!


 そんな音を出てて剣が半ばから折れた。

 勿論、ゴブリンの錆びた剣である。


 狙いは単純。

 錆びた剣の耐久力が、新品の剣に適うだろうか。更に、力と速さもこちらが上。聖炎という高温の炎もある。

 これで折れなければ何度でも繰り返すつもりだった。


 けれど、結果は見ての通り。


 但し、剣が折れても安心は出来ない。

 一歩下がり、態勢を立て直してから切りかかる。リーチを活かして問題なく撃破。


 残り、1体。


 すぐ後ろから臭いと音を感じるけど、恐れることなかれ。即座に振り返り、ゴブリンの剣を押さえ込むように剣を振る。

 鍔迫り合いという、こちらに有利な状況。しかし、わたしは力を抜くことで押され気味な状況を演出した。


「グギャギャッ」


 嘲笑うかのようなゴブリンの声。

 ……直後、勝敗は決した。


 ゴブリンの剣が歪み、ぐにゃりと曲がってしまう。力を入れたわたしの剣は、完全に折るだけでなく、ゴブリンの体を斜めに斬り裂いた。


「ふぅ……やったかな?」


 フラグっぽいことをあえて言いつつ、でも何も起きないことに安心し、剣の血を振り払って腰の鞘に納める。

 アニメや漫画のお陰で、この動きだけはスムーズかつ正確だったり。


「カグヤ様」


 いつの間に近づいていたのか、背後からルナさんの声が聞こえてビクッとする。

 でも、頑張ったから褒めてもらおうと思い……


「いきなり無茶をしないで下さい……」


 と、実は一度して欲しいと思っていたあすなろ抱き……分かりやすく言うと、背後からハグされた。


「!? る、ルナさん……? でも、行ってみましょうって言ったのはルナさんで……」

「私が言ったのは、あそこに魔法を撃ち込んでみて下さい、ということです。カグヤ様に危険なことをさせるはずが――いえ、真新しい剣を見て魔術師だと思っていた私の落ち度ですね。申し訳ありません」

「んと、それは間違ってないというか……剣士はサブだし……」

「疑う訳ではありませんが、それは本当ですか……?」


 確認の為にルナさんが聞いてくる。

 わたしが頷くと、あすなろ抱きのまま暫く考え込んだ。お胸が、とっても、気持ちいいです……。

 幸せとはおっぱいである、と思ってしまうくらいには。


「戦闘の経験があったのですか?」

「ううん、本物の剣を握ったのも初めて」

「……先程の動きは?」

「ルナさんとかゴブリンの動きを真似たり、あとは角度とかバランスとかも考えながら頑張ったよ。ルナさん的にはどうだった?」

「ええっと、そうですね……初めて剣を握った方の動きではない、と思います……」

「えぇ……? あ、剣術の技能ならあるけど……」

「それでは説明がつきません」


 わたしに剣の才能があったってこと、かな。

 正直、あんまり嬉しくはない。わたしは後方から魔法を撃って汗ひとつかかずに戦いたい。

 斬り殺す感触も、最悪だった。

 必要ないなら遠慮したいくらいに。


「とりあえず、褒めて? 子供にする感じで」

「えっ? は、はい。では……よく頑張りましたね、ちゃんと倒せてえらいですよ。ほら、いいこいいこ……」

「ふぁぁ……なでなでもぉ……」

「も、申し訳ありません、つい……あっ!? わ、私、ずっとこんな失礼なことを……」

「いいの、暫くこのまま……」


 ルナさんの肌に、耳元で聞こえる甘やかすような声、極めつけは蕩けそうななでなで。完璧過ぎる。女の子最高。

 本当に数分くらい堪能して、離れた。


 ゴブリンの魔石を回収してから燃やして、再び魔物を探すために歩き出す。


「……ねぇ、ルナさんのご主人様ってどんな人? 見た目とかじゃなくて、性格の話ね」

「その……話したのは今日一度だけですので、よく分かりません」

「? 今日買われたってこと?」

「いえ、正確にはレンタルです」


 レンタル……翻訳して意味が同じだった言葉っていうのは分かるんだけど、異世界に合わなすぎる。


「……普通に買うことは出来ないの?」

「出来ない、ということはありませんが……」


 そこで言葉を濁すルナさん。

 言いたくないことに関わるみたいだから、この質問はここまでにして、レンタルの方に話を戻そう。


「わたしもレンタル出来るよね?」

「……はい。1時間で50ユーラのようです」

「そう言われると高い気がするけど、ルナさんの実力を考えたら安いくらいだね」

「ありがとうございます」


 謙遜はしない主義?

 まあ、驕るわけでもなくお礼を言って微笑んでるだけだから、全然問題はないと思う。むしろ、もっと笑顔が見たい。


 ちなみに、カグラ様曰く、1ユーラが100円より高いくらいだと思っていい様子。でも、一概には言えないのが異世界。

 銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順に100枚単位で繰り上がる。わたしは銀貨100枚を持っているので、10000ユーラということに。


 ルナさんを200時間レンタル出来る!


「早速、明日行ってみよ」

「ええ、お待ちしています」


 他の人に取られないよう、朝早くに行かないと。


 それから、遭遇する魔物は大物……イノシシやクマのようなものばかりで、偶に狼なんかが出た以外は、全部ルナさんの独壇場だった。


 狼は素早い動きで噛み付こうとしてきて、普通に真っ二つになりました。ジャンプしたらダメだよ。

 その後、ルナさんが特に反応していないのを見てほっとしたり。人だからかな。


 ルナさんの戦いは、とりあえずかっこよかった。拳とか蹴りで魔物を倒し、短剣でスパッと。

 本当に、わたしとの差が……。


「どうかなさいました?」

「あ、ううん。素材が多いなぁ〜と」

「はい、カグヤ様に手伝って頂いたお陰です」

「手伝いになってたのは指輪だけだけど……」

「そんなことはありません。ひとりの時よりも、カグヤ様が居て下さったお陰で力が出せましたから」

「そうかな? なら、よかった……」


 荷車を2人で引きながらの話。

 かなり大量で、普通なら全力で引いてやっとなのに、話をしながらでも余裕なくらい軽く感じる。まあ、7割以上はルナさんのお陰だろうね。


 少しでも楽になれば、と思ったけど……必要ない?


 引く時も遠慮されて、「街まで案内して欲しいから、そのお礼に」みたいなことを言ってやっとだった。その意味は、ないのかもしれない。


「カグヤ様、見えてきました」


 そう言われて、荷車から少し離れるわたし。

 事前に、「奴隷の手伝いをしているのは醜聞がよろしくありませんので」と街が見えたら離れることを約束していたのだ。


 街の外壁が近くなっていく。

 森から40分くらいかな。

 初めてみたファンタジーの街はなかなかの大きさみたいで、嬉しいような、そうでもないような……。


「あ……っと、お、おい、嬢ちゃん、そんな格好でどこから来たんだ?」

「えと、ちょっと森の向こうから」

「そっちの姉ちゃんは分からなくもないが……」

「ルナさんに案内してもらったので」

「そうか……だとしてもおかしいような……いや、なんでもない。カグラ盤を見せてくれ」


 門番の人は厳ついおじさんです。

 というか、カグラ盤ってなに?

 笑いそうになっちゃたよ?

 え? カグラ様、物にまで名前付けられてるの?


「……どうした? これだぞ、これ」

「え? あ、は、はい」


 出せと言われていたのは、ステータスが表示される金属板のことだったらしい。パラメーターから下は見えないようにして渡すと、少し眺めたあとすぐに返ってきた。

 職業、変えなかったけど、驚かれなかったし大丈夫みたいだね。


 そう思ったのも束の間、


「……嬢ちゃん、どっかの大貴族の娘とかじゃない?」


 語尾がおかしくなった門番の人。

 わたしが貴族だなんて、見た目と服以外はそんな事ないと思うなぁ……と、自画自賛してみる。


「そんな風に見えます?」

「ああ、見た目もカグラ盤もな。貴重な金属を使った上に、装飾まで凝っている。貴族様じゃないのなら、逆にどうしてなのか気になるくらいだ」

「秘密でお願いします」

「ま、そうだろうな」


 あら、意外とあっさり引き下がった。

 話し方がおかしくなる以外はいい人だね、多分。


 門を抜けた所で立ち止まる。

 後ろを振り向くと、夕陽に照らされたルナさんの姿が見えた。すごく絵になる。……絵なんて描けないけど。


「じゃあ、ルナさんとはここでお別れ……かな」

「はい。今日はありがとうございました」

「ううん、こちらこそ、ありがとうだよ。それと、明日もまたお世話になるから」

「……はい」


 短い逡巡のあと、頷くルナさん。何を考えたのかは分からない。本当は嫌だった、というのは考えたくないけど。


「じゃあ、バイバイ」

「さようなら、カグヤ様」


 手を振るわたしにお辞儀をする。

 周りの人から見られている気がするけど、見た目とか荷車とか目立つ要素はあったので、それほど気にしないことに。


 ひとりになったわたしは、歩きながら呟く。


「どこに行こうかな〜?」


次回は16時に。

何故にカグヤは戦えるのか。ステータス的にはゴブリンと戦えてもおかしくありませんが……才能なんていう曖昧なものではないです。それも含めて、ではありますけどね?


ブクマ、評価、励みになります。

次回もお楽しみに!

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